(4)電動機始動方法の計算例
大形電動捕機としてバウスラスタを装備した船舶を例にとってバウスラスタの始動方法を決定する場合の検討を行ってみよう。
検討対象船の発電機、バウスラスタ用電動機、ベースロードなどの要目・特性は下記のとおりとする。
なお、検討条件としてバウスラスタを始動するときには必ず発電機2台を並行運転させておくものとする。
発電機要目及び特性
定格出力及び台数=720〔kW〕×2〔台〕
定格電流補=1155〔A〕
直軸過渡リアクタンス(X′d)=0.201〔PU〕
直軸次過渡リアクタンス(X″d)=0.122〔PU〕
定格効率(η)=0.93
電動機要目及び特性
定格出力(Pm)=450〔kW〕
定格電流=1155〔A〕
始動電流(Im)=3600〔A〕
始動力率(Pfm)=0.3
始動トルクと定格トルクの比(K)=110〔%〕
GD2(GD2m)=310〔Kg−m2〕
ただし、バウスラスタのGD2(GD2e)=51〔kg−m2〕
定格回転数(N)=880〔min−1〕
ベースロード要目
負荷(Pb)=770〔kW〕
力率(Pfb)=0.8
(a)瞬時電圧降下
瞬時電圧降下は( 式30)により計算されるが、この例の場合はバウスラスタ始動時に発電機が2台並行運転されているから( 式32)におけるXeは次のようになる。
従って瞬時電圧降下は
ただし、
瞬時電圧降下が15%を超えているので直入始動とすることは不適当であり減電圧始動とする必要がある。
ここで、始動補償器始動(コンドルファ)を採用し、単巻変圧器のタップ値を65〔%〕とした時の瞬時電圧降下を求めてみる。
タップ値が65〔%〕の場合の単巻変圧器の1次側の始動電流は(式29)により次のようになる。
従って、瞬時電圧降下は
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ただし
(b)原動機容量の確認
これは( 式39)により確認すればよいが、この場合に発電機が2台並行運転されていることを考慮すると( 式39)は次のようになる。
従って
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すなわちバウスラスタを65〔%〕の始動補償器始動とした場合、発電機用原動機出力は約546〔kW〕あればよいので問題ない。
(c)ACB過電流トリップの検討
(i)発電機電流
発電機電流は( 式40)から求められるが、この場合も発電機が2台並行運転されていることにより( 式40)に次のようになる。
従って
ただし
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(ii)電動機始動時間
(式45)から
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ただし
(Kの値は65〔%〕タップのときは110〔%〕×(0.65)2≒46.5〔%〕となる。)
上記の計算結果から、電動機電流は発電機の定格電流の約115〔%〕であり、電動機の始動時間は約3.7〔秒〕であるからバウスラスター始動のときにACBがトリップすることはない。
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