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(5)電動機の制動法
 電動機の制動法は大別して機械的制動法と電気的制動法に分けられるがここでは電気的制動法のうち代表的なものについて述べる。
(a)直流電動機
(i)発電制動(DYNAMIC BRAKING)
 発電制動は電動機を電源から切りはなし図2.25及び図2.26に示されているように制動抵抗を接続し回転の慣性による動力を電圧に変換し、この制動抵抗で熱エネルギーとして消費させる制動法である。図2.27の直巻電動機の発電制動の場合は制動抵抗を結ぶと同時に界磁巻線の接続を反対にし界磁電流Ifが同じ方向に流れる様にする必要がある。
 制動時の機械時定数(秒)をTM、制動回路抵抗(Ω)をR、電動機及び負荷のはずみ車効果(kg−m2)をGD2、定数をK、とすると、次の式が成立する。
 
図2.25 分巻電動機の発電制動
 
図2.26 直巻電動機の発電制動
 
・・・(式48)
 
 すなわち、はずみ車効果及び制動回路抵抗が小さいほど速く減速する。しかし、低速になると制動力が非常に小さくなるので、普通は他の制動方法と併用することが多い。
(ii)回生制動(REGENERATIVE BRAKING)
 また負荷が逆トルクのとき、たとえばクレーンで荷をおろす場合では、負荷を原動機としその機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換して電源にもどす方式があり、これを回生制動という。
(b)交流電動機
(i)発電制動(DYNAMIC BRAKING)
 電動機を交流電源から切りはなし、1次側の3端子のうち2端子を結び、これと他の1端子の間へ直流を通じて固定磁界を作れば、交流発電機として作用し、回転の慣性による動力は電力に変換され回転子の中で熱エネルギーとして消費されることによる制動法である。
 従って、巻線形電動機の場合は、回転子の発生電力をスリップリングを通して外部抵抗で消費させれば電動機自身は過熱することはないが、かご形電動機の場合は電動機が過熱するので注意を要する。
(ii)回生制動(REGENERATIVE BRAKING)
 直流電動機の場合と同じく、負荷が逆トルク、即ち同期速度以上で運転すれば誘導発電機として作用し、その時の発生電力を電源にもどすことにより制動する方法である。
(iii)逆相制動(PLUGGING)
 電動機の一次側の2端子を入れ替えて回転磁界の方向を替えて、回転子に逆トルクを与えることにより制動する方法である。
 この場合もかご形電動機は過熱するので注意を要する。
(iv)単相制動(SINGLE−PHASE BRAKING)
 これは巻線形電動機のみに使用される制動法で、一次側の3端子のうち2端子を結び、これと他の1端子の間に単相交流を通じて励磁すれば単相誘導電動機として働き、二次側に抵抗を入れ抵抗を増大していくとトルクは減少していき遂には逆トルクがかかり制動が行われる方法である。
 この制動の理論を理解するために単相誘導電動機の理論について若干述べる。
 3相誘導電動機には回転磁界が生じるために電動機は自力で始動することが出来たが、単相誘導電動機には交番磁界が生ずるのみであるから自力で始動することはできない。
 しかし、この単相誘導電動機を何らかの方法である速度まで回してやればその後は単相電力で加速し全速度に達し、全負荷を背負って運転を続けることが出来る。
 この理由は次のように考えられている。
 即ち、一つの交番磁界は、同じ角速度をもって、反対の方向に回る回転磁界faとfbの合成と考えられる。即ち単相誘導電動機の作用は、あたかも相回転を異にする2つの3相誘導電動機の作用を合成したものと考えられ、図2.27は、faによるトルクTaと、fbによるトルクTbを合成して単相誘導電動機のトルクTが得られる模様を示したものである。
 この合成トルクはTは、スベリが1の時零であるから先にも述べた様に自力で始動することは出来ないことが解る。
 さて巻線形単相誘導電動機の2次側へ抵抗を入れ、その値を次第に増やしていくと比例推移(電気計算編6.3.7(5)参照)により停動トルクは次第にスベリの大なる方へ移動して行き2次抵抗が或る値の時例えばfaによるトルクがTa′、fbによるトルクがTb′となったとすると定格回転数における合成トルクT′は負の値となっている。従って電動機は制動されることとなる。
 以上電動機の制動法について述べて来たが、実際に一般の船舶において電気的制動法が使用されているのは電動甲板機械及び電動荷役装置に回生制動が用いられている程度である。
 
図2.27 単相誘導電動機のトルク曲線
 
(6)始動器
 始動器は一般に鋼製のデッドフロント、防滴形とする。
 重要な設備用電動機の始動器は、原則として、主配電盤から単独に給電されなければならない。
 しかし、個々の電動機の配置、電路の関係などから経済的にぎ装を行うため、数台の始動器を集合させる場合がある。
 集合始動器盤の形式に片面式と両面式があるが、盤内での各始動器は独立させ、一つの始動器の事故が隣接の始動器へ波及しないよう、その間に鋼板の仕切りを入れる必要がある。ただし、冷凍機用圧縮機及びその冷却水用電動機のように、互いに密接な関係があり、一方の電動機の事故により、そのユニットの機能が停止するようなものはこの限りでない。
 盤に使用されるMCCBは電源母線を活かしたまま取り替えができるようなプラグイン式などとすべきである。
 また、取付器具はすべて表面から保守点検が行えることが望ましい。
 始動器の前面扉を開くと始動器内の電磁接触器が断となり電動機が停止するようないわゆるドアーインターロックを装備する場合があるが、電動機が運転中でも始動器の内部の点検が出来るようにするためこの種のドアーインターロックは設けないのが一般的である。
 始動器が電動機から離れた場所に装備される場合は、一般に停止位置でロック可能な発停押ボタンスイッチを電動機の近くに設ける。
 始動器には一般に断路器、電磁接触器、過電流継電器、発停押ボタンスイッチ、電源表示灯、運転表示灯、電流計などが装備される。
 電流計は大形電動機、重要補機用電動機、始動時間の長い電動機などに限って装備されるのが普通である。
 バイメタル式熱動形過電流継電器は、周囲温度の変化を補償出来る構造のものを使用し2相にのみ装備する場合が多い。
 操だ機、主潤滑油ポンプなど船の安全、主機関の保護のために重要な補機の始動器は、一般に不足電圧解放回路(UVR)を採用し、船内ブラックアウト後電源が復帰した場合自動的に再始動するようになる。
 なお、自動化船の場合には重要補機は殆どUVRとすることが多い。
 
2.4.2 電熱装置
 電熱装置には、機関室内重油過熱器、電子レンジ、電気暖房器などがあるが、これらの形式、構造、取付位置などにはとくに火災予防と感電防止対策が必要であり、重油加熱器などには空だき防止装置が要求される。







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