(3)臨時検査
臨時検査は、次の場合において行うものである(法第5条)
(a) 法第2条第1項各号に掲げる事項(所要施設、3・4・1参照)又は無線電信等について、命令で定める改造又は修理を行うとき。
(b)満載喫水線の位置又は船舶検査証書に記載した条件の変更を受けようとするときその他命令で定めるとき。
(c)上記の(a)の命令で定める改造は船舶の堪航性又は人命の安全の保持に影響を及ぼすおそれのある改造で例えば次に掲げるものに該当する場合。(施行規則第19条第1項)
(i)船舶の長さ、幅又は深さの変更その他船体の主要な構造の変更で船体の強度、水密性又は防火性に影響を及ぼすもの。
(ii)かじ又は操だ装置についての変更で船舶の操縦性に影響を及ぼすもの。
(iii)機関(主要な補助機関以外の補助機関を除く。以下同じ。)に係る物件の性能若しくは形式の異なるものとの取替え又は機関の主要部についての変更で機関の性能に影響を及ぼすもの。
(iv)(i)から(iii)までに規定する物件のほか法第2条第1項各号に掲げる事項に係る物件で船舶に固定して施設されるものの新設、増備、位置の変更又は性能若しくは形式の異なるものとの取替え。
(v)法第4条第1項の規定により施設する無線電信等の取替え。
(d)上記(a)の命令で定める修理は、船舶の堪航性又は人命の安全の保持に影響を及ぼすおそれのある作業で、例えば次に掲げるものを伴う修理(施行規則第19条第1項)
(i)船体の主要部についての曲り直し、補強、取替え、溶接その他の作業で船体の強度、水密性又は防火性に影響を及ぼすおそれのあるもの。
(ii)機関の主要部についての削整、補強、溶接その他の作業で機関の性能に影響を及ぼすおそれのあるもの。
(iii)(i)又は(ii)に規定する物件のほか法第2条第1項各号に掲げる事項に係る物件で船舶に固定して施設されるもの又は潜水設備の主要部についての曲り直し、補強、取替え、溶接その他の作業で当該物件の性能又は強度に影響を及ぼすおそれのあるもの。
(iv)船舶設備規程第302条の6に規定する危険場所に布設している電路の変更又は取替えの作業。
(v)複雑又は特殊な技量又は装置を必要とする作業。
(vi)法第2条第1項に掲げる事項に係る物件で船舶に固定して施設されるものを性能又は形式が同一のものと取り替える修理(あらかじめ法による検査又は検定を受け、これに合格した物件で当該検査又は検定に合格した後初めて船舶に備え付けられるものと取り替える修理(機関に係る物件についての修理で当該修理により機関の性能に影響を及ぼすおそれのあるものを除く。)を除く。)
(e)(c)及び(d)にかかわらず、小型船舶及び小型漁船(危険物ばら積船及び特殊船を除く。以下「一般小型船」という。)についての(a)にいう「命令で定める改造又は修理」は、次に掲げる改造又は修理とする。(施行規則第19条第2項)
(i)船舶の長さ、幅又は深さの変更その他船体の主要な構造の変更で船体の強度、水密性又は防火性に影響を及ぼす改造。
(ii)上甲板下の船体(上甲板のない船舶にあっては、「げん端下の船体」をいう。以下この条において同じ。)の主要部についての曲り直し、補強、取替え、溶接その他の作業で船体の強度、水密性又は防火性に影響を及ぼすおそれのある修理。
(iii)かじ又は操だ装置についての変更で船舶の操縦性に影響を及ぼす改造。
(iv)主機を取り替える改造又は修理(法による検査又は検定を受けこれに合格した船外機(海難その他の事由により当該検査又は検定を受けた事項につき船舶の堪航性又は人命の安全の保持に影響を及ぼすおそれのあるものを除く。)をあらかじめ管海官庁の指定した条件に従って取り替える改造又は修理を除く。)。
(v)機関の主要部を取り替える改造又は修理(あらかじめ法による検査又は検定を受け、これに合格した物件(機能が同一のものに限る。)で当該検査又は検定に合格した後初めて船舶に備え付けられるものと取り替えるものを除く。)。
(vi)船舶に固定して施設される救命設備、消防設備及び航海用具に係る物件で船舶に固定して施設される救命設備、消防設備及び航海用具に係る物件で船舶に固定して施設されるものに関し、検査を受けた事項につき船舶の堪航性又は人命の安全の保持に影響を及ぼすおそれのある変更を生ずる改造又は修理。
(vii)法第4条第1項の規定により施設する無線電信等の取替え。
(f)前の(b)の「その他命令で定めるとき」は、次に該当する場合とする。(施行規則第19条第3項)
(i)新たに満載喫水線を標示しようとするとき。
(ii)新たに無線電信等を施設しようとするとき。
(iii)法第2条第1項(一般小型船にあっては救命及び消防の設備並びに航海用具)に係る物件で船舶に固定して施設されるもの以外のものの新設、増備、取替え若しくは取りはずし(一般小型船については、小型船舶用救命胴衣及び小型船舶用救命クッションで現にとう載している人員と同数のもの以外のものの一時的な陸揚げ保管に係る取りはずし又は増備を除く。)(法による検査又は検定を受け、これに合格した物件で当該検査又は検定に合格した後初めて船舶に備え付けられるものの新設若しくは増備又はこれとの取替えを除く。)又は積付方法の変更(積付方法が規定されている物件に限る。)をしようとするとき。
(iv)原子力船の原子炉への燃料体のそう入又は原子炉内における燃料体の配置換えをしようとするとき。
(v)ボイラの安全弁の封鎖を解放して調整しようとするとき。
(vi)揚貨装置の指定をうけた制限荷重、制限角度又は制限半径の変更を受けようとするとき。
(vii)昇降機につき指定を受けた制限荷重又は定員の変更を受けようとするとき。
(viii)船舶復原性規則第1条に規定する船舶及びこれ以外のタンカー、液化ガスばら積船及び液化化学薬品ばら積船について法第2条第1項に掲げる所要施設以外の物件の新設、増備、位置の変更取替え若しくは取りはずしてその船舶の復原性に影響を及ぼすおそれのあるものをしようとするとき。
(ix)小型船舶安全規則第100条の規定の適用のある船舶((viii)の船舶を除く。)について、その船舶の復原性に著しい影響を及ぼすおそれのある変更をしようとするとき。
(x)小型船舶安全規則第2条第1項に規定する小型船舶及び漁船特殊規則第2条に規定する小型漁船について、当該船舶の操縦性に著しい影響を及ぼすおそれのある変更をしようとするとき。
(xi)指定を受けた臨時検査を受けるべき時期に至ったとき。
(xii)海難事故等によって船舶の堪航性及び人命の安全の保持に影響を及ぼすおそれのある変更を生じたとき。ただし、一般小型船については、次に掲げる場合とする。
(イ)上甲板下の船体の主要な構造に重大な損傷が生じたとき。
(ロ)クランク軸等主機の主要部分又はプロペラ軸に重大な損傷が生じたとき。
(ハ)火災により船舶に重大な損傷が生じたとき。
(g)国際満載喫水線証書を受有する船舶であって、当該証書に記載する最初の検査又は定期的検査の日付けに相当する毎年の日の前後3月以内のいずれかの日に定期検査又は中間検査をうけていない場合には、当該いずれかの日に行うものとする。
(4)臨時航行検査(施行規則第19条の2)
臨時航行検査は、船舶検査証書を受有しない船舶を臨時に航行の用に供するときに行われる検査で、次のような場合に行われる。
(a)日本船舶を所有することができない者に譲渡する目的でこれを外国に回航するとき。
(b)船舶を改造し、整備し、若しくは解撤するため、又は法による検査若しくは検定若しくは船舶法による総トン数の測度を受けるため、これをその所要の場所に回航するとき。
(c)船舶検査証書を受有しない船舶をやむを得ない理由によって臨時に航行の用に供するとき。
(5)特別検査(施行規則第20条)
特別検査は、運輸大臣が一定の範囲の船舶について事故が著しく生じている等により、その材料、構造、設備又は性能が法第2条第1項(所要施設について)の命令に適合していないおそれがあると認める場合にこれらの船舶について特別検査を受ける旨を公示して、一定の期間を定めて特別に行う検査である。この場合、検査をうけるべき船舶の範囲、検査をうけるべき事項、検査をうける場合の準備等について公示される。
(6)製造検査(法第6条)
製造検査は、法第5条の検査の適用がある船舶のうち、船の長さが30メートル以上の船舶(注)の製造者に対し、強制されている検査であり、船体、機関及び排水設備の設計、材料及び工事並びに満載喫水線を標示する船舶については、満載喫水線を定めるのに必要な事項に関し、船舶の製造に着手した当初から完成時までの間において、その工程に従って、精密に検査をするものである。製造検査においては材料試験、圧力試験及び機関の陸上試運転が行われる。
注:次に掲げる船舶を除く。(施行規則第21条)
(イ)平水区域のみを航行する船舶であって旅客船、危険物ばら積船及び特殊船以外のもの。
(ロ)推進機関及び帆装を有しない船舶(危険物ばら積船、特殊船推進機関を有する他の船舶に引かれ、又は押されて人の運送の用に供するもの及び係留船を除く。)。
(ハ)外国の国籍を取得する目的で製造に着手した後、日本の国籍を取得する目的で製造することとなった船舶。
製造検査は、検査の完全を期するために上記の項目については製造工程において検査を行うことが肝要であるだけでなく、受検者側から見ても竣工後船舶の出航を日前に控えて一時に精密な検査を受けるよりは、製造に着手した時点から随時検査を受けておく方が便利であることから強制することになった検査である。
また、製造検査を強制されない長さ30メートル未満の船舶であっても、製造者の申請により製造検査を受けることができる。
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