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2・4 誘導電動機
(1)形式試験
 三相誘導電動機の形式試験として受渡試験及び参考試験のほか次の項目がある。
(a)防爆試験
(b)風量試験
(2)受渡試験
 三相誘導電動機の受渡試験としては、次の項目がある。
(a)機械的点検
(b)巻線抵抗試験
(c)絶縁抵抗試験
(d)二次電圧の測定
(e)無負荷試験
(f)拘束試験
(g)特性算定
(h)温度試験
(i)耐電圧試験
(3)参考試験
 参考試験として注文者の仕様や設計及び技術上の必要に応じて、次の項目の中から適宜行うことがある。
(a)振動試験
(b)騒音試験
(c)過速度試験
(d)超過トルク耐力試験
(e)注水試験
(f)始動電流・始動トルク・始動時間の測定
(g)耐湿試験
(h)実負荷による特性試験
(i)組合せ試験(電動甲板荷役機械など)
 以上は電動機本体の試験項目であるが、各種付属品についても十分なる試験を行う必要がある。
 誘導電動機は非常に広い用途に使われるので、その用途に適した構造・特性を持っているかどうかを、本体と付属品についても十分に検査を行う必要がある。
 一般用誘導電動機の固定子巻線の抵抗は、ほぼ図2・37の値ぐらいである。抵抗測定は固定子巻線のみでなく回転子巻線も測定すること。これは特性算定には必要ないが、回転子巻線の温度上昇の算定、巻線の接続違いチェックのためである。なお、巻線抵抗値の各相間の不平衡は平均値の±5%以内が普通である。
 
図2・37 固定子巻線1相の抵抗値(75℃)の例
 
2・4・4 特性試験
(1)誘導電動機の特性として知りたいのは、負荷に対する電流・効率・力率・すべり・最大出力・停動トルク・始動トルク・二次電圧・二次電流、又はすべりに対するトルク・電流などである。これらの値を求める試験法として、普通行われるのは次の方法がある。
(a)円線図法
(b)スタインメッツ計算法
(c)損失分離法
(d)実負荷試験法
(e)損失の和による算定法
(a)は測定法としてはいちばん簡便なのでメーカーの試験法として一般に使われる。
(b)は精密な値を求めるには適しているが計算が面倒であり、余り使われない。
(c)は相手機械と連結された状態でできる。
(d)は円線図法では誤差が大きくなる特殊な電動機(励磁電流が全負荷電流の80%以上にもなるようなものなど)や、試作・研究のための実証試験などに使われる。
(e)はあまり使わないがJEC2137−00(誘導機)に規定されている。
 なおこのほか、すべりに対するトルクを過渡現象直視装置により観測することも行われる。
(2)電動機の特性を算定するためには、次の試験による測定結果が必要である。
(a)巻線抵抗測定(2・4・3参照)
(b)二次電圧の測定(2・4・5参照)
(c)無負荷試験(2・4・6参照)
(d)拘束試験(2・4・7参照)
2・4・5 二次電圧測定試験
 巻線形について二次巻線を開路し、回転子の静止状態で、一次巻線に定格周波数の定格電圧を加え、二次巻線端子間に誘起する電圧を測定し、次の値以内であることを確める。
 
各端子間電圧の平均値と、銘板記載値との差 銘板記載値の±3%
各端子間電圧と、その平均値との差 各端子間電圧の平均値の±1%
備考 定格電圧(E)で実測する代りに、定格電圧1/2以上の電圧(E′)を加え、二次巻線端子間に誘起する電圧(E′2)を測定し、これを下式により算出してもよい。
   E2=E′2E/E′ ここにE2:二次静止誘起電圧
 
2・4・6 無負荷試験
 この試験は円線図法によって特性算定を行う場合のすべりS≒0の点(無負荷点)の特性を測定すると共に運転中の各部の状態を点検する。
 試験は任意の周囲温度で30分以上無負荷運転し、定格電圧のもとで入力が一定になったら電源周波数を定格周波数に保持し、定格電圧の120%ぐらいから機械損の分離し得る程度の電圧まで約10%づつ電圧を下げて、その都度入力及び電流を測定する。このとき、定格電圧では各相電流の平均値がJIS C 4210−83(一般用低圧三相かご形誘導電動機)に記載されている参考値以内にあるか、また各相電流とその平均値の±5%以内にあることを確認する。
 
図2・38 無負荷特性曲線 55kW−4極−3000V−50Hz
 
 図2.38は無負荷特性の一例である。
 なお、測定回路は拘束試験時と同じであるが、計器を替える必要がある。
〔注意〕
(1)運転に先立ち、機械的点検を十分にし、異物の混入、ブラシのはずれなどのないこと、潤滑油は規定どおりあることを確める。
(2)運転に入ったらすぐエンドプレー(軸方向の振れ)を確め、異常音・振動に注意する。
(3)電源に商用電源を使う場合は電圧の平衡に注意を要する。一般に誘導電動機は電圧の不平衡の程度により無負荷電流の不平衡の程度が大きい。
2・4・7 拘束試験
(1)拘束試験の方法
 この試験は、円線図法によって特性算定を行う場合の、すべり(拘束点)の値を求めるために行う。電動機の軸が動かぬように特殊腕木などで固定し、任意の周囲温度で一次巻線に定格電流又はそれに近い一次電流が流れるような定格周波数の低電圧を加えて、一次電流、印加電圧及び入力を測定する。定格負荷電流に対する拘束電圧(インピーダンス電圧)の値は、440V電動機で70〜100Vである。
 図2.39はその測定接続図である。
 
 
CB 遮断器
VT 計器用変圧器
CT 計器用変流器
VS 電圧計用切換器スイッチ
AS 電流計用切換器スイッチ
W1、W2 電力計
V 電圧計
F 周波数計
A 電流計
IM 被試験機
図2・39 拘束試験回路図
 
〔注意〕
(a)巻線形では二次端子を短絡して行う。
(b)二次電力計の読みから力率は次の式で求める。
 
 
 ただし、力率が50%以下の時は一方の電力計の読みは負の値となることに注意。
 この値と入力・電圧・電流から求めた力率が合致していることを確める。少くとも両者から算出した力率の差は後者の10%以下のこと。
(c)電流の大きい電動機を試験する時、VTから電動機まで線路が長いと、電圧降下が無視できないのでVTを電動機端子に接続すること。
(d)巻線形電動機では回転子の位置によってインピーダンス電圧の値が多少変るので(±3〜5%ぐらい)、平均値を示す位置で行うこと。
 図2.40は回転子位置による拘束電圧の変化の一例を示す。
(e)拘束したまま電流を通すので巻線が加熱するから迅速に行うこと。
(f)この試験で電流が不平衡な場合は、巻線のつなぎ違い、接続部のろう付不良、層間短絡などが考えられる。
 
図2・40 回転子位置の変化に対する拘束電圧の変化の一例
(全閉巻線形15kW−8極−200V−50Hz)
 
(2)低周波拘束試験
 特殊かご形誘導電動機・大容量高速機などは(1)の定格周波数による拘束試験のほかに、定格周波数の1/2の周波数でも同じような試験を行う。これを低周波拘束試験といい特殊かご形電動機の回転子導体の電流による漏れ磁束の分布が二次周波数によって変化するため、回転子の拘束時と運転時ではインピーダンスに相当の相違を生ずる。このため定格周波数と1/2周波数によるインピーダンスから運転時(円線図法では定格周波数の1/5の周波数)のインダクタンスと抵抗を算定している。
〔注意〕
 この試験では、定格周波数の1/2の周波数を発生する電源が必要であるが、ない時は、定格周波数を発生している状態から試験用発電機の駆動機の電源を切って、減速させる途中で測定するとよい。
(3)拘束試験の簡便法
 拘束試験は低電圧の平衡三相電圧を必要とするので試験用発電機又は商用電源から誘導電圧調整器を通して行うのが普通である。しかし試験設備の不備な場合は次のように単相を印加して行うと簡便である。図2・41は一次巻線の2端子を短絡し、それと他の1端子に単相電圧を印加する。この場合の電流を全負荷電流近くにする。可変抵抗はグリッド抵抗でも水抵抗でもよい。いま、単相電圧の読みE1、電流I1、入力P1としたとき、三相印加時に換算するには、次のようにする。
 
 
 これを単相試験法と呼んでいる。
 
R 可変抵抗器
A 電流計
V 電圧計
W 電力計
IM 被試験機
図2・41 単相試験法結線図







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