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(3)電動機の始動方法の選定
 かご形誘導電動機の始動方法としては、経済性などの点から出来る限り全電圧始動とすることが望ましいが、大形電動機で全電圧始動が懸念される場合には、次の項目について検討し問題なければ全電圧始動とし、いずれかに不具合がある場合にはスターデルタ始動、リアクトル始動又はコントルファ始動の中から負荷の始動特性に適した始動方法を選定する必要がある。
(a)瞬時電圧降下
(b)発電機容量
(c)原動機容量
 なお、バウスラスタなどの特別な大形電動機が装備される場合を除いては、一般には瞬時電圧降下の検討のみを行えばよい。
(a)瞬時電圧降下
 電動機始動時の発電機の瞬時電圧降下を次の式で計算しその値が15%を超える場合には全電圧始動とはしないのが一般的である。
 
・・・(式30)
 
ただし
 
・・・(式31)
=負荷投入時の発電機リアクタンス〔PU〕
 
・・・(式32)
=電動機の始動リアクタンス〔PU〕
 
Vd 発電機瞬時電圧降下〔%〕
X′d 発電機直軸過渡リアクタンス〔PU〕
X″d 〃直軸初期過渡リアクタンス〔PU〕
 
 (式32)によってXeの値を求めるために必要な発電機定格電流及び電動機始動電流の値はメーカーから入手しなければならない。
 なお、一般に発電機は瞬時電圧変動特性がいわゆるJEM 1274(船用交流発電機)の(3)特性のものを使用するので、この場合はX'''d=0.22としてよい。
(備考)
 JEM 1274(船用交流発電機)の(3)特性とは発電機が定格周波数で無負荷運転中、定格電圧で定格電流の80〔%〕に相当する負荷(125〔%〕インピーダンス)を力率0.4以下で突然加えた場合、瞬時電圧変動率が15〔%〕以内におさまる特性である。また、この場合X'''dが0.22となるのは次のようにして求められる。
 
図2.23 負荷投入時の単相等価回路
 
 図2.23の等価回路において、投入負荷のインピーダンスは発電機定格電圧(V)を掛けた時、発電機定格電流(IG)が流れた場合が100〔%〕インピーダンスであるから発電機定格電流の80%が流れる場合の投入負荷インピーダンスは1/0.8=1.25〔PU〕、すなわち125〔%〕インピーダンスとなる。
 また80〔%〕の投入負荷時の発電機瞬時電圧降下が15〔%〕であるから図2.23から次の式が成り立つ、
 
・・・(式33)
 
したがって、
 
 
 次にJEMで規定されている投入電流の大きさと発電機瞬時電圧降下の関係を図2.24に示す。
 なお、初期計画段階に於て電動機の始動電流の値が明確でない場合には下記の簡易決定法により発電機定格出力の約1/8以下の定格出力の電動機は直入始動とし、1/8を超える電動機は減圧始動とすることで計画してよい。
 ただし、この場合は電動機の始動電流が明確になった段階で(式30)により電圧降下を計算し必要あれば計画を変更しなければならない。
 
図2.24 投入電流と発電機瞬時電圧降下
 
〔簡易決定法〕
 (式32)における発電機定格電流(IG)および電動機定格電流(IM)をそれぞれ力率0.8として求める。
 
・・・(式34)
 
・・・(式35)
 
 ただし
PG:発電機定格出力〔kW〕
PM:電動機定格出力〔kW〕
 ここで電動機の始動電流を定格電流の約6倍と仮定すると電動機始動電流は(IMST)は
IMST=6IM・・・(式36)
 従って
 
・・・(式37)
 
 一方(式30)においてVd=0.15、=0.22とすると
 
・・・(式38)
 
(式37)及び(式38)から
 
 
 従って
PG/PM≒7.65
 すなわち、電動機始動電流を定格電流の約6倍と仮定した場合は発電機定格出力の約1/8以下であれば直入始動としても瞬時電圧降下は15%を超えることはない。
(b)原動機容量
 大形電動機始動時に発電機用原動機へ掛かる有効電力が原動機の出力を超える場合は全電圧始動とすることは出来ない。
 一般に発電機用原動機は110%30分の過負荷定格を持っているので次式が成立する範囲では全電圧始動が可能である。
 
・・・(式39)
 ただし、
 
Pb 電動機始動時のベースロード〔kW〕
V: 電動機定格電圧
Is 電動機全電圧始動電流
cosθ: 電動機始動力率
Pe 電動機定格出力〔kW〕
η: 発電機効率
 
 ここでPbは電力調査表から、その他の値はメーカーからデーターを入手して計算をすること。







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