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2.6.4 船灯
 船灯には船舶設備規程で規定された耐振性に富む航海灯用電球を使わねばならぬ。その理由はつぎによる。
(1)船灯の射光角度は灯具と電球のフイラメントの関係によってきまり、フイラメントの大きさと位置が不適当であれば、規定の射光が得られない。
(2)船灯用電球のフイラメントは、かご形の継線で横方向に多くの光束を出し、水平方向の指向性をもっている。しかし、一般照明電球は下向に多くの光束を出すので規定の光源を得ることがむつかしい。
 船灯の装備数は船舶設備規程の第9号表と漁船特殊規程の別表に規定されている。
 船灯は常用電源のほか予備の独立の電源からも給電することができるものでなければならない。
 航海灯への給電にはJMS 8452(航海灯表示器)が使われるが、これらの盤内での電圧降下が3%近いものがあるので注意すべきである。
 船灯の装備位置等については海上衝突予防法の規定に従って決定のこと。
 なお、海上衝突予防法に規定されている全周灯はその水平射光範囲がマストその他の上部構造物によって6度を超えて妨げられないような位置に装備する様要求されているので注意のこと。
 
2.6.5 照明灯最終支回路
 船舶設備規程によれば、分電盤からの照明灯最終支回路に接続する電灯を15灯以下に制限している。
 また、NKでも次の規定がある。
 15A以下の電灯最終支回路に接続される電灯の個数は、次の値をこえてはならない。
 ただし、接続される器具の合計負荷電流が決まっており、その値が最終支回路の保護装置の定格電流の80%を超えない場合は、電灯の個数は制限されない。
50V以下の回路 10個
51V〜130V回路 14個
131V〜250V回路 24個
 
2.6.6 防爆灯
 タンカーのポンプ室やカーフェリーの車両甲板に装備する照明器具はその危険に応じた防爆形のものを選び、できる限り上記場所が暗黒とならないように給電回路を2回路以上とし、それぞれの回路の灯具の錠締金具の形状を変えることが望ましい。
 
2.6.7 信号灯及び標識灯
(1)昼間信号灯
 国際航海に従事する総トン数150トン以上の船に装備を要求されている昼間信号灯は、昼間2海里先で信号を受けられる60,000Cd以上の光度が要求される。
 昼間信号灯への配線は、独立の2組の電源から給電できることが要求されている。
(2)巨大船及び危険物積載船標識灯
 海上交通安全法適用海域を航行する全長200メートル以上の巨大船には第2種緑色閃光灯を1灯設けなければならない。
 また同海域において危険物船舶運送及び貯蔵規則に規定する危険物の運送に従事する船舶は海上交通安全法により第1種紅色閃光灯を1灯設けなければならない。
(3)モールス信号灯
 一般に、マストヤードに装備し、20W電球4灯式と20W電球3灯式がある。
(4)スエズ運河信号灯
 スエズ運河を船が通過する際に必要な信号灯でありJIS F 8414で標準化されている。
(5)その他の信号灯
 その他パナマ運河信号灯、スエズ運河探照灯、検疫灯、プロペラ注意灯、球形船首注意灯などがある。
(6)夜間信号灯の使い方
種々の夜間信号灯は図2.29のように使われる。
図2.29 夜間信号灯の使い方
(注) ○は白灯、●は紅灯、●Gは緑灯を示す。
 
(1)世界各港共通
(a)検疫受検中(A)
(b)座礁、停泊灯及び(B)併用
(c)運転不自由船(C)
(d)危険物積載(D)
(2)スエズ運河
(a)水先招請(E)
(b)移民官招請(F)
(c)座礁
(i)援助不要(G)
(ii)引船を要す(H)
(iii)引船及び喫水減少必要(I)
(d)危険物積載中
(i)爆発物、火薬類、容器入れpetroleumで引火点73崎以下(J)
(ii)Bulkpetroleumで引火点73崎以下
容器入ベンジン(K)
(iii)Bulkpetroleumで引火点73崎以上150崎以下(L)
(e)航走中につき前方横切り、追越し禁止
(i)係留作業中(M)
(ii)外洋向け航走中(N)
(iii)運河内へ入航中(O)
(f)航走中止係留中、横切り追越可(P)
(g)検疫受検中(Q)
(h)船団最終船(R)
(3)その他の諸元
(a)Aden水先招請(S)
水先乗船中(T)
入港中(U)
出港中(V)
(b)香港、移民官招請(W)
(c)Malaysia移民官招請(X)
(d)Antwerp Wester Riverで喫水26ft(7.9m)以上、または全長160m以上の船(Y)
(e)Hamburg出港1時間前からbasinを出てclearになるまで、及び、喫水26ft(7.9m)以上の船は紅灯1個を点灯する。
(f)Rotterdam Maas River航走中、喫水26ft(7.9m)以上の船舶(Z)
 その他各種信号灯及びその使い方については船舶JIS協会発行(昭和46年3月)の船用信号灯に関する調査研究報告書を参照のこと。
 
2.6.8 集魚灯
 集魚灯は、集魚の際、光度を明るくするために、一般に電圧を定格値より高くする。このため発電機、原動機の出力及び電源の選定に十分な考慮が必要である。
 
2.6.9 非常標識、非常照明装置、蓄電池一体型非常照明装置
(1)非常標識
 外洋航行船(43頁)(旅客船に限る。)、内航ロールオン・ロールオフ旅客船(43頁)及び係留船の脱出経路(暴露部に設けるものを除く。)及び当該脱出経路に設ける消防設備を格納する場所には、床面からの高さが0.3メートル以下の位置に非常標識を設けることが要求される。
 非常標識は、適切な光度を有する発光体又は標識灯とし、設置する場所に応じ、脱出の経路、格納されている消防施設の種類その他の表示事項が容易に識別できるものであり、かつ、電気式のものにあっては、非常電源から給電しなければならない。
(船舶設備規程第122条の5関係)
(2)非常照明装置
 外洋航行船、内航ロールオン・ロールオフ旅客船及び係留船には、次の場所に非常照明装置を設けることが要求される。
 これらの非常照明装置は非常電源から給電できるものでなければならず、国際航海に従事する旅客船については、乗艇場所及び招集場所に設ける非常照明装置は主電源からも給電することができるものでなければならない。
 また、主電源、関連の変圧器、主配電盤を設けた場所の火災等により、その使用を損なわないものでなければならない。
(a)乗艇場所及び招集場所
(b)廊下、階段、はしご及び出入口
(c)機関区域
(d)制御場所(船舶防火構造規則第2条第22号の制御場所をいう。)機関制御室及び主発電設備の制御室
(e)その他管海官庁が必要と認める場所
(注)(e)の「その他管海官庁が必要と認める場所」とは次に掲げる場所をいう。
(1)エレベーターのかご及びトランクの内部(国際航海に従事する旅客船にあっては、エレベーターのかごの内部に限る。)
(2)消防員装具の格納場所
(3)操舵装置を設置した場所
(4)消化ポンプ、スプリングポンプ及び非常ビルジポンプを設置した場所並びにこれらに用いる電動機の始動場所
(船舶設備規程第122条の6関係)
(3)蓄電池一体型非常照明装置
 ロールオン・ロールオフ旅客船(沿海区域又は平水区域を航行区域とする船舶であって、総トン数1,000トン未満のものを除く。)には、次の場所に蓄電池一体型非常照明装置を設け、即座に脱出経路に乗客等を誘導できるよう装備することが要求される。
(a)公室(ホール、食堂、休憩室、喫茶室、売店及びこれらに類似した場所)
(b)廊下、階段、はしご及び出入口
(c)多人数(13人以上を標準とする)が使用する旅客室、船員室等
(d)船橋、制御室等乗務員が通常業務に従事する場所
(注)船員のみに利用される場所にあっては、充電可能な持運び式電気灯をもって蓄電池一体型非常照明装置に代えることができる。
 
 これらの非常照明装置は、主電源、非常電源及び臨時の非常電源のすべてが喪失したときに、当該非常照明装置と一体となった蓄電池から自動的に給電でき、かつ、いかなる傾斜状態でも3時間以上照明できるものでなければならない。
 又、非常照明装置と一体となった蓄電池は主電源等により常時充電されることが要求されている。
(必ずしも非常電源からの充電をも要求されない。)
 当該非常灯は灯具下端から2.5m直下の床面における照度が2ルクス以上であり、誘導標識の記号又はイラストが15m離れた地点で明瞭に確認できる性能が要求されており、これが灯具の配慮を決定するうえでの1つの目安となるであろう。
 これら灯具には方向を示す誘導標識のあるものと無いものがあり、乗客と脱出経路に誘導できるよう適宜方向を示す誘導標識のあるものを配置することになる。
(船舶設備規程第122条の6の2関係)







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