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2・13・16 電子海図表示装置
(1)電子海図表示・情報システム(ECDIS)
 電子海図表示・情報システム(ECDIS:Electronic Chart Display and Information System)は、航海用センサーにより得られる船位情報と、航海用電子海図から選定された情報を表示することができる。この表示画面上には、航海士により入力される航路計画と航行監視、必要に応じ付加的な航海関係情報を重畳表示することもできる。適当なバックアップ装置を備え、1974年SOLAS条約の第V章第20規則で要求される「更新された海図」に適合するとして承認できる航海用情報装置である。これらは、最近の船舶の合理化・省力化が進むなかで利便性とともに航行の安全・運行能率の向上を図る観点から、近代的航海の補助手段として極めて重要である。
(2)電子海図装置(ECS)
 電子海図装置(ECS:Electronic Chart System)は、ECDISの機能や表示のうち、IMOのガイドラインに示されるような限定された機能を持つ電子海図装置で、これに使用される海図データ媒体はENC(Electronic Navigation chart)でなくてもよく、各国水路部又はこれに代わる水路機関(例えば、日本水路協会)が承認する海図データ媒体(航行用電子参考図・ERC:Electronic Reference Chart System)などを用い、その情報に重畳して限定された航行情報を表示でき、各国で承認された装置である。
(3)プロッター装置
 レーダーやGPSなどの電子的位置測定装置と連動した簡易な航海援助装置である。本装置は、ブラウン管上に、船舶位置を連続して表示し、また航跡として記録し、同時に自船針路、自船速度、海岸線、等深線、著名な地名などを表示する装置である。
2・13・17 ワンマン・ブリッジ・コントロール・システム
 近代化船の船橋は、航海中の船内全体の司令塔の位置づけの傾向が強くなり、一人で航海当直、操船ができることが望まれている。これらを背景として、NKはこのワンマンブリッジコントロールに関する船橋設備規則を平成5年に発行している。この内容は、船橋の配置及び作業環境、航海機器などの一般規程の他に、ワンマン操船のための事故予防並びに船橋作業支援に対する規定がある。
 船橋の配置に関しては、視界の確保のための船橋の高さ、前面窓の大きさ及び船舶の周囲視界の確保のための作業場所と視野を遮る障害物との相互関係が規定されている。船橋の作業環境としては、船橋の振動、騒音、照明、空調設備などを十分考慮するように規定されている。
 航海設備としては、レーダー、電子式船位計測装置、自動操舵装置などの一連の航海計器・装置等の操作性と安全性を考慮した配置と機能について規定されている。
 事故予防に関する規定は、当直航海士が正常に当直業務についていることを確認できるように配慮したものであり、定期的な間隔(12分以内)で適当な確認操作がない時の警報及び警告転送システムが要求されている。
 船橋作業支援に関する規定は、一人当直を念頭に置いた一段と高度な航海装置を配慮したものであり、航海機器の統合化並びに情報の集中化を図るための船橋情報システムのほか電子海図とレーダー映像の重畳表示システムの装備やオートトラッキングシステムが要求されている。
 なお、NK船橋設備規則には、船橋の配置、作業環境、及び航海設備の適用を受けた船を「BRS船」、更に事故予防システムの適用を受けた船を「BRSI船」、「BRSI船」に船橋作業支援システムの適用を加えた船を「BRSIA船」と定めている。
 図13.2に最近のブリッジコンソールの例を挙げておく。
(拡大画面:34KB)
図13.2 統合化されたブリッジコンソールの例
 
2・13・18 海事衛星通信装置
 陸上と船舶、船舶相互間の通信には、静止通信衛星を利用するインマルサットシステムが活用されている。
 インマルサットシステムには、次のような種類がある。
 
  インマルサット A インマルサット B インマルサット C インマルサット M
通信の応答 リアルタイム リアルタイム バケットによる蓄積伝送 リアルタイム
サービスメニュー 音声/データ Fax/Tlx 同左 データ/Tlx 音声/データ Fax
用途 海上移動 陸上可搬 同左 海上移動 陸上移動 陸上可搬 同左
衛星追尾 不要
音声モデム アナログ ディジタル ディジタル
GMDSS 適合 適合 適合 不適合
 
2・13・19 模写伝送装置
 この装置には、気象関連、航行警報、新聞及び漁海況情報などを受ける一般には気象ファックスという受信専用の装置のものと、相互に情報通信を行う通信用ファックスとがある。
(1)気象模写電送
 各国の気象庁からそれぞれの周辺の天気図や気象資料がファックス放送され、それを受信/受画することで正確な気象情報が得られる。
 ファックス放送は、世界の約16ヶ国がサービスを行っていて、日本ではJMH(東京第1)及びJMJ(東京第2)のコールサインで気象庁が放送している。
(2)航行警報、新聞模写電送
 JJC(海上保安庁及び共同通信社)のコールサインで共同通信社が沿海における水路情報、警報、一般ニュース、海運水産ニュースなどを放送している。ただし、この放送は共同通信社と受信契約をしないと受信できない仕組みになっている。
(3)漁海況模写電送
 JFC(神奈川漁業無線局)のコールサインで全国漁業無線協会により近海の海況、海洋速報、沿近海漁場海況、市場情報などを放送している。
 (4)通信用ファックス
 短波帯の無線回線を使用したファックスと海事衛星回線を使用したファックスがあり、前者は漁船の船間通信、後者は遠洋漁船・国際航海の商船において陸船・船間通信で大いに発達普及している。
2・13・20 コースレコーダ
 コースレコーダはペンレコーダの一種で、マスターコンパスから伝達された方位信号により時々刻々の船の針路を記録紙の上に記録するものである。
2・13・21 航跡自画器
 航跡自画器は航行する船の時々刻々の速度信号と方位信号又は船位信号を受けて、航跡を自動的連続的に記録紙上に記録するものである。
2・13・22 回頭角速度計
 ターンレートインジケータとも称するもので、操船の際に船の回頭運動を把握し易くするために、使用される計器で、主として巨大船で使用される。マスターコンパスからの船首方位同期信号を処理して、船首方位の変化速度に比例した信号に変換し、指示器に回頭角速度として表示する。代表的な形式の指示器の例では、1分当り3°の刻みで1分当り60°(1°/秒)の回頭角速度まで目盛表示されている。
 
2・14 無線通信装置
 船舶の無線通信機器は、船舶の運航機能を拡大し、乗組員の生命と船の安全を確保しつつ航行運輸作業を高能率化し、また漁獲生産性を向上させるためのものであり、無線通信の内容は、遭難、安全、緊急、警報、航行、気象、潮流、海温、測位、時報、新聞、集荷情報、船舶相互交信、漁業や魚市場の情報、更に気象庁との情報交換などが行われる。
 その通信方式は、特殊技能を必要とするモールス式無線電信から自動化通信に変わりつつある。
 特に海上における捜索及び救助に関する通信システムは、手動操作に依存している「SOS通信」から、近代通信技術を駆使し、船舶、陸上を含め自動化された「全世界的な海上における遭難安全システム(GMDSS)」に、1992年2月1日より船舶の建造日に合わせ段階的に導入され、1999年2月1日から、平水区域等を航行する一部の船舶を除き、完全にこの通信システムに移行した。







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