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2・4・9 温度試験
(1)温度試験一般
 温度試験の一般事項は2.2.8で述べたとおりであり、通常、実負荷又は等価負荷をかけて行うが、それらが困難な場合には2.4.9(3)の温度推定法によってもよい。船舶用誘導電動機の温度上昇限度は表2・5又は表2・6を参照のこと。
 温度試験における運転方法について、JEC 2137−00に規定されている連続定格及び短時間定格の実負荷試験法を表2・13に示す。(反復定格については、JEM 1385−80(反復使用三相誘導電動機の温度上昇推定法)参照のこと。)
 
表2・13 実負荷温度試験法
定格 使用 試験前の温度 負荷のかけ方 負荷運転の終了
1 連続定格 連続使用 冷状態・熱状態のいずれでもよい。 連続して負荷をかける。ただし試験の初期に適当な過負荷をかけてもよい。 温度上昇値が一定と認められるとき。※
2 短時間定格 短時間使用 誘導機各部の温度が冷媒温度とほぼ一致すること。※※ 定格時間のみ負荷をかける。その場合できるだけ速かに定格負荷をかけることが必要である。 定格時間が終了するとき
温度上昇値が一定となったと認められるためには1時間当りの温度上昇の変化が1℃以内であることが必要である。
  ※※ 誘導機各部の温度が冷媒温度とほぼ一致すると認められるには冷媒温度との差が±5℃以内であることが必要である。
 
(2)等価負荷法
(a)一次重畳法 図2.42に示すように接続して、主電源AG1で定格電圧・定格周波数を被試験電動機に印加し無負荷運転を行い、主電源と約20%程度差を持つ周波数を発生する電源AG2を変圧器を介して回路に直列にそう入し、AG2の電圧・周波数を調整して電動機に流入する電流を全負荷電流に合せる。重畳電圧V2を被試験機のインピーダンス電圧近くにするとほぼ全負荷電流が流れる。補助電源AG2の相回転は主電源と同一方向に選ぶこと。この試験法は大容量のもの、形状の特殊のものとか実負荷をかけがたい機種に対しても、単独運転でき便利であるが、特別な電源設備を要するのが欠点である。
 
図2・43 一次重畳法結線図
 
図2・44 二次重畳法結線図
 
(b)二次重畳法 図2・43のように接続して、被試験電動機を単独で運転し、その二次側に低周波補助電源による電圧を重畳し、その電圧の大きさ・周波数を加減して一次側に全負荷電流に近い電流を流して行う方法である。この場合、補助電源の周波数は主電源周波数の1/2以下でなるべく低くする。
 
(3)温度上昇推定方法
 温度上昇推定方法は、鉄損による温度上昇試験と、抵抗損による温度上昇試験とを別々に行い、両試験の結果から全負荷時の温度上昇を推定する方法である。
(a)推定法1
(i)鉄損温度試験:定格電圧・定格周波数で無負荷運転を行い、温度上昇が一定になった時の各部の温度上昇値t0及び無負荷損W0を測定する。
(ii)抵抗損温度試験:定格電圧の1/2程度の電圧を一次側に加え、定格周波数で無負荷運転を行い無負荷損Wを測定し、次に定格一次電流になるように電動機に負荷をかけ、その時の各部の温度上昇値tを測定する。
(iii)定格負荷運転時の各部の温度上昇Tは次の式により算出する。
 
 
(b)推定法2
(i)鉄損温度試験:定格電圧・定格周波数で無負荷運転を行い、その時の各部の温度上昇値t0及び無負荷電流I0を測定する。
(ii)負荷温度試験:定格電圧・定格周波数にて、実負荷法又は等価負荷法にて電動機に負荷をかけ、その時の各部の温度上昇値t1及び電流I1′を測定する。I1′は定格一次電流の70%以上が望ましい。
(iii)計算式:定格負荷にて運転している時の各部の温度上昇値θは次式により算出する。
 
 
ただしI1:定格一次電流(A)
I2:無負荷電流(A)
(c)推定法3
(i)鉄損温度試験:定格電圧・定格周波数で無負荷運転をし、その時の各部の温度上昇値t0を測定する。
(ii)抵抗損温度試験:定格周波数で、ほぼ電動機の定格一次電流に等しい拘束電流を流すような電圧を一次側に加えて、無負荷運転を行い、定格一次電流になるように二次側に直流を加え、そのときの各部の温度上昇値t、一次入力W1および二次入力W2を測定する。
(iii)定格負荷運転時の各部の温度上昇値Tは次の式により算出する。
 
 
ここにI0:無負荷電流(A)
I1:定格一次電流(A)
W1、W2:直流励磁の際の一次・二次入力(W)
W′1、W′2:定格負荷に対する基準巻線温度に換算した一次・二次抵抗損(W)
cosφ:円線図から求めた全負荷力率(%)
(d)反復定格の温度上昇推定法
 反復定格の電動機は、実負荷法及び等価負荷法によることが困難な場合が多いので、推定法によることがある。その内容については始動及び制動損失を含まない場合と、含む場合が考えられる。詳細はJEM 1385−80を参照のこと。
2・4・10 絶縁抵抗試験
 2・2・9参照のこと。
2・4・11 耐電圧試験
 2・2・10参照のこと。
2・4・12 超過トルク耐力試験
 温度試験に引き続き、定格電圧及び定格周波数のもとで、定格出力に相当するトルクの1.6倍に等しいトルクを15秒間加え、これに耐えることを確認する。ただし、特殊電動機(ウインチ、ウインドラス、キャプスタン用など)の場合には注文主と製造業者間の協定による。
2・4・13 過速度試験
 無負荷で同期速度(多段速度電動機では最高同期速度)の125%の速度で運転し、船舶設備規程では1分間、NK規則では2分間これに耐えることを確認する。
2・4・14 単相誘導電動機の試験
(1)種類と試験項目
 単相誘導電動機は1kW以下の100V電源で使われる電動力応用機器、特に家庭用機器に多く利用される。始動装置の種類によって、次のとおり分類される。
(a)分相始動形
(b)コンデンサ始動形
(c)コンデンサラン形
(d)反発始動形
(e)モノサイクリック形
(f)くま取コイル形
(2)単相電動機の一般試験項目は
(a)巻線抵抗測定 (b)無負荷試験 (c)負荷試験 (d)始動試験 (e)温度試験 (f)耐電圧試験
 通常、多量生産されるロットでは(c)(e)項目は代表機のみ行うことが多い。試験内容に関しては、三相誘導電動機に準じて行えばよいが、詳細はJIS C 4203−83(一般用単相誘導電動機)を参照のこと。
2・4・15 その他の試験
(1)振動測定(2・2・16参照)
 電動機を定格電圧、定格周波数で無負荷運転し、振動を測定する。振動の測定は、弾性体で支持させて行う。ただし、400kgを超過する電動機は定盤上で行う。測定は、可能な限り両軸受部で行い、上下方向、軸と直角水平方向並びに軸方向について測定し、その複振幅が横形では3/100mm、立て形では2/100mmを超えないことを確める。
(2)騒音測定(2・2・16(2)参照)
(3)注水試験(主として、甲板機械用電動機に適用される)
 防水形の場合には3mの距離から、甲板防水形の場合には1.5mの距離から、ノズルの内径12.5mmの管を用いて水頭10mの水圧であらゆる方向から15分間注水を行い、機体内に水が浸入しないことを確認する。
2・4・16 復習問題(5)
(1)誘導電動機の特性試験法の種類を挙げよ。
(2)誘導電動機の特性を算定するためには、いかなる測定を行う必要があるか。
(3)拘束試験の方法について述べよ。
(4)円線図法について簡単に述べよ。
(5)誘導電動機の温度試験の等価負荷について述べよ。
(6)誘導電動機の超過トルク耐力試験について述べよ。







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