(d)基準周囲温度
機器の冷却媒体の温度を周囲温度、機器の温度上昇限度を定めるときの基準となる周囲温度を基準周囲温度といっている。この両者は必ずしも同じでない。周囲温度は次のように定める。
(i)開放形及び全閉形回転機(全閉外扇形を含み、全閉内冷形を除く)・静止誘導器では、機器に接近した空気の温度。
(ii)閉鎖風道循環形回転機では、空気冷却式又はガス冷却式を問わず、通風入口における冷却気体の温度。
(e)温度測定法の種類
(i)温度計法 棒状ガラス温度計・ダイヤル温度計・対抗温度計又は熱電対によって温度を測定する方法で、これらの温度計素子を、外部から接近できる範囲で機器の最高温度とおもわれる箇所にパテなどで取り付ける。
(ii)抵抗法 温度を測定しようとする巻線の抵抗の増加を測ってその温度を測定する方法で、巻線の平均温度を測定することになる。
(iii)埋込温度計法 固定子鉄心スロット内巻線部分・軸受内部など機器内部の最高温度とおもわれる箇所で外部より測定できない場合、抵抗温度計素子・熱電対素子があらかじめ埋め込まれていて、電気的にその箇所の温度を測定する。
以上の3つの方法が通常採用される。最近は、自己記録温度計を使って連続測定記録することが多い。
抵抗法による巻線の平均温度上昇は次の式から算出できるが、抵抗値の測定は十分に精密にし、測定用コードなどの外部抵抗は差し引くものとする。
(拡大画面:4KB) |
|
ここに
R2;t2℃における巻線抵抗(Ω)
R1;t1℃における巻線抵抗(Ω)
t2;試験直後における巻線温度(℃)
t1;冷状態においてR1を測定したときの温度(℃)
ta;試験の最後における周囲温度(℃)
(g)温度試験における注意事項
(i)電気機器に近接する空気温度を周囲温度とする場合には、機器から1〜2m離れた箇所で機器の床上のほぼ中央の高さに温度計数本を機器又は他からの熱や通風の影響を受けないようにして、各計測値の平均値をとる。
(ii)温度試験中、周囲温度に変化があった場合には、1時間以下の等間隔で測定した記録から全試験中最後の1/4の時間における平均値をとる。
(iii)棒状ガラス温度計の使用範囲は、次の値を超えないこと。
アルコール |
−70℃から120℃ |
水銀 |
−39℃から500℃ |
(iv)温度計球部は適量のパテなどにより、被測温体になるべくねかせて取り付けること。また抵抗、整流子、スリップリングなどのように表面温度の変化が大きい箇所の測定には熱電温度計によることが望ましい。
(v)水銀温度計は交番磁界のあるところは使わないこと。
(vi)周囲温度の変化と機械の温度の間には時間遅れがあるため、周囲温度はなるべく変化させないように注意し、できれば温度計の先端を油中に浸しておくとよい。油杯は直径25mm高さ50mmぐたいの金属円筒がよい。
(vii)排気が吸気に直接回っているかどうかを調べ、ひどいときは対策をとること。
(viii)短時間定格機は温度試験開始時、各部温度が周囲温度と同じであること。
(ix)温度試験初期の温度上昇、異常音、振動の程度には十分な注意を払い、1分間に1℃以上の温度上昇がある場合には特に注意が必要である。
(x)温度上昇が一定となった場合、機器内部の発生損失と放熱される損失は同じ値であるから、空気や冷却水の奪う熱量を計算して、妥当であるかどうかを調べておくことが必要である。
(xi)抵抗法で停止後、温度を測定する場合は、停止するまでの時間を極力短かくするよう、電気的制動や機械的制動などの利用や他力通風形では冷却空気の遮断などをあらかじめ十分に考慮すること。
なお、抵抗測定までの所要時間が次の値を超える場合、又は、定格出力が200kWを超える機器については、延長法により巻線抵抗の最高値を推定し、この抵抗値に応じた温度上昇を求めることが望ましい。
定格出力50kW以下 |
30秒 |
定格出力50kWを超え200kW以下 |
2分 |
延長法とは、停止後、巻線抵抗の時間に対する変化を求め、これを延長して電源遮断時の巻線の抵抗を推定する方法である。抵抗値は電源遮断後に、最初に抵抗を測定するまでに要した時間の4倍以上の時間にわたってほぼ等間隔で4点以上求める。
また、延長方法は、片対数方眼紙の横軸に等分目盛の時間を、縦軸に対数目盛の測定抵抗値を目盛り、測定点を含む直線を延長し、電源遮断時の抵抗を測定する。
(xii)可動部、回転部などで試験直後の温度を測定することが困難な場合は、試験後の温度低下曲線を画いて補外法によって直後の温度を求める。
このことは(f)にも適用されることがある。
試験後測定温度が上昇を示す場合は最高値をとる。
|