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2・3・8 負荷特性試験
(1)発電機の負荷特性試験
 温度試験につづき、発電機が暖まった状態で負荷特性試験を行う。負荷時特性曲線として次のものがある。
(イ)外部特性曲線 負荷電流による端子電圧の変化を示すもの。
(ロ)負荷特性曲線 負荷を一定に保ち界磁電流に対する端子電圧の変化を示すもの。
(ハ)調整曲線 端子電圧を一定に保ち、負荷電流と界磁電流の関係を示すもの。
 一般には外部特性曲線を求め、電圧変動率を測定し、負荷時の特性曲線としている。
(a)自励分巻発電機
 負荷電圧確立については、図2・28のように接続し、(Rf+FR)の値が定格電圧を定格界磁電流で割った値の約2倍以上になるようにFRを定め、発電機の定格回転速度になってからFRを徐々に減少すると、図2・29のP4、P3、P2、P1と電圧は上昇する。P1点には次の関係がある。
E1=Rf1If1
 
 
 ここにRf1=FR+Rf
 
図2・28 自励分巻発電機
 
図2・29 自励分巻発電機抵抗曲線
 
 このときOF1を界磁抵抗線といい、無負荷飽和曲線の直線部分に重なる直線OF5に対する界磁回路の抵抗を臨海抵抗という。この値を超える電圧の発生は行われない。外部特性は次のようにして測定する。FRによりほぼ定格電圧に合わせ、徐々に負荷電流を増加し、定格電流になったら端子電圧及び速度も定格値に合わせる。次にFRを固定し、負荷電流をいったん約125%に増大し、その点から端子電圧を測定しながら徐々に負荷を減少し無負荷に至らしめる。各負荷での回転速度を定格値とすれば発電機単独の外部特性を得る。測定した電圧を負荷電流に対してプロットし、図2・30の特性を得る。電圧変動率は次の式により求める。
 
 
 ここにε;電圧変動率、EO;無負荷電圧(V)
E;定格電圧
 
図2・30 自励分巻発電機の負荷特性
 
 この場合駆動機の速度変動を含めたものを総合電圧変動率といい、含まないものを固有電圧変動率という。
(b)他励発電機
 図2・31で定格電圧・定格負荷に調整し、界磁電流を一定にしながら、いったん負荷を125%に増加し、端子電圧を測定しながら無負荷に至らしめる。電圧変動率は2・25式による。
 
図2・31 他励発電機試験回路
 
(c)複巻発電機
 複巻発電機には和動複巻と差動複巻があるが、和動複巻の場合は、直列巻線の効果の程度により平複巻不足複巻、過複巻がある。各場合の外部特性は図2・32に示す。
(2)電動機の負荷特性試験
 電動機の負荷特性とは負荷をかけた場合の負荷電流・回転速度・界磁電流間の関係を求める試験で機械が暖まった状態で行う。負荷特性には、速度特性・トルク特性・分巻界磁変動曲線・調整曲線などがあるが、一般に受渡試験としては速度特性をもって負荷試験とされる。
 
図2・32 複巻発電機の負荷特性
 
(a)分巻電動機の速度特性の測定
 電動機の負荷のとり方は、2・3・7(2)を参照のこと。定格負荷に合わせ、その状態で外部電源及び界磁電流を一定に保ち、発電機の場合と同じく、いったん負荷を増加し、回転速度の測定を行いながら無負荷に至らしめる。負荷電流に対し回転速度をプロットすれば図2・33のような特性が得られる。
 
図2・33 分巻電動機の負荷特性
 
 一般にA1のような曲線が分巻電動機の速度特性であるが、電機子回路抵抗が非常に大きいときはA2、電機子反作用が非常に大きいときはA3のような曲線となる。回転方向が一方向に指定されているときは、中性点の移動で多少は速度特性の調整を行うことができる。速度変動率は次の式により求め得る。
 
 
 ここにε;速度変動率(%) N;定格速度(min−1
 N0;無負荷速度(min−1) ΔN=N0−N(min−1
(b)複巻電動機の速度特性の測定
 測定方法は(a)の場合と同様だから略す。複巻電動機の場合も差動複巻と和動複巻とがある。一般的に垂下特性を示すのが普通でその試験回路は図2・34による。各場合の特性曲線は図2・35に示す。差動特性は負荷電流が増加すると回転速度が増加し、不安定な運動状態となり好ましくない。和動の場合でも直巻コイルと分巻コイルの極性を逆に接続すれば差動になって不安定になるので注意のこと。
 
図2・34 複巻電導機の試験回路
 
(3)電動機のトルク特性
 電動機のトルクの測定は、電機子電流・界磁電流・回転速度、出力を測定し計算で求めることができる。しかし小・中容量機まではダイナモメーター、うず電流ブレーキ、ブロニーブレーキなどを使って実測でも行える。始動トルクは、界磁電流を決め自動を始める点の電機子電流により算出される。
 
図2・35 複巻電動機の負荷特性
 
 またカップリングに適当なアームを取り付け、はかりを使って実測することもできる。
(a)分巻電動機のトルク特性
 トルク特性の測定方法の二、三例を述べる。
(i)損失分離法による場合
 任意の負荷に対する入力電力・回転速度を測定し、次の式により求める。
 
 
 ここにT;トルク(kg・m)
IL;負荷電流(A)
E;端子電圧(V)
W0;無負荷損(W)(測定時の回転速度における)
WCO;電機子回路抵抗損(W)(測定時の電機子温度における)
WB;ブラシ損失(W)
N;回転速度(min−1
(ii)電機子の電流による場合
 トルクは、電機子電流と主磁束の積により求められるから、界磁電流を一定に保ち、負荷電流により磁束の変化がないと仮定すれば、トルクは負荷電流に比例すると考えてよい。しかし実際には、負荷電流が増加すると電機子反作用で主磁束は減少し、トルクも減少することに注意しなければならない。いま界磁電流を定格値に保ち、定格トルクをT1とすれば任意の電流に対するトルクは次の式により求め得る。
 
 
 ここに
Tn;任意の負荷電流に対するトルク(kg・m)
Tl;定格トルク(kg・m)
In;任意の負荷電流(A)
Il;定格電流(A)(ただし界磁電流一定)
 図2・36(i)は分巻電動機のトルク特性である。
(b)複巻電動機のトルク特性
 複巻電動機の場合は、電機子電流により複巻コイルの磁束が発生するので、分巻電動機のように単純に負荷電流に比例するとして求めることはできない。従って実測法又は損失分離法が適用される。
 図2・36(ii)は複巻電動機のトルク特性を示す。
 
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図2・36







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