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2・13・10 自動針路保持装置(heading control system)
 船の針路は、風や波、海流などによって、予定針路から外れることがある。このとき操舵員は、コンパスによって針路の外れを知り、船首の針路を戻すため舵を取るが、この際、針路が戻るに従って舵角を小さくし、予定針路になる直前には、惰性を止めるため反対側に舵を取ったり(あて舵)して、定針させる。自動針路保持装置は、これらの操作を自動的に行う装置である。
 方位の検出をジャイロコンパスで行う方式のものと(GCP)、と磁気コンパスで行う方式のもの(MCP)などがある。
2・13・11 GPS航法装置
 GPS(Global Positioning System:全世界的測位システム)は、人工衛星を利用し、地球上いつでもどこでも、三次元の位置情報を得ることのできる測位システムである。
 GPSを構成する24個の衛星は、軌道半径26,561km、軌道傾斜角55度の6つの軌道面にそれぞれ4基が等間隔に配置され、周回周期11時間58分2秒(12恒星時間)で地球を回っている。
 GPS受信機により測定される量は、各衛星から発射される電波に載せられた測距信号(C/Aコード)が受信機に到着するまでの伝播時間である。C/Pコードには、衛星の位置情報、搭載時計の情報、電離層補正データ、他の衛星の位置情報が載せられており、送信電力約25W、搬送波周波数1,575.42MHzで、30秒周期で繰返されている。
 電波の伝播時間から衛星までの距離が分かり、理論的には3個の衛星からの距離が分かると三次元での位置(x、y、z座標又は緯度、経度、高度)が求められる。しかしながら、各衛星に搭載されている極めて精度の高い時計と受信機の時計には誤差があるので、受信機でこの僅かな誤差を計算しなければ、各衛星からの正確な伝搬時間、距離が求められない。従って、三次元測位には、最低4衛星からの電波を受信する必要がある。
 GPSの測位精度は、水平方向でほぼ100m、垂直方向で156mとされている。しかしながら、沿岸や港湾内では、更に高精度の測位が要求されることもあり、DGPS測位の利用が進んでいる。これは、緯度、経度が正確に測量されているGPS基準局で受信、測位して求めた各衛星までの距離と、各衛星の放送軌道暦による衛星位置と真の基準局位置とから求めた計算距離との差を、擬似距離補正データとして放送するもので、利用者はその値を各衛星からの擬似距離に加えて補正し位置を求める。測位精度は、10m前後といわれている。
2・13・12 その他の航法装置
(1)ロランC受信機
 ロランCは、100KHz帯のパルス波を使用することにより、地表波と空間波(地表と電離層との間を反射しながら伝わる電波)との区別が容易にでき、安定している地表波を使い精度の高い位置測定を比較的遠距離(1500マイル程度)まで行うことができる。
 ロラン航法は、主局と従局で一組となる二つのロラン局から同期して発射される電波を受信し、その到達時間差を測定することにより船の位置線を求める方式である。この位置線は、電波の到達時間の差が等しい点の軌跡であり、主従二局の位置を焦点とした双曲線である。
 船位の決定には、二組以上の組局の電波を受信して、それぞれの位置線の交点から船の位置を求めるものである。
 なお、現状では、一般商船には(船主からの特別な設置要望がない限り)設置しないが、漁船では、まだ、かなり利用されている。
2・13・13 レーダー
 船舶用レーダーは、パルス状のマイクロ波を指向性空中線から発射し、その電波が物標に当たり反射して戻ってくるまでの時間を測定して物標までの距離と物標の方位を測定することができる装置である。物標の探知距離は、24〜48海里のものが普通で、120海里まで有効なものもある。
 表示は、PPI(Plane Position Indicator:平面位置表示器)に表示される。表示面の大きさは、7インチから、10、12、16インチの種類がある。
 PPI表示方式には、アナログ式とディジタル式のブラウン管表示方式があるが、多くの利点を有する後者の方式が主流である。
 ディジタル式のブラウン管表示方式は、PPI走査で得たレーダー映像の極座標での位置を、直交座標の位置に変換し、ブフウン管に表示するものである。このため、テレビのように高輝度表示ができることと、その輝度を一定に保つことができるため、明るい場所で同時に複数の人がその映像を見ることができる利点がある。
(1)船舶用レーダーに使用される周波数帯
3cm波帯 9320MHz〜9430MHz(Xバンド)
10cm波帯 3000MHz〜3100MHz(Sバンド)
 
表2.4 波長別性能比較
(拡大画面:57KB)
 
備考:どの周波数帯のレーダーにも長所短所があるが、距離や方位の分解能力に優れる3cm波帯レーダーが、従来より最も多く使用されてきている。
 また、GMDSS(全世界的な海上における遭難安全システム)にあっても、積付け義務となっているレーダートランスポンダーを捜索するのに、この3cm波帯レーダーを使用するようになっている。
 10cm波帯レーダーは、表の総合欄にあるような長所を持つため3cm波帯レーダーと併設装備するのが一般的である。
 
2・13・14 自動衝突予防援助装置(ARPA)
 衝突予防は、他船などの物標の位置をプロッティングすることにより、その将来位置を予測し、危険かどうかを判定している。これらの作業をコンピュータで自動処理するのが、ARPA(Automatic Radar Plotting Aid)である。
 レーダーで得られた目標の信号はデータ処理器で処理され、自船からの方位と距離の信号としてコンピュータに転送される。
 レーダーでプロッタにプロットするのは3分か6分の間隔で行うが、ARPAの追尾は電気的に一定時間間隔でプロットしてゆくことに相当する。これは時々刻々検出された目標位置データを先に検出された目標位置データと比較し、同一目標であるか否かの判定をし、同一目標の位置データの変化量を計算するため、同一目標ごとにデータをファイルするものである。
 時々刻々変化する同一目標の位置データから、目標の速度、針路を算出し衝突の危険性の有無を判定するものである。目標の速度、針路が判明すれば自船に最も近づく点(CPA:Closest point of Approach)と、それに至るまでの時間(TCPA:Time to CPA)の計算は容易である。このCPA及びTCPAを、あらかじめ自船の状況に応じて設定した最小CPA、及び最小TCPAと比較して衝突危険の有無を判定する。
 通常のレーダースコープ上に他船のベクトル(真と相対ベクトルの切換)と、どの目標が危険船であるかを、また衝突の危険船がある場合は警報音及び警報ランプで、操船者に注意を促すものである。
2・13・15 プロッティング設備
 従来は光学プロッタを使用して、レーダー表示面上で他船の動きをプロッティングしていたが、現在では電子プロッタの機能がレーダーに組み込まれている。本設備は、レーダー画面上の映像を一定時間間隔でマークすると、その物標の動向をベクトル又は数値データで表示する。
 なお、将来設備のための電子プロッティング機能(EPA:Electronic Plotting Aid)と自動追尾機能(ATA:Automatic Tracking Aid)に関する性能基準がIMOで審議されている。







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