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第6章 インターフェースに関連する規格
 本章では、電子航海計器と航法機器、無線通信機器、パソコンなどのデータ通信において必要とされるインターフェース(ハードウエアの物理仕様、データフォーマットおよび接続コネクタとケーブルの規格)に関連する規格ついて述べる。
 
6・1 世界標準規格
 電子機器間を接続する際のインターフェースに関連する規格は、IEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)によって定められたものが世界標準となっている。電子航海計器とパソコンの通信などの場合にもこの規格が用いられる。
 IECとは電気・電子業界と消費者のための国際規格をまとめ、公表する作業を行なう機関で、会員には工業化された国の全てが含まれる。ここで定められた規格は100カ国以上で使用されている。IECが国際規格、指針、技術報告などを公表する出版物にはすべて番号が振られており、1997年以降、60000〜79999の番号を使用している。これはISO(国際標準機構)との共同専門諮問評議会で国際規格の番号を統合したもので、ISOの出版物は1〜59999までを採用している。IECにおける1997年以前の出版物も60000を追加する形で(例えばIEC 950はIEC 60950とする)新しい番号に統一されている。
 本章ではIECの規格の中から、IEC 61162「海上における航海及び無線通信の機器とそれらのシステム(デジタルインターフェース、単一送信−複数受信)」を取り上げて、電子航海計器間またはパソコンとの接続・通信における国際標準のハードウエア仕様とデータフォーマットについてまとめた。IEC 61162規格では1秒に1メッセージ程度の送信を標準的な速度としているが、20msに1回以上の高速な通信についても規定している。ここでは高速通信における規格を中心に述べる。
 この中で、電子機器内部の回路などについてはITU規格に従う旨、記されている。ITU(International Telecommunication Union:国際電気通信連合)とは電気通信に関する規格を作っている機関でITU−T(電気通信標準化部門)とITU−R(無線通信部門)とから成り、それぞれの分野で国際標準となる勧告を発表している。ここで関係するITU−TV.はモデム関連の勧告である。
 ところで、IEC規格中のデータフォーマットに関する部分は、NMEA0183バージョン2.30と厳密に連携しており、内容を一致させている。NMEAとは、「The National Marine Electronics Association」(全米船舶電子機器協会)の略で、船舶用電子機器工業と市場の普及と発展に寄与することを目的とし、航海計器の電気的インターフェースと通信プロトコルなどの規定を行なっている。IEC規格ではデータフォーマットについては一部の例が示されるのみで、詳細は機器のマニュアルかNMEAによる印刷物を参照することになる。実際IECでは製造メーカに対して、機器のマニュアルあるいは専用の印刷物に通信に必要な情報を記載するように推奨している。
 ただしIEC規格では接続に用いるコネクタについては、「入手容易な市販品とすること」以外規定していない。本章の後半では、このような電子機器の接続に広く用いられているコネクタの世界標準規格について述べる。この規格は「米国電子工業会(EIA)の推奨する標準」として公表されたものであるが、パソコンを含めて多くの電子機器がこれに対応しており、実質的に世界標準となっている。
 また最後に、関連する規格として、IEC 61097−7規格およびIEC 60945規格の概要をまとめた。
 以下に本章に関係する勧告と発行機関のホームページアドレスをまとめる。
 
IEC 60945: 1996年発行。「海上における航海及び無線通信の機器とそれらのシステム―要求性能一般、試験の方法と必要とされる結果―」
IEC 61097−7: 1996年発行。「GMDSSパート7:船上におけるVHF無線電話の送受信―操作および要求性能、試験の方法と必要とされる結果―」
IEC 61162−1: 1995年発行。「海上における航海及び無線通信の機器とそれらのシステム(デジタルインターフェース、パート1:単一送信―複数受信)」
IEC 61162−2: 1998年発行。「海上における航海及び無線通信の機器とそれらのシステム(デジタルインターフェース、パート2:単一送信―複数受信、高速通信の場合)」
以上IEC関連はhttp://www.iec.ch(英語)
   
ITU−TV.11: 1996年発行。「10Mビット/秒までの通信で動作する平衡相互接続回路の電気的特性」
  http://www.ituaj.or.jp(日本語)
NMEA0183−Version2.30: 1998年発行。「全米船舶電子機器協会―航海計器の電気的インターフェースと通信プロトコルのための標準―」
  http://www.nmea.org(英語)
EIA485: 1991年発行。「平衡デジタル多接点システムに用いられる発生器と受信機の電気的特性」
  http://www.eia.org(英語)
 
6・2 ハードウエア仕様とデタフォーマット(IEC 61162規格)
 IEC 61162規格の概要をまとめた。下線部分は高速な通信時のみに関係し、標準速度の通信においては規定されていない項目である。
 ここでは1つのトーカ(データ送信側)と複数のリスナ(データ受信側)の接続を想定している。たとえばGPS受信機(トーカ)とパソコンやチャートプロッタ(リスナ)という組み合わせである。







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