日本財団 図書館


3. 系統図・配置図
 
3.1 系統図
 系統図は、管海官庁、船級協会並びに船主に承認を得るために提出され、艤装設計の基幹図となる。
 また、艤装工事の算定資料として、建造仕様書と共に予算書作成の基礎資料となる。
 電路系統は機能別に動力、通信、照明、無線、航海、計装制御に分けられるが、一般的に系統図は下記の区分で作成される。
(a)主電路系統図(電源装置を含む)
(b)照明電灯系統図
(c)船内通信装置、航海計器及び無線装置系統図
(d)機関部計装制御装置系統図
 これらの系統図の作成に当たっては、次の点を考慮して設計する。
(a)簡単にして理解しやすいこと。
(b)合理的なシステムであること。
(c)保護協調が得やすいこと。
(d)材料面で経済的であること。
(e)艤装工事及び保守点検が容易であること。
 
3.1.1 ケーブルの選定
 ケーブルは艤装材料として価格的に大きなファクターを占めるものであり、適正な選定が要求される。
 ケーブルサイズの決定の際注意を要することは電圧降下である。
 電圧降下については、2.5.4に述べられている計算式により求める。
 特に24V回路は、電圧降下が大きいので、注意する必要があり、充放電盤内、航海灯表示器内での電圧降下も考慮に入れてケーブルサイズを決定する。
 絶縁体及び保護被覆の選定については、2.5.1を参照し、その特性を十分把握した上で各布設場所の適したものを採用する。
 系統図にはケーブルの種類及びサイズを記入する。
 
3.1.2 主電路系統図
 主電路系統図には、発電機、配電盤、変圧器、電動機、始動器及びこれらの制御回路を含む系統、蓄電池及び充放電盤の入出力回路、照明装置の分電盤に至る回路など、給電回路の全てを含める。
 配線回路は、樹枝状配電方式が一般的であり、機関の主要補機用電動機の始動装置は、主配電盤と列盤とすることが多い。
 これは主配電盤の発電機母線を延長して、これより列盤の各始動器に給電する方式である。
 図3.1.1に主電路系統図の一部の主要補機給電回路の一例を示す。
 
(拡大画面:64KB)
図3.1.1 主要補機給電回路
 
(1)発電機回路
 配電盤と発電機(原動機への回路を含む)の間の回路は、それぞれのメーカーの回路図に合わせて漏れのないようにする。
 発電機主回路のケーブルは、発電機容量、端子箱の大きさ、電路の状況、配線及び結線工事の難易、経済性などを考慮して複数本のケーブルを並列使用するのが一般的である。
(2)船外給電回路
 船外からの給電は給電箱を設け、配電盤との間に固定ケーブルを配線する。
 小型船、漁船の場合は、動力用の他電灯用100V単相給電装置を設備することが多い。
 この場合、配電盤において変圧器二次側と切り換えて給電できるようにする。
(3)変圧器回路
 変圧器の構成は三相変圧器1台又は単相変圧器3台1組で装備されるが何れも3心線で配線する。
 また、外洋航行船等においては、三相変圧器を2組又は単相変圧器を個々に3台装備することが要求されるが、その場合、それぞれ、3心線、2心線で配線する。
(4)動力回路
 補機用電動機にはそれぞれ適した始動器を経由して給電するが、重要負荷については各規則で給電方式が規定されているものがあるので注意する必要がある。
 給電方式には次のようなものがある。
(a)主配電盤と列盤の集合始動器盤から給電する。
(b)1台毎に1個のMCCBにより給電する。
(c)用途又は場所毎に設けられた集合始動器盤から給電する。
(d)主配電盤から区電盤を経て給電する。
 ケーブルサイズについては、2.5.5により決定するが、特殊な特性を有する場合、例えば始動電流の持続時間が長い補機の電圧降下や低速電動機の定格電流値などについても注意する必要がある。
(5)制御回路
 機側発停押ボタンスイッチや、自動運転用の圧力スイッチ、フロートスイッチ、マグネットバルブなど漏れのないようそれぞれの装置を良く調査して配線する。
 また、自動化計装装置の中には運転警報表示や遠隔制御を含むものがあるので、始動器からの配線漏れのないように注意すること。
(6)低圧給電回路
 変圧器の二次側に接続された低圧母線の給電は航海灯制御盤などの特殊なものを除き、原則3心線で配線する。
 小型船や漁船の場合は、低圧単相の陸上電源を受電する場合が多いので、負荷回路は全て単相給電できるように分電盤などには単相配線する。(図3.1.2参照)
 
(拡大画面:19KB)
図3.1.2 単相陸電と変圧器二次側切換回路
 
3.1.3 照明電灯系統図
 航海灯及び各種の信号灯は照明電灯系統図に含め、系統図の冒頭に収録するようにする。
 また、洗濯機や電気冷蔵庫などの小容量の電気機器は小形機器用分電盤から給電し本系統には含めない。
(1)照明灯回路
 照明用分電盤はそれぞれの甲板毎に装備し、船舶設備規程や船級規則等により規定されている最終支回路の容量及び電灯器具の装備個数にある程度の余裕を持たせたものとし、後日、増設要求がある場合でも簡単に追加できるようにしておく。
 単相負荷も三相電源から供給するので、各相の負荷バランスが均一になるように極性を決定する。この場合予備系統は500Wを見込んでおくのが一般的である。
 分電盤内での系統分けは出来るだけ負荷を均等にすることが必要であるが、まとめて入切する方が便利な通路や常時は消灯しているような倉庫や糧食庫などはそれぞれ独立した系統とすることが望ましい。
 また、通路、機関室などは1系統が停電した場合にも、照明を維持できるように2系統で給電することが望まれる。
 操舵室、海図室の照明については集合制御盤にグループスイッチを設けて操作する場合もあるので注意を要する。
 居室の場合はレセプタクルや電灯器具の送り端子を使用して送り接続も考えられるので、1系統での接続箱の使用は標準的には、2個程度を想定してよい。
(2)航海灯回路
 航海灯への給電は船舶設備規程に従って行う必要があり、航海船橋上に設けられた航海灯制御盤経由で給電する。
 また、航海灯制御盤への電路は、全ての電源を通じて2系統以上とし、かつ、1系統は独立のものとし、他の1系統は船橋上において使用する小形照明器具以外のものに給電する電路と共用しないこと。
 各電源からの航海灯制御盤までの給電系統は設備規程第272条関係の船舶検査心得に示されているのでこれを参照のこと(電気装備技術基準編参照)。
 電源線のうち1系統は主配電盤から直接、他の1系統は最寄りの電灯分電盤から配線する。
 非常発電機を装備している場合は、非常用配電盤から、また、非常電源が蓄電池の場合には、インバータからAC100Vの交流電源として給電する。(図3.1.3(イ)参照)
 非常電源が蓄電池でインバータによるものは、主電源を喪失するとインバータを始動しなければならないので、その信号線を航海灯制御盤とインバータ間に配線する。
 航海灯電路が短く電圧降下の少ない小型船の場合は、AC100VとDC24V、AC100Vを降圧したAC24VとDC24Vの2種類の電源とする場合が多い。(図3.1.3(ロ)、(ハ)参照)
 主電源の喪失時及び航海灯電球の断線時の警報用に蓄電池電源を使う場合には、航海灯制御盤への配線が必要である。
 2灯式航海灯の場合には各々に個別に配線する。
 
(拡大画面:46KB)
図3.1.3 航海灯の電源
 
(3)信号灯回路
 信号灯は、操舵室の分電盤から給電し、操舵室で点滅操作出来るようにする。
 一般的に、集合盤にグループスイッチを設ける。
 昼間信号灯やモルス信号灯の他各種信号灯があるのが、それぞれの目的に応じて装備位置が異なるので、注意して配線する。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION