2.6 照明装置
(1)照度
JIS F 8041(船舶の照度基準及び照度測定方法)による各施設の所要照度を表2.21に示す。
この照度は設備当初の値ではなく、常時維持しなければならない値を示す。
なお、隣り合った室、室と廊下などの間の照度の差を、著しくないようにする。
詳細については、JIS F 8041を参照のこと。
表2.20 所要照度表
照度Lx |
照明場所 |
500 |
診察台上(診察) |
300 |
|
250 |
テーブル上(客室、食堂、娯楽室、図書室)、食卓上(食堂、娯楽室) |
200 |
寝台の枕元(客室)、鏡の前(客室、洗面所、便所)、理髪及び美容室、食堂、喫煙室、娯楽室(和室を含む)、スポーツルーム、図書室、ラウンジ、診察室、売店(カクテルラウンジはムード照明として照度は適当とする。) |
150 |
船長級居室 |
100 |
船長級寝室、船員室、客室、病室、旅客用出入口 |
50 |
浴室、洗面所、便所、居住区内通路、階段室(昇降口を含む)、プール |
10 |
居住区周辺の外部通路 |
|
照度Lx |
照明場所 |
500 |
|
300 |
|
250 |
作業卓、海図机上 |
200 |
無線室、ナビゲーションルーム、(クレーンバージ、リグ)オペレーションルーム(クレーンバージ、リグ)、リグマネージメントルーム(クレーンバージ、リグ) |
150 |
|
100 |
ジャイロ室・レーダ室などの電気機器室、パイロットハウス(クレーンバージ、リグ) |
50 |
操だ室、海図室 |
10 |
|
|
照度Lx |
照明場所 |
500 |
|
300 |
|
250 |
事務机上、調理台上 |
200 |
|
150 |
|
100 |
事務室、調理室、洗濯室、配ぜん室、肉処理室、製パン室など |
50 |
食料庫、乾燥室、ロッカー及び諸倉庫 |
30 |
食料冷蔵庫 |
10 |
|
|
照度Lx |
照明場所 |
500 |
工作機械の作業面 |
300 |
計器盤面(機関制御室、荷役制御室)、工作台(工作室)、操縦卓上(機関制御室、荷役制御室) |
250 |
|
200 |
機関制御室、荷役制御室、計器盤面(非常発電機室) |
150 |
機関室、ボイラ室及び補機室の主操作場所及び監視場所 |
100 |
機関室、ボイラ室及び補機室の主通路、階段及び出入口、工作室、非常発電機室 |
54 |
荷油管及び燃料油管の陸上パイプとの接続部(USCG) |
50 |
蓄電池室、甲板長倉庫、塗料庫、貨物油ポンプ室、操だ機室、空気調和機械室などの機械室、車両甲板、自動車甲板機械室諸倉庫 |
30 |
冷凍貨物倉 |
20 |
機関室、ボイラ室及び補機室で保安上タンク裏などに近づくための通路、軸室、一般貨物倉(固定灯)、上甲板下通路、カーゴウインチ操作場所、ムアリングの操作場所、救命艇及び救命いかだの積付場所 |
11 |
荷油及び燃料油積込場所(USCG)(バルブ、ホース、ダビット付近) |
8 |
労働省が作業のために通行する場所(ILO) |
2 |
救命艇の進水面 |
|
(2)光束発散度
目が物を認めるのは、照度によって物体から反射発散される光束であって、反射率に問題がある。
(3)かげ
立体感をだすためのかげは必要であるが、一般に船内照明ではかげを考えなくてもよい。また経済性を考えれば光源の数を多くすることにも限度があり、半影を多くなるようにする。
(4)演色性
物を見るときの国際的標準光は、100W白熱電球に近いA光(色温度2,854崎の白熱電球)太陽直射光の代表としてB光(A光源にBフィルターをかけたもので色温度約4,870崎、正午の太陽光の平均)、昼光の代表としてC光(A光源にCフイルターをかけたもので色温度約6,740崎、昼光、すなわち直射日光と青空光との和の平均)の3つがある。
蛍光ランプは、白熱電球に比べて長波長光の不足がはなはだしいので演色性が著しくずれる。そのため深赤色を出すけい光物質が加えられて改善されている。
光源の演色性のよい順にならべると、キセノンランプ、デラックス形蛍光ランプ、白熱電球となる。
演色性とは、或る光源から物体に光を当てた時、その物体の色があるがままの色で目に見える程度のことである。
従って、例えば、赤い物体と青い物体に同一光源から光を当てた時、赤い物体は赤く、青い物体は青くそのままの色で目に見えるならばその光源の演色性は良いと言えるが、例えば赤い物体が青味がかって見えたり、反対に青い物体が赤味がかって見えたりすると、その光源の演色性は良いとは言えない。
色温度とは、黒色物体を加熱し、次第に温度を上げていくと黒色物体から光が発せられ、その光の色は温度の上昇とともに次第に赤色となり、更に黄色を経由して青色へと変って行くのであるが、黒色物体から或る色の光(例えば赤色の光)が発せられている時の黒色物体の温度をその光の色における色温度という。
一方、温度の上昇にともなって、黒色物体から発せられる光の波長は短くなって行く。
(5)経済性
船用照明としては、旅客船を除き、一般に電力費は低い。
また、器具費は蛍光灯と白熱灯では価額差が少ない。
(6)光源の選び方
光源を選ぶ際の目安は、表2.22によればよい。
(7)減光補償率
船内における一般的な減光補償率は表17によればよい。
減光補償率とは点灯中の減光を予想し設計当初から見込んでおく係数である。
船内照明の灯数を決定する際、光束法があるが、計算がやや面倒なので、大まかな目安を求めるときは簡便法によればよい。
室の寸法が普通の矩形で、甲板高さが2〜3mであれば、過去にどの程度のW数の灯器をいくら使ったかを調べておけば簡単に目安程度のものが求められる。
表18はその一例を示す。
表2.21 光源を選ぶおもな目安
光源 |
効率経済性 |
発生熱 |
演色性 |
おもな用途 |
電球 |
よくない |
多い
60cal/1m-h |
忠実ではないが感覚的によい |
点滅の多い場所、使用時間少ない場所、暖色が望まれる場所 |
蛍光
ランプ |
標準形 |
よい |
少ない
15cal/1m-h |
DL形より劣る |
一般内部通路など |
透明形
DL形 |
標準形より劣る |
よい |
演色性が問題になる場所 |
水銀
ランプ |
透明形
HF形 |
よい |
DLよりやや多い |
よくない 透明形よりややよい |
甲板照明、機関室全般照明など大容量を要する場所 |
|
表2.22 減光補償率
器具 |
装備場所 |
減光率 |
蛍光灯 |
居住区及び露天甲板 |
1.3 |
機関室、缶室及び補機室 |
1.5 |
調理室 |
1.7 |
白熱灯 |
居住区及び露天甲板 |
1.2 |
機関室、缶室及び補機室 |
1.3 |
調理室 |
1.5 |
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表2.23 照度に対する単位面積あたりのワット数(蛍光灯)
所要照度(Lx) |
単位床面積あたりワット数(w) |
埋込形器具 |
グローブ付器具 |
グローブなし器具 |
50 |
2.5 |
2.2 |
2 |
100 |
5 |
4.5 |
4 |
150 |
7 |
6.5 |
6 |
200 |
9.5 |
9 |
8 |
250 |
12 |
11 |
9.5 |
300 |
14.5 |
13.5 |
11.5 |
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〔参考〕
光束法による灯数決定法を参考として次に示す。
ただし
|
N |
: |
灯数 |
|
E |
: |
平均水平面照度(lx) |
|
A |
: |
室面積(m2) |
|
U |
: |
照明率
=作業面上に到達する光束Fiとランプから放射する全光束Frとの比 |
|
F |
: |
ランプ1個の全光束(1m) |
|
M |
: |
保守率
=減光補償率の逆数 |
なお、実際に照明率Uを次式で求める場合には、室内各面(天井及び壁)の反射率をメーカーへ連絡し、照明器具の形式によって決まる照明率Uをメーカーから入手する。
この際、室内各面の反射率は実績を参考にしながら推定する必要がある。
ただし
|
X |
: |
室の間口(m) |
|
Y |
: |
室の奥行(m) |
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H |
: |
作業面上光源までの高さ(m) |
上甲板上の照明などに投光器が使われるが、荷役などの作業をする場所は201x以上、作業のため通行する場所は81x以上の照度が要求されている。(ILO)
なお、米国へ行く船の場合は海洋汚染防止の観点からUSCGにより下記の照度が要求されているので注意を要する。
各種油管の陸上との接続場所
5FOOT−CANDLES(541x)
各種油管の操作場所
1FOOT−CANDLES(10.81x)
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