3・6 電動機及び制御装置
3・6・1 一般
この試験は被駆動装置(ポンプなど)の試験時に行い、通常係留中に実施するが、操舵機、ウインドラス等は海上運転時に実施する。また、極力船内電源を使用するものとする。
3・6・2 絶縁抵抗試験
各電動機の運転前(冷態時)と運転後(温態時)に電動機及びその制御装置に対し導電部と船体間の絶縁抵抗を500Vメガーにより計測し、1MΩ以上とする。
3・6・3 始動試験
すべての電動機について実用状態で2〜3回始動し、始動状況に異常のないことを確認するとともに、電圧、始動電流、始動時間を測定する。特に、最大出力の電動機、又は始動電流が最大の電動機の始動試験の場合には、電源電圧の変動(電圧降下)による他の電気機器への運転、制御などに影響がなかったかどうか確認する。
3・6・4 実負荷試験
各電動機を実負荷にて適当な時間運転し、容量(出力)、電圧、電流、回転速度等を測定するとともに、運転状態(振動、騒音、温度上昇等)に異常のないことを確認する。
3・6・5 遠隔制御及び自動制御装置
次の試験は、電動機が遠隔及び自動制御される場合にそれぞれの項に従って適用する。
(1)遠隔発停試験:機側あるいは制御室からの始動・停止操作を行い異常のないことを確認する。
(2)自動発停試験:液面又は圧力などの高・低により自動発停する装置は検出器の設定値どおりに作動することを確認する。
(3)自動切換試験:二重装備の電動機のうち1台を待機の状態として、運転中の電動機又はポンプを無電圧又はポンプ吐出圧力を低下させた場合、待機電動機が自動的に始動することを確認する。なお、圧力信号による始動方式を採用する場合、待機電動機が自動的にリセット(設定)されるような回路方式のものは圧力が変動すると待機電動機と運転電動機とが交互に発停を繰り返す恐れがあるので注意を要する。
(4)順序始動試験:運転中の発電機の遮断器をトリップ(ブラックアウト)させ、予備発電機を運転し、配電盤母線に電圧が確立(予備発電機用遮断器が投入)されたのち、いままで運転されていた電動機が、予め設定されたタイマによって順次、自動的に再始動することを確認するとともに各電動機の始動時に発電機の電圧変動に異常のないことを確認する。
(5)電動機の非常停止試験:電動機の非常停止には、火災発生時に停止する各種燃料油装置のポンプ及び各種の通風装置のほか、乗組員の船外脱出時に救命艇昇降付近に排水口をもつポンプがあり、非常停止ボタンは一般に次の場所に設けられている。試験は、それぞれの位置から非常停止ボタンを操作することにより計画された電動機が確実に停止されることを確認する。
非常停止電動機 |
非常停止ボタン取付位置 |
燃料油装置のポンプ 機関室通風機 ポンプ室通風機 |
機関室入口(上甲板)、又はファイヤステーション、操舵室にも設ける場合がある |
貨物油ポンプ 居住区通風機 空調関係 貨物倉通風機 |
荷役制御室 操舵室 |
冷却海水ポンプ ビルジポンプ 消火・雑用ポンプ等 |
端艇甲板(救命艇昇降付近) |
|
3・6・6 荷役装置(ウインチ、デッキクレーン等)
この試験は、メーカーの担当者立会のもとで行う必要がある。
(1)負荷試験:無負荷、全負荷及び過負荷で巻上げ、巻下げの運転試験を行い、電圧、電流、回転速度を測定する。これらの測定値は、メーカーにおけるデータ(電動機出力−速度特性等)と比較確認すること。なお、この試験で定格負荷巻下げの際には、発電機電圧の上昇と逆電力継電器の作動に注意する必要がある。
(2)制動(ブレーキ)試験:定格負荷で全速巻下げ中、制御ハンドルを急速に停止位置に戻す。このときのブレーキが確実に作動することを確認する。
(3)ハンドルノッチ急変試験:巻上げ全速ノッチから巻下げ全速ノッチあるいは巻下げ全速ノッチから巻上げ全速ノッチに制御ハンドルを急変させる。この試験で制御シーケンスが計画通り動作することを確認するとともに電源に与える影響のないことを確認する。
(4)非常停止試験:巻上げ又は巻下げ全速ノッチで運転中、非常停止スイッチを操作したとき、ブレーキが動作し完全に停止することを確認する。
(5)その他過巻き防止装置、旋回制限装置及び各種制限装置の作動を確認する。
3・6・7 エレベータ
(1)連続運転試験:全負荷状態にてエレベータケージ(篭)を最上層床面(フロア)と最下層床面(フロア)間を上昇及び下降させ支障なく作動することを確認する。
(2)各フロア到着試験:各負荷(例えば、0、30、100%)状態にて各フロアに支障なく到着することを確認する。なお、停止誤差は各昇降負荷状態にて所定の値(例えば、±50mm)以内とする。この試験における各負荷の大きさ及び停止誤差はメーカーの仕様書に定められた値に留意すること。
(3)扉インターロック装置:各フロアの出入口扉で、ケージが停止しているフロア以外の扉は開かないことを確認し、扉が完全に閉鎖しないとエレベータが動作しないことも合せて確認する。
(4)調速機(ガバナ)及び非常停止装置:ガイドワイヤを手動で働かせ、ケージが規定の速度を超過した場合、電動機への通電が遮断されると同時にケージが停止することを確認する。
(5)オーバートラベルリミット装置:ケージを頂部又は底部以上に昇降させ、昇降路に設けたオーバートラベルリミットスイッチが支障なく作動することを確認する。
(6)過荷重警報装置:定格積載荷重を超過したとき、ケージ内のランプ及びブザーによる警報が発することを確認する。
(7)非常連絡装置:ケージ内の「ALARM」押釦あるいはインターホンによりケージ内から船橋又は他の場所(例えば、総合事務室)へ非常連絡のできることを確認する。
3・7 電熱その他動力装置
電熱装置、厨房機器、試験用配電盤、船外給電箱などについては下記試験を行う。
3・7・1 絶縁抵抗試験
動作試験前に導体相互間、導体と船体間との絶縁抵抗を500V絶縁抵抗計により測定する。船舶設備規程によると電熱装置は1MΩ以上である。
3・7・2 動作試験
各機器へ正常に給電され、支障なく動作することを確認する。なお、電熱装置については、通電試験を行い、各部の温度(特にケーブル接続端子)に異常のないことを確認する。
3・8 照明装置
3・8・1 船灯試験
(1)絶縁抵抗試験
本試験は500V絶縁抵抗計で計測する。
(2)動作試験
船灯の点灯試験を行い、航海灯表示器の表示及びランプ断線の場合の警報が支障なく作動することを確認する。常用電源から非常用電源の切換が異常なく作動することを確認する。また夜間において遮光の良否を確認する。
3・8・2 信号灯試験
(1)絶縁抵抗試験
本試験は500V絶縁抵抗計により計測する。
(2)動作試験
次に示すような各信号灯が支障なく作動することを確認する。
(a)昼間信号灯 (b)モールス信号灯 (c)スエズ運河信号灯 (d)検疫灯 (e)プロペラ注意灯 (f)球状船首注意灯などの各種信号灯
3・8・3 一般電灯試験
総ての一般用電灯を実際に点灯させ、給電系統、スイッチ類、灯具などの各部に異常のないことを確認する。また、必要に応じ、船の運航上重要な場所及び作業場所の照度を測定し計画通りの明るさが得られているかどうかを確認する必要がある。
3・8・4 非常灯
総ての非常灯を実際に点灯させ、給電系統、灯具などの各部に異常のないことを確認する。また主電源喪失時に自動点火するものはその確認を行う。
|