2.4 電動機
2.4.1 電動機の形式
電動機は設置場所の環境に適した保護形式のものを選定し、使用条件、機械の特性、電源、制御方式などとの関連を考えて性質と経済性のバランスを図ることが肝要である。
電動機の定格はその使用状態により連続定格、短時間定格及び反復定格の3種類に大別されるが、船用の電動機は一般に連続定格のものが使用される。
電動機の絶縁の耐熱クラスは、現在Bが最も多く使用されている。Eの電動機も一部使用されており、これはできるだけ小形で安価な電動機とするためであるが、外被温度が人体に危険を及ぼすほど高くなることがあるので、この点に対して対策を講ずる必要がある。
電動機は、暴露部に装備するものは全閉防水形を、それ以外にあっては防滴形を使用する。暴露部以外でも水分や油分が多く、環境条件のよくない場所に装備するものは全閉外扇形を使用することが望ましい。軸流内装形通風機用電動機には全閉自冷形が用いられる。
かご形誘導電動機は最もよく用いられる電動機であるが、始動電流が一般に大きく、電動機定格電流の5〜7倍程度の値となる。かご形誘導電動機の始動方法には、全電圧始動、スターデルタ始動、リアクトル始動、始動補償器始動(コンドルファ始動)の4種類がある。これらの始動方法についての比較をまとめると表2.2.3のようになる。
直流電動機は内部抵抗が小さく、直接全電圧始動すると、定格電流の10〜30倍の始動電流が流れ電動機を損傷する。このため電機子回路に直列に始動抵抗を挿入し、定格電流の100〜150%程度に始動電流を押さえて始動する。
又、近年、サイリスターやトライアック等の半導体の電圧位相制御を利用して、始動時の電動機への印加電圧を制御することにより、始動電流を低く押さえるソフトスタート始動(クッションスタート始動)の方法も使用され始めている。総称して、電子式減電圧始動器とよばれている。半導体の種類や特性により効果が異なるので、使用する電動機の仕様や用途を含めて始動器メーカと詳細な打合せが必要である。
表2.2.3 かご形誘導電動機用各種始動方式の特性と適用 |
始動方式 |
全電圧始動 |
減電圧始動 |
スターデルタ始動 |
リアクトル始動 |
変圧器始動 (コンドルファ始動) |
使用タップ(%) |
使用タップ(%) |
50 |
35 |
20 |
50 |
65 |
80 |
始動時電動機電圧 |
V |
0.58V |
0.51V |
0.65V |
0.8V |
0.5V |
0.65V |
0.8V |
始動電流(電動機用) |
Is |
0.33Is |
0.5Is |
0.65Is |
0.8Is |
0.5Is |
0.65Is |
0.8Is |
始動電流(線路側) |
Is |
0.33Is |
0.5Is |
0.65Is |
0.8Is |
0.25Is |
0.42Is |
0.64Is |
始動トルク注(1) |
τs |
0.33τs |
0.25τs |
0.42τs |
0.64τs |
0.25τs |
0.42τs |
0.64τs |
始動時間注(2) |
ts |
3ts |
4ts |
2.4ts |
1.6ts |
4ts |
2.4ts |
1.6ts |
特長 |
始動電流、トルクともに大きい。始動時のショック大きい。電源に与える影響大きい。大きい加速トルクが得られるので始動時間が短い。 |
始動電流、トルクともに小さい。始動電流は変えられない。加速中のトルクの増加は少ない。 |
始動電流はリアクトルのタップで変えられるが、始動電流を小さく制限するほど始動トルクはいちじるしく小さくなる。加速中のトルクの増加は大きい。 |
始動電流は変圧器のタップで変えられる。始動電流を小さく制限しても始動トルクはそれほど小さくならない。加速中のトルクの増加は少ない。 |
適用 |
一般 |
無負荷または軽負荷で始動できるもの。工作機械・木工機械・アンローダ・ベーン・ダンパ付のコンプレッサ・ファン・ブロワ・ポンプ・小形ベルトコンベヤ・電動発電機 |
スターデルタ始動では加速の困難なもの。始動時のショックを防ぎたいもの。ファン・ブロワ・ポンプ・コンプレッサ |
とくに始動電流を制御したい場合。ファン・ブロワ・ポンプ・コンプレッサ |
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(注) |
(1)減電圧の%は負荷トルクの大きさを考え決定することが必要である。 |
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(2)減竃圧の場合加速トルクが少なくなるので、負荷トルクがあるときはさらに長くなる。 |
始動方法としては経済性などの点から全電圧始動とすることが望ましいが、大形電動機で全電圧始動が懸念される場合には次の項目について検討し、もし問題があれば他の方法を選定する必要がある。
電動機始動時の発電機の瞬時電圧降下を計算し、その値が15%を超える場合には全電圧始動とはしないのが一般的である。
大形電動機始動時に発電機用原動機へかかる有効電力が原動機の出力を超える場合は、全電圧始動とすることはできない。
電動機始動時に発電機に流れる電流により、遮断器が遮断しないかどうかの検討を行わなければならない。もし、電動機始動時に遮断器が遮断するようであれば電動機は全電圧始動とすることはできない。
なお、小型船に使用される電動機の主な用途としては、通風機、揚錨機、ポンプ類(ビルジ、雑用水等)、漁撈機器(いか釣り機等)などがあり、一般的に容量の小さい小型の機器には直流電動機が使用される場合が多く、大型の機器には交流電動機が使用されている。
船舶に使用される生活用機器類には、家庭用の電気機器が多く使用されている。電子レンジ、電気ポット、電気炊飯器等は容量が比較的大きくなるので電源側のブレーカの相順バランスを考慮してコンセントまでの配線をする必要がある。電磁調理器は電源が単相100Vと200Vの物があるので注意すること。又、エアコンはセパレートタイプの物を装備する場合、室内機の電源と室外機の電源をそれぞれ供給するタイプやどちらか片方に供給するタイプ等多種あるので、メーカの型式や仕様に十分注意する必要がある。
尚、発電機の装備にサイリスタ式の定周波装置を使用する場合は電圧の波形が正弦波ではなく矩形波となり、電子機器が正常に作動しないことがあるので、電源側に正弦波フィルタを設置してやる必要がある。(マイコン等が誤動作する。)
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