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附属書F. 整備基準等(航海用レーダー及び自動衝突予防援助装置関係)
17. 航海用レーダー装備基準
17.1 適用
 この基準は、船舶に航海用レーダー(自動衝突予防援助装置を含む。)を装備する場合に適用する。
17.2 装備の方法
 第1回定期検査時において、航海用レーダーの装備について、次の事項を確認する。
17.2.1 電源部等の点検
−1. 取付場所及び取付状態が承認図書のとおりで、かつ、放熱及び点検のための空間が適切であることを確認する。
−2. 過電流、過電圧及び極性逆転からの保護措置が講じられていることを確認する。
−3. 主電源及び代替電源から給電されている場合、その切替え措置が適切であることを確認する。
−4. 電源回路の電線が承認図書又は工事用図書のとおりのもので、かつ、電線の支持・固定間隔及び曲げ半径が規定を満足していることを確認する。
−5. 電源回路の電線が高熱部や人の近付きやすい箇所に配線されている場合、適切な保護措置が講じられていることを確認する。
−6. 接地の状態が工事用図書のとおりであり、適切であることを確認する。
17.2.2 空中線部の点検
−1. 空中線部が承認図書のとおりの場所に取り付けられ、かつ、図書に記載のない、あるいは記載内容と異なる障害物が周囲に存在しないことを確認する。
−2. 2以上の空中線が近接して装備され、かつ、それぞれの見合い角度が規定値より小さい場合、非動作中の受信器等に障害を与えない適切な措置が講じられていることを確認する。
−3. 取付及び防水・防振・防食(腐食及び電食)処理が工事用図書のとおり施工され、かつ、適切であることを確認する。
−4. 接地が工事用図書のとおりであり、適切であることを確認する。
17.2.3 送受信部の点検
−1. 取付場所及び取付状態が承認図書のとおりで、かつ、放熱及び点検のための空間が適切であることを確認する。
−2. 箱体へのケーブル等の導入・接続状態が工事用図書のとおりであり、適切であることを確認する。
−3. 箱体の接地が工事用図書のとおりであり、適切であることを確認する。
17.2.4 表示器の点検
−1. 箱体が、承認図書のとおりの場所であり、木台等のスペーサーを介するなど歪み対策の措置がなされ、かつ、メーカーの工事用図書のとおりの方法で取り付けられていることを確認する。
−2. 放熱及び点検のための空間が適切であることを確認する。
−3. 箱体へのケーブルの導入・接続状態が適切であることを確認する。
−4. 箱体の接地が他の電子機器と共用されてなく、かつ、工事用図書のとおりであり、適切であることを確認する。
17.2.5 伝送路等の点検
−1. 伝送路等(導波管、導波管に準ずる電線路、レーダー信号用ケーブル、電源用電線等をいう。)の布設は伝送損失等が最小になるような経路であることを確認する。
−2. 電源用電線の電圧降下率が適切であることを確認する。
−3. 伝送路等の布設、防食、隔壁・甲板の貫通、機器への導入、端末処理・接続が工事用図書のとおりであり、かつ、適切に施工されていることを確認する。
−4. 伝送路等の支持・固定間隔及び曲げ半径が適切であることを確認する。
−5. 高熱部や人の近付きやすい箇所に布設されている場合、適切な保護措置が講じられていることを確認する。
−6. 接地が工事用図書のとおりであり、適切であることを確認する。
−7. 導波管に0.5〜1.0kg/cm2の圧力を30分以上かけて、気密試験を行い、内気圧が10%以上減少しないことを確認する。また、導波管の結露防止のための措置が適切であることを確認する。
17.3 装備記録の作成等
 装備者は、別紙様式の航海用レーダー装備点検記録表を作成し、管海官庁及び船舶所有者に1部送付するとともに、一部を事業場に保管する。
18. 航海用レーダー整備基準
(注)本項において、平成11年1月1日現在、既に船舶に備え付けられている航海用レーダーについては、〔 〕内に読み替え、下線部は適用しない。
18.1 適用
 この基準は、航海用レーダーについて、整備を行う場合に適用する。
18.2 整備の方法
 航海用レーダーの整備は、これを備え付けている船舶の定期検査又は中間検査の時期に行い、その搭載船舶及び免許人の氏名又は名称が電波法に基づく免許状に記載されているとおりであること並びに次の事項について確認する。
18.2.1 外観点検
−1. 構成品の点検
 空中線部、送受信部、表示器及び電源部の構成品、マグネトロン等の予備品、操作説明書並びに保守のための資料が完全な状態で揃っているかを点検する。
−2. 表示等の点検
(1)航海用レーダーの各構成品の(i)名称、型式、型式承認番号、製造年月、製造番号、製造者名、検定印又は証印、(ii)操だ室に装備する機器にあっては磁気コンパスに対する最小安全距離の表示が適切なものであり、かつ、見やすい箇所になされ、かすれて見えにくくなっていないかを点検する。
 なお、磁気コンパスに対する最小安全距離が保たれていない場合、航海用レーダーの電源スイッチをオン又はオフにすることにより、当該磁気コンパスに与える影響が軽微(自動衝突予防援助装置及び自動操だ装置の電源スイッチのオン又はオフのいずれの状況においても、これらのすべての装置の合計誤差が0.5度以内であること)であることを確認する。
(2)他の設備からの電磁的干渉によりその機能に障害が生じることを防止するための措置が講じられていることを確認する。
(3)マグネトロン等の特殊管の使用時間に余裕があることを確認する。
(4)テストメーターその他の性能表示装置の指示値に異常がないことを確認する。
−3. 空中線部の点検
(1)空中線部の取付状態に異常がないこと及びふく射ビームの障害となる構造物がないことを確認する。
(2)空中線の電波ふく射面に汚損、亀裂等の異常がないことを確認する。
(3)回転部分の摩耗が著しくないことを確認する。
(4)伝送路等(導波管、導波管に準ずる電線路、レーダー信号用ケーブル、電源用電線等をいう。)の支持・固定状態及び空中線部、送受信部、表示器への接続状態並びに接地の状態に異常がないことを確認する。
−4. 送受信部のパルス幅切替用リレーの接点に焼損等の異常がないことを確認する。
−5. 表示器の点検
(1)表示器の設置場所が適切で操作に支障がないことを確認する。
(2)表示面、方位目盛板、カーソル板等に汚損等の異常がないことを確認する。
(3)スイッチ類の接点に異常がないこと及び箱体が確実に接地されていることを確認する。
(4)表示灯の断線、操作つまみの欠落等がないことを確認する。
18.2.2 電源装置の効力試験
−1. 主電源及び代替電源から受電可能であり、電源の切替えが素早くできること及び電源電圧が規定値以内であることを確認する。
−2. 停止状態から4分以内に、スタンバイ状態から15秒以内に、完全に作動することを確認する。
18.2.3 空中線の効力試験
−1. 空中線が毎分20回以上[12回以上](総トン数500トン未満の船舶に備え付けるもの(以下「乙種」という。)は12回以上)の速度で連続的かつスムーズに回転することを確認する。
−2. 回転音に異常がないことを確認する。
−3. 周波数が適正であることを確認する。
18.2.4 送受信部の効力試験
−1. 主要チェックポイントの電圧に異常がないことを確認する。
−2. 作動音に異常がないことを確認する。
18.2.5 表示器の効力試験
−1. 空中線の回転と表示面上のスイープが同期していることを確認する。
−2. 表示面の輝度・感度・同期調整に異常がないことを確認する。総トン数500トン以上の船舶に備え付けるもの(以下「甲種」という。)においては、感度・輝度等を自動調整する装置を備える場合は、それぞれの装置が作動中であることを表示することができ、かつ、その作動を中止することができることを確認する。
−3. 表示灯の点灯・照度調整に異常がないことを確認する。
−4. 船首輝線が1度以下の誤差で、幅が0.5度以下の線により表示されていること、表示面の端まで表示することができること、及びこの線を一時的に消去することができることを確認する。
−5. 雨雪妨害除去回路(FTC)及び海面反射抑制回路(STC)が適正に作動することを確認する。
−6. 各距離レンジについて、その表示範囲、固定電子距離環数が適正であることを確認する。甲種においては、オフセンター機能を有する場合は追加の電子距離環の表示を確認するとともに、固定電子距離環の幅が船首輝線の幅以下であることを確認する。
−7. 使用中の距離レンジ、固定電子距離環の間隔及び可変電子距離環による測定距離が、数字により明確に表示され、かつ、適正であることを確認する。また、甲種の可変電子距離環は、5秒以内に表示された物標の距離を測定できることを確認する。
−8. 固定電子距離環、可変電子距離環及び電子方位線は、輝度を調整することができ、かつ、消去できることを確認する。ただし、甲種においては、それぞれ独立に消去できることを確認する。
−9. 1の距離レンジについて、船の全周にわたり、できるだけ多くの物標により、固定電子距離環及び可変電子距離環を使用し、それぞれの距離精度が使用中の距離レンジの1%[1.5%]又は30m[70m](乙種においては、固定電子距離環では6%又は82m、可変電子距離環では6%又は120m)のうちいずれか大きい方の値以下の誤差であることを確認する。
−10. 甲種の電子方位線について、次のことを確認する。
(1)表示された物標の方位を5秒以内に測定することができること。
(2)左右のいずれの方向にも回転することができ、かつ、表示された物標の方位角を明りょうに数字で表示することができること。また、その線の幅は、船首輝線の幅以下であって、船首輝線と明確に区別できること。
(3)真方位モード又は相対方位モードのいずれを使用しているかを表示することができること。
(4)起点の位置から表示された物標までの距離を測定することができ、起点を自船の位置以外に移動させた場合には、容易に起点を自船の位置に戻すことができること。
−11. 真方位モードと相対方位モードの切替えが支障なく行えることを確認する。また、甲種においては、平行線を2本以上表示することができることを確認する。
−12. 1、2の物標により、方位精度が相対方位モード及び真方位モードにおいて、±1度以下(乙種は、±2度以下)であることを確認する。
−13. 規定されている距離レンジにおいて、50〜100%の距離にある適当な物標により、距離分解能が40m[50m]以下、方位分解能が2.5度以下(乙種ではそれぞれ68m以下、3度以下)であることを確認する。
−14. 映像を観測し、各種の偽像及び障害物等による映像の陰の現れ方に異常がないことを確認する。
−15. 1、2の物標を用いて、最大探知距離及び最小探知距離が20海里及び50m(乙種は20海里及び92m)であることを確認する。
−16. ジャイロコンパスの表示に対する連動誤差が、ジャイロコンパスの毎分2回転に対し0.5度以下であることを確認する。
−17. 甲種については、次の機能を確認する。
(1)航行情報以外の情報を表示面に表示しない機能及び記号等の物標以外の情報の消去機能が適正であること。
(2)自船の速力並びに潮流の速度及び流向に関する情報を手動操作により入力できること。
(3)船速距離計、ジャイロコンパス又は自船の位置を測定するための装置からの情報の伝達が行われていることが表示され、かつ、当該情報の伝達が停止した場合に、可視可聴の警報を発すること。
(4)真方位モードと相対方位モードの切替え後5秒以内に物標を表示できること。
−18. 甲種においては、表示性能に著しい劣化がないかを確認できる装置の機能が適正であることを確認する。
−19. 反射プロッターによるプロッティング設備については、プロッターガラス面に描かれたマークが観察位置を変化させても適正に映像の上に重なっていること、及び照明調整により見やすい明るさに調整できることを確認する。
−20. 9GHz帯の電波を使用するものにあっては、水平偏波を受信することができ、かつ、レーダー・ビーコン(甲種においてはレーダー・ビーコン及びレーダー・トランスポンダー)の表示を消去させる装置(干渉除去回路)を備える場合は、当該装置の機能を停止させることができることを確認する。甲種において、2以上の偏波を使用することができる場合は、使用中の偏波方式を表示することができることを確認する。
−21. 2以上の航海用レーダーを備えている場合は、相互干渉像が現れないことを確認する。
−22. 2以上の航海用レーダーに相互の切替装置が備えられている場合には、素早く切替えができ、そのうちの1のレーダーが故障した場合でも他方に影響を及ぼさないことを確認する。
−23. その他の付加装置について、作動に異常がないことを確認する。
18.3 整備記録の作成等
 整備者は、別紙様式の航海用レーダー点検整備記録表/レーダー設備試験成績表(1)(「GMDSS設備等整備記録総括表」を含む。)を作成し、管海官庁及び船舶所有者に各1部送付するとともに、1部を事業場に保管する。
 なお、平成10年12月7日運輸省令第75号による船舶設備規程の改正前の規定による航海用レーダーにあっては、平成9年6月16日付け海検第40号による「航海用レーダー点検整備記録表/レーダー設備試験成績表(1)」の様式を使用してもよい。







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