日本財団 図書館


4.3 画像処理法によるひずみ分布測定
4.3.1 アクリル樹脂製円筒凹凸溝付型横拘束ありの場合
(a)アラミド繊維角打組物(AF)
 供試体AFを試験した場合に得られたひずみ測定結果をFig.4−2に示す。
 この型での横拘束がある場合は、壁面への組物の接触に加えて、壁面が曲面を有しているため、CCDカメラによる撮像が困難である。その理由は、2対の内外径にあるアクリル樹脂の円筒が接触しており、その部分で光線の屈折が変化し、実際の寸法が歪められて撮像されてしまう可能性が高い。そのため、撮像範囲を局所的に制限することで対処した。
 他の拘束条件の結果と比較して、この円筒拘束の場合は、高い荷重レベルまで、組物の構造によるひずみ差が発生し難いと言える。50%最大荷重点で、すでに、最大荷重点とほぼ同レベルのひずみ分布に達している。
 
(a)No-load
 
(b)50%Max-load
 
(c)Max-load
 
(d)Max-load
Fig.4−2 Y方向垂直ひずみ εyy分布
 
(b)PTFEおよびオイル含浸炭化繊維角打組物(GT)
 供試体GTを試験した場合に得られた歪み分布測定結果をFig.4−3に示す。
 この炭化繊維角打組物の場合、荷重が増加しても、組物繊維束構造はひずみ分布に明瞭に現れず、繊維束間の空隙における圧縮ひずみが低いことが判る。一方で、円筒壁面に接触された繊維束の凸部で、庄縮荷重の増加により、引張ひずみの増加が見られる。
 オイルの存在が、ひずみ分布に及ぼす影響は確認することはできなかった。その理由は、オイルを含浸していない炭化繊維角打組物が円筒拘束されている場合のひずみ分布計測では、良好な結果を得ることができなかった。その理由として考えられることとして、オイル含浸のない場合は、炭化繊維が毛羽立っており、その状態で円筒壁面に繊維束が接触すると、組織が安定せず、圧縮荷重の増加により、毛羽立ちが移動し、画像マッチングが出来ず、ひずみ分布計算が行うことが困難であるためである。しかし、オイルが含浸していると、そのオイルにより、試料表面の組織が変化し、計測が不可能であると予測されたが、逆に、そのオイルに繊維束を集束する作用があり、比較的、良好に計測が可能であった。オイルが壁面に付着しても、ライトにより反射さえしなければ、光線は透過し、問題の少ないことが判った。
 
(a)No-load
 
(b)20%Max-load
 
(c)50%Max-load
 
(d)Max-load
Fig.4−3 Y方向重直ひずみ εyy分布
 
4.4 断面観察による画像処理データの妥当性確認
 次頁Fig.4−4は、角打組物の断面観察を行って得られた組物を構成する繊維束断面の圧縮前後の輪郭を示している。この図では、組物表面の内の角部を形成する繊維束を黒色で、組物表面の平面部を形成する繊維束を白色で各々を識別表示している。aは未圧縮時の断面における繊維束分布、bは圧縮時の繊維束分布を示している。角打組物は圧縮されることで、白色で表示されている繊維束が幅方向に移動するのに対して、黒色表示されている繊維束は対角線の方向に引き込まれている状態を示している。この組物表面部における繊維束の移動により、加圧される上下面では大きなひずみ(la⇒la’)を発生するのに対して、表面の中央部のY軸方向へのひずみ(lb⇒lb’)は上下面に比較して小さいことを示している。この加圧時のY軸方向ひずみは部位により差がある現象は4.3項で示した画像処理法を利用したひずみ分布データの傾向とも一致しており、前述のデータは妥当性があると判断される。
 
a. 未圧縮時
 
b. 圧縮時
Fig.4−4 繊維束の変形モデル
 
5. まとめ
 舶用に使用されている代表的なグランドパッキンに対して、拘束条件が異なる圧縮荷重下において、新しい画像処理技術を利用した非接触ひずみ分布計測を試みた。その実験の結果から、以下の知見が得られた。
 
(1) 繊維のみより構成される組物に対して、圧縮荷重条件下において、ひずみ分布計測は可能である。
(2) PTFEおよびオイル含浸した組物に対しても、今回考案した試料調整方法は有用であり、ひずみ分布計測においては、表面にオイルが表出するケースにおいても、光源によって反射しない限り、ひずみ分布計測は可能である。
(3) 透明なアクリル樹脂凹凸溝内での圧縮荷重下においても、ひずみ分布計測は可能である。
(4) また、(3)において、オイルが含浸している方が、乾燥した状態よりも、ひずみ分布計測に対しては望ましい。繊維束の毛羽立ちは、ひずみ分布計測においては存在しない方が望ましい。
(5) 円筒拘束の場合、曲面を有している観察部をCCDカメラで撮像する際に、画像が湾曲するため、ひずみ分布計測可能な領域が限定されるが、中央部の領域は測定が可能である。
 
 このような結果から、本研究で調査研究した“画像処理技術を利用したひずみ分布測定法”は、不均質な繊維集合体であるグランドパッキンの荷重下での変形状態把握に有効であることを実証した。このような空隙を多く有する柔軟な繊維集合構造体は大変形挙動を示すため、この計測方法以外に存在する可能性は極めて少ない。このため、本調査研究の成果は、広く実際の設計・製造部門で活用することは可能であると結論づけることができる。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION