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2.7 船内通信装置及び計測制御装置
 船内通信装置はJIS Fで標準化されたものや各メーカーの標準品があり、出来るだけ船主の要望にそって標準品の採用を考えるべきである。
 これら諸装置への給電回路は主配電盤、非常配電盤、通信用分電箱などからそれぞれ単独のものとし、重要性から2重回路とすることも考えるべきである。
 計測制御の諸装置は、各メーカーで標準化されているが、採用に際しては船主の要望を満足するものを選定すべきである。これら諸装置への給電回路は2.3に準じて設計すべきである。
 近年、殊に計測制御装置には電子機器が多く採用される様になり、従ってノイズの影響を受け易く、現実にノイズによる事故も多く経験されている。
 従って、機器の選定に際しては機器の耐ノイズ特性を充分調査する必要がある。
 また使用するケーブルの選定及び電路の設定に際してはシールド付ケーブルを採用するとか、他の電路から独立した電路とするなどの考慮も必要になって来る。
 
2.8 航法装置及び無線設備
 各装置については、機器編に詳細に述べられているのでここでは一般の船に装備される航法装置及び無線装置のうちで装備上注意を要するものなどについて簡単に述べるにとどめる。
(1)ジャイロコンパス
 船舶設備規程では総トン数500トン以上の船舶(平水区域を航行区域とするものを除く。)にはジャイロコンパスを装備することを要求している。
 なお、総トン数100,000トン以上の船舶には回頭角速度計を備えなければならないが、ジャイロコンパスから入力される回頭角度信号を角速度に変換して指示するものが一般に使用されている。(船舶設備規程第146条の20、27関係)
(2)音響測深機
 船舶設備規程では、国際航海に従事する船舶で総トン数500トン以上のものに音響測深機を装備することが要求される。(船舶設備規程第146条の23関係)
 音響測深機の音波周波数は一般に200kHzが多く用いられている。75kHz、50kHzなども用いられているが、200kHzは低い周波数に比べて乱流の影響を受けにくいという大きな長所を持っているからである。最大測深距離の点では周波数が高いほど海中での減衰が大きいため低い周波数のものの方が有利であるが反面最小測深距離の点では波長の短い200kHzの方が有利である。
 送受波器は乱流の少ない場所に装備するのが理想的であるが一般には機関室前壁付近の船底に設けることが多い。
(3)船速距離計
 船舶設備規程では国際航海に従事する総トン数500トン以上の船舶には船速距離計を備えなければならない。この船速距離計は通常電磁ログ又はドプラースピードログが用いられているが、ドプラースピードログを採用する場合には乱流の影響の少ない場所に送受波器を装備するよう注意を要する。(船舶設備規程第146条の25関係)
(4)レーダー
 船舶設備規程では国際航海に従事する旅客船及び総トン数300トン以上の船舶にはレーダーを装備することが要求される。ただし、総トン数300トン以上500トン未満の船舶(旅客船及び危険物ばら積船を除く。)で2時間限定沿海船等、及び瀬戸内沿海限定船は除かれる。また総トン数10,000トン以上の船にはレーダーを2台装備することが要求される。
(船舶設備規程第146条の12関係)
 波長は3cm(9GHz帯)が一般であるが雨や雪の影響を受けにくい10cm(3GHz帯)のものも装備されることがある。
 輸出船ではトルーモーションレーダの装備や2台のレーダーのトランシーバと指示器間の相互切換装置の装備が要求されることが多い。
 レーダーのアンテナは偽像が出ない様に充分高い位置に装備しなければならない。一般にはアンテナビームが半値となる点とアンテナの中心点を結んだ線の延長が船首にかからないような位置に装備する。
(5)自動衝突予防援助装置(ARPA:Automatic Radar Plotting Aid)
 船舶設備規程では、総トン数10,000トン以上の船舶にはARPAを装備することを要求している。ARPAにはレーダーの指示器を兼用する方式のものとレーダーの指示器とは別に独立の指示器を持つ方式のものとがある。
 ARPAは船速信号を船速距離計から、方位信号をジャイロコンパスからまた映像信号をレーダーから得て作動するが、レーダーを2台装備している場合には、一般に、どちらのレーダーからも映像信号が入力できるように切換えて使うことができるようにしている。
(船舶設備規程第146条の16関係)
(6)無線方位測定機(方向探知機)
 船舶設備規程では、国際航海に従事する総トン数1,600トン以上の船舶(総トン数5,000トン未満の船舶であって沿海区域を航行区域とするものを除く。)には無線方位測定機を備えなければならない。(船舶設備規程第146条の29関係)
 方向探知機にはループアンテナとホイップアンテナとが必要であるが、現在ではこの2つのアンテナが一体となったものが一般に使用されている。
 アンテナは周囲の構造物によって受信電波が影響を受けない高い位置に装備しなければならない。また、アンテナを囲んでループとなった導体がある場合にはアンテナの受信電波が激しく影響を受け正しい方位の測定が出来ないのでこの様な位置は絶対に避けなければならない。
 なお、国際航海に従事する総トン数1,600トン以上の船舶には、無線電話遭難周波数により船首からいずれの側にも30度の範囲内でホーミングできる設備を備えなければならないが、一般には無線方位測定機にこのホーミング性能をもたせている。
(7)無線設備
 次の船舶には無線設備(GMDSS)を備えなければならない。
(a)旅客船
(b)長さ12メートル以上の非旅客船で沿海以上の航行区域を有するもの
(c)長さ12メートル未満の非旅客船で近海以上の航行区域を有するもの
(d)小型遊漁兼用船(旅客定員12名以下のもの)であって、次のもの。
(i)漁ろうに従事する場合は、漁ろうに従事する水域が本邦の海岸から100海里以遠の水域を航行するもの。
(ii)漁ろうに従事しない間の航行区域が、次の船舶の区分に応じ、次に掲げる水域のもの。
(1)長さ12メートル未満の船舶・・・近海以上の航行区域
(2)長さ12メートル以上の船舶・・・沿海以上の航行区域
(e)総トン数20トン以上の漁船
(f)本邦の海岸から100海里を超える水域で従業する小型漁船
(g)第2種小型漁船
(h)湖川港内の水域の内、琵琶湖を航行する船舶
 なお、上記船舶に対する無線設備の搭載要件等については、「船舶電気装備技術講座(GMDSS)法規編」を参照されたい。また無線機器及び空中線の取付け、接地工事等については、「船舶電気装備技術講座(GMDSS)艤装工事及び保守整備編」によること。
 
2.9 復習問題
(1)設計と営業部門及び見積部門との関係を簡潔に述べよ。
(2)発電機の容量と台数の決定法を述べよ。
(3)重要補機の保護協調のあり方を簡潔に述べよ。
(4)回路の諸定数が不明の場合の短絡電流の推定法を述べよ。
(5)電線サイズの決定法を述べよ。
(6)かご形誘導電動機の、直入始動を除く代表的始動方法を3つ挙げ、それぞれの始動電流と始動トルクの値を直入始動の値と比較せよ。
 
復習問題の解答
(数字は章、節、項などを示す)
 
(1)1.1 (2)2.2.1 (3)2.3.3 (4)2.3.4(2)(a)(b) (5)2.5.5 (6)2.4.1(2)







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