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第3章 船舶安全法及び関係規則(抜すい)
3・1 船舶安全法の概要
3・1・1 目的
 船舶は、海上において航行の用に供される交通具であることから、一度港を離れると長期間にわたり陸上から孤立して行動することとなり、気象、海象の変化に伴う特別の危険に遭遇することも多く、陸上のそれに比し一段と安全の確保のための措置を図る必要がある。
 海上における人命の安全を確保するためには、船舶の構造が堪航性(海上において通常予想される危険に耐え、安全に航行することができる凌波性、復原性、操縦性等の性能を有している状態をいう。)を保持するに十分なものであること、万一非常の危険に遭遇した場合でも、人命の安全を保持することができるだけの諸設備が船舶に施設されていること及び船舶に搭載する危険物等の積付方法等航行上の危険防止について特別の考慮を払う必要がある。
 このため船舶安全法第1条では「日本船舶は本法に依り其の堪航性を保持し且人命の安全を保持するに必要なる施設を為すに非ざれば之を航行の用に供することを得ず」と規定している。
 つまり日本船舶は航行中における十分な堪航性と人命の安全の保持に必要な施設をしなければ航行の用に供してはならないとしているのである。更に法第28条では、船舶による危険物等の運送及び航行上の危険防止に関する事項について規定している。
 この法第1条及び第28条が船舶安全法の精神であり法の目的である。
(注)法と略してあるのは船舶安全法をいう。
 
3・1・2 概要
 船舶安全法は以上の目的を達成するため船舶所有者等が遵守すべき次に掲げる事項について規定している。
(1)
船舶は次に掲げる事項について命令で定める技術基準に従って施設しなければならないこと。
(法2条、第1項)
一.船体 二.機関 三.帆装 四.排水設備
五.操舵、繋船及び揚錨の設備 六.救命及び消防の設備
七.居住設備 八.衛生設備 九.航海用具
十.危険物其の他の特殊貨物の積附設備 十一.荷役其の他の作業の設備
十二.電気設備 十三.前各号の外国土交通大臣において特に定むる事項
(説明)
 航海用レーダー、電気設備等について命令で定める技術基準は次のとおりである。
(1)
航海用レーダー及び自動衝突予防援助装置
(航海用具に該当する。)
船舶設備規程
(2)
電気設備
 船舶設備規程(小型船舶については小型船舶安全規則、小型漁船については、小型漁船安全規則)
(2)
船舶所有者は前(1)の事項、満載吃水線、及び無線電信等について国(小型船舶については日本小型船舶検査機構)の検査を受けなければならないこと(法第5条、第6号)
(3)
船体、機関、帆装、排水設備、操舵、繋船及び揚錨の設備、危険物その他の特殊貨物の積附設備、荷役その他の作業の設備電気設備、消防設備、脱出設備、焼却設備、コンテナ設備、損傷制御図、火災制御図、タンカーの損傷時復原性及び満載吃水線に関する事項については、日本海事協会の検査を受け、その船級を有している間は旅客船を除き管海官庁の検査を受け、これに合格したものと見做されること。(法第8条)
(4)
管海官庁(小型船舶については日本小型船舶検査機構)は定期検査に合格した船舶に対しては航行区域(漁船については従業制限)、最大搭載人員、制限汽圧及び満載吃水線の位置を定め船舶検査証書及び船舶検査済票(小型船舶に限る。)を交付すること。(法第9条)
 
3・2 船舶設備規程
(航海用レーダー)
第百四十六条の十二 船舶(総トン数300トン未満の船舶であって国際航海に従事する旅客船以外のものを除く。)には、航海用レーダー(総トン数10,000トン以上の船舶にあっては、独立に、かつ、同時に操作できる2の航海用レーダー)を備えなければならない。ただし、総トン数300トン以上500トン未満の船舶であって旅客船及び危険物ばら積船等以外のもののうち2時間限定沿海船等、沿海区域を航行区域とする船舶であって、その航行区域が瀬戸内(危険物船舶運送及び貯蔵規則第六条の二の三第3項の瀬戸内をいう。次条において同じ。)に限定されているもの及び管海官庁が航路等を考慮して差し支えないと認める船舶は、この限りでない。
(関連規則)
船舶検査心得 3-1
146−12.0(a)(航海用レーダーの免除)
 次に掲げる船舶には、航海用レーダーの備付けを免除して差し支えない。
(1)
湖川港内のみを航行する船舶
(2)
発航港より到達港まで(発航港より最終到達港までの間に最寄の到達港がある場合には、それぞれの航路の発航港より到達港まで)の距離が、おおむね5海里以内の航路を航行する船舶であって、海上運送法に基づく免許等により当該航路のみしか航行しないことが確実であるもの
(説明)
(1)
「2時間限定沿海船等」とは次の船舶をいう。
(1)
沿海区域を航行区域とする船舶であって、平水区域から当該船舶の最強速力で2時間以内に往復できる区域にのみを航行するもの
(2)
平水区域を航行区域とする船舶
(2)
「沿海区域を航行区域とする船舶であって、その航行区域が瀬戸内に限定されているもの」とは、和歌山県田倉埼から兵庫県淡路島生石鼻まで引いた線、同島門埼から徳島県大磯埼まで引いた線、愛媛県佐田岬から大分県関埼まで引いた線、福岡県門司埼から山口県甲山まで引いた線及び陸岸により囲まれた水域に限定された沿岸区域を航行区域とする船舶をいう。
 
第百四十六条の十三 前条の規定により備える航海用レーダー(2の航海用レーダーを備えなければならない場合にあっては、そのうちの1の航海用レーダー)は、9ギガヘルツ帯の電波を使用するものでなければならない。ただし、総トン数500トン未満の旅客船及び危険物ばら積船等のうち、2時間限定沿海船等及び沿海区域を航行区域とするものであってその航行区域が瀬戸内に限定されているものに備える場合は、この限りでない。
2. 前条の規定により備える航海用レーダーは、前項の要件のほか次に掲げる要件に適合するものでなければならない。
磁気コンパスに対する最小安全距離を表示したものであること。
電磁的干渉により他の設備の機能に障害を与え、又は他の設備からの電磁的干渉によりその機能に障害が生じることを防止するための措置が講じられているものであること。
機械的雑音は、船舶の安全性に係る可聴音の聴取を妨げない程度に小さいものであること。
通常予想される電源の電圧又は周波数の変動によりその機能に障害を生じないものであること。
過電流、過電圧及び電源極性の逆転から装置を保護するための措置が講じられているものであること。
船舶の航行中における振動又は湿度若しくは温度の変化によりその性能に支障を生じないものであること。
2以上の電源から給電されるものにあっては、電源の切替えを速やかに行うための措置が講じられているものであること。
表示器は、他の設備によりその使用が妨げられるおそれのない船橋の適当な場所に設置されていること。
告示で定めるところにより、物標を探知し、かつ、当該物標の方位及び距離を正確に測定することができるものであること。
3. 2以上の航海用レーダーに相互の切替装置を設けるときは、1の航海用レーダーが故障しても他の航海用レーダーの機能に障害が生じないような措置を講じなければならない。
 
 上に基づき次の告示がある。
(告示)
 船舶設備規程第百四十六条の十三第2項第九号の航海用レーダーの要件を定める告示(平成10年12月9日運輸省告示第676号)
1 総トン数500トン以上の船舶に備える航海用レーダーは、次に掲げる要件に適合しなければならない。
電源の開閉器は、表示面に近接した位置に設けられていること。
操作用のつまみ類は、使用しやすいものであること。
前号のつまみ類は、それぞれ管海官庁が適当と認める表示を付したものであること。
停止状態から4分以内に完全に作動するものであること。
15秒以内に完全に作動する状態にあらかじめしておくことができるものであること。
空中線は、方位角360度にわたって、連続的かつ自動的に毎分20回以上時計回りに回転し、かつ、相対風速が毎秒51.5メートルの状態においても支障なく作動するもの又はこれと同等以上の効力を有するものであること。
表示面の有効直径は、次の表の左欄に掲げる船舶の区分に応じ、それぞれ同表の右欄に掲げるものであること。
 
区分 有効直径
総トン数500トン以上1,000トン未満の船舶 180ミリメートル以上
総トン数1,000トン以上10,000トン未満の船舶 250ミリメートル以上
総トン数10,000トン以上の船舶 340ミリメートル以上
 
自船を中心とする0.25海里、0.5海里、0.75海里、1.5海里、3海里、6海里、12海里及び24海里の各距離レンジを含む組合せを有するものであること。
使用中の距離レンジの値及び周波数帯を見やすい位置に明示することができるものであること。
空中線を海面上15メートルの高さに設置した場合において、通常の電波の伝播(ぱ)状態において、船舶が10度横揺れ又は縦揺れしたときに、次に掲げる距離性能を有するものであること。
20海里の距離にある高さ60メートルの陸地及び7海里の距離にある高さ6メートルの陸地を明りょうに表示することができること。
7海里の距離にある総トン数5,000トンの船舶、3海里の距離にある長さ10メートルの船舶及び2海里の距離にある有効反射面積10平方メートルの浮標を明りょうに表示することができること。
空中線の位置から最小水平距離で50メートル以上1海里以下の距離にある総トン数5,000トンの船舶、長さ10メートルの船舶及び有効反射面積10平方メートルの浮標を、距離レンジの選別器の調整のみにより、明りょうに表示することができること。
十一
次に掲げる分解能を有するものであること。
1.5海里の距離レンジにおいて、当該距離レンジの50パーセント以上100パーセント以下の距離にあり、かつ、相互に40メートル離れた同方位上の2の物標を分離して表示することができること。
1.5海里の距離レンジにおいて、当該距離レンジの50パーセント以上100パーセント以下の等しい距離にあり、かつ、方位角の差が2.5度である2の物標を分離して表示することができること。
十二
船舶の航行に必要な情報(以下「航行情報」という。)以外の情報は、表示面に表示しないものであること。ただし、管海官庁が差し支えないと認める場合は、この限りでない。
十三
記号その他の物標以外の情報は、画面から消去できるものであること。
十四
表示された物標は、すべて同一の色で表示するものであること。
十五
表示面に表示される情報は、常に明りょうに表示できるものであること。ただし、射光を防ぐため取付け及び取外しが容易に可能なフードを設ける場合は、この限りでない。
十六
レーダー・ビーコンからの信号を表示することができるものであること。
十七
偽像をできる限り表示しないものであること。
十八
真運動表示方式(表示された陸地又は静止した物標を基準とした表示面の表示方式をいう。以下同じ。)及び相対運動表示方式(自船の表示位置を基準とした表示面の表示方式をいう。以下同じ。)により表示することができ、かつ、真運動表示方式で表示する場合にあっては、次に掲げる要件に適合するものであること。
対水速力及び対地速力により表示することができること。
対水速力又は対地速力のいずれを使用しているかを表示することができること。
自船の表示位置が表示面の中心からその有効半径の75パーセントの範囲を超えた場合には、自動的に自船の位置を航行情報を有効に表示できる位置に移動すること。
十九
方位の表示方式の切替え後、5秒以内に物標を表示できるものであること。
二十
電子距離環は、次に掲げる要件に適合するものであること。
第八号に掲げる各距離レンジにおいて6(0.25海里以上0.75海里以下の各距離レンジにおいては、2以上6以下)の等間隔の固定の電子距離環を表示することができること。この場合において、オフセンタ機能(自船の位置を表示面の中心以外に表示する機能をいう。)を有する場合には、等間隔の追加の電子距離環を表示すること。
物標の距離を、使用中の距離レンジの1パーセント又は30メートルのうちいずれか大きい方の値以下の誤差で測定することができること。
固定の電子距離環の幅は、船首方向を示す線の幅以下であること。
固定の電子距離環の間隔により示される距離を数字で表示することができること。
可変の電子距離環により測定した距離を明りょうに数字で表示することができること。
可変の電子距離環は、すべての距離レンジにおいて5秒以内に表示された物標の距離を測定することができること。
二十一
ジャイロコンパスと連動することにより真方位(真北を基準とする方位をいう。以下同じ。)により表示することができる装置を備えたものであること。この場合において、ジャイロコンパスの表示に対する当該装置の連動誤差は、当該ジャイロコンパスの毎分2回の回転に対し2分の1度以下でなければならない。
二十二
前号のジャイロコンパスとの連動装置が正常に作動しない場合であっても、相対方位(船首方向を基準とする方位をいう。以下同じ。)により表示することができるものであること。
二十三
船首方向を示す線は、次に掲げる要件に適合すること。
1度以下の誤差で表示することができること。
幅が2分の1度以下のものであること。
表示面の端まで表示することができること。
一時的に消去することができること。
二十四
電子方位線は、次に掲げる要件に適合するものであること。
左右のいずれの方向にも回転することができること。
表示された物標の方位を5秒以内に測定することができ、かつ、方位角を明りょうに数字で表示することができること。
5分の1度以下で方位角を測定することができること。
幅は、船首方向を示す線の幅以下であって当該線と明確に区別できること。
真方位及び相対方位により表示することができること。
真方位又は相対方位のいずれを使用しているかを表示することができること。
外部の磁界に変化があった場合においても、表示面の周辺部に表示された物標の方位を1度以下の誤差で測定することができること。
起点の位置から表示された物標までの距離を測定することができること。
起点を自船の位置以外に移動させた場合には、容易に起点を自船の位置に戻すことができること。
二十五
表示面の周辺には、5度、10度及び30度ごとにそれぞれ明確に区別できる目盛を備えていること。
二十六
前号の30度ごとの目盛には、方位角を表示すること。
二十七
平行線を2本以上表示することができるものであること。
二十八
固定の電子距離環、可変の電子距離環及び電子方位線は輝度を調整することができ、かつ、それぞれ独立に消去できるものであること。
二十九
表示性能の著しい劣化を容易に確認することができる装置を備えたものであること。
三十
雨等の降下物、海面及び他のレーダーの電波による不要な表示を減少させる装置であって次に掲げる要件に適合するものを備えるものであること。
手動により連続的に調整することができること。
当該装置が作動しないようにすることができること。
三十一
感度を自動的に調節する装置、輝度を自動的に調節する装置並びに雨等の降下物、海面及び他のレーダーの電波による不要な表示の抑制機能を自動的に調節する装置を備える場合は、それぞれの装置が作動中であることを表示することができ、かつ、その作動を停止することができるものであること。
三十二
設計能力を損なわないように設置されていること。
三十三
自船の速力並びに潮流の速度及び流向に関する情報を手動操作により入力できるものであること。
三十四
管海官庁が適当と認める方法により連動する船速距離計、ジャイロコンパス又は自船の位置を測定するための装置(「船速距離計等」という。以下同じ。)から情報の伝達を行うことができるものであること。
三十五
船速距離計等からの情報の伝達が行われていることを表示することができ、かつ、当該情報の伝達が停止した場合に、可視可聴の警報を発するものであること。
三十六
9ギガヘルツ帯の電波を使用するものにあっては、前各号に掲げるほか次の要件にも適合するものであること。
レーダートランスポンダからの信号を表示することができること。
水平偏波を使用できること。
2以上の偏波を使用することができる場合にあっては、使用中の偏波方式を表示することができること。
三十七
レーダー・ビーコン及びレーダートランスポンダのから信号の表示を消去する装置を備える場合は、その作動を停止することができるものであること。







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