2・14 GMDSS設備
無線設備に関しSOLAS条約の改正及び船舶安全法が改正され、GMDSS(Global Maritime Distress and Safety System:全世界的な海上における遭難安全システム)設備が1999年2月1日から、平水区域等を航行する一部の船舶を除き、全面導入された。
GMDSSは、次の5つの機能を柱として考えられたが、その機能とは、(1)迅速な自動的遭難通報、(2)確実な生存艇への接近、(3)現場通信の確保、(4)能率的な捜索救助協力通信、(5)海上安全情報放送の確実な受信である。
以下にGMDSS設備の概要を示すが、これらの適用及び性能の詳細については、「船舶設備規程」、「船舶救命設備規程」、「電波法関連規則」及び「船舶電気装備技術講座(GMDSS)艤装工事及び保守整備編」等を参照のこと。
海岸局から300海里以内を航行する船舶に向けて放送されている海上安全情報(航行警報、海上警報、海上予報、捜索・救難情報等)を自動的に受信し、内蔵のプリンタで印字するもので、国際ナブテックス(英語、518kHz)と日本語ナブテックス(424kHz)がある。情報の内容は、航行警報、気象警報等17に区分されている。
インマルサット静止衛星を使用し、遭難通信を含む情報を船舶と陸上との間で直接交信する装置であり、「A、B、C及びM」の4種のシステムがある。
インマルサットシステムを構成する4個の静止衛星は、赤道上約36,000kmの静止衛星軌道であって、東・西大西洋、インド洋及び太平洋上にあり、極地域を除く全世界的な通信有功範囲をカバーしている。
4種のインマルサットシステムの概略特徴は、次のとおりである。
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インマルサットA |
インマルサットB |
インマルサットC |
インマルサットM |
通信の応答 |
リアルタイム |
リアルタイム |
バケットによる蓄積伝送 |
リアルタイム |
サービスメニュー |
音声、データ、FAX、Telex |
同左 |
データ、Telex |
音声、データ、FAX |
用途 |
海上移動陸上可搬型 |
同左 |
海上移動陸上移動陸上司搬型 |
同左 |
衛星追尾 |
要 |
要 |
不要 |
要 |
音声モデム |
アナログ |
ディジタル |
− |
ディジタル |
GMDSS |
適合 |
適合 |
適合 |
不適合 |
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EGCは、陸上から送られてくるSafety-Netといわれる海上安全情報及びFleet-Netといわれる商業的情報を受信するものである。インマルサットC船舶地球局に付加して専用聴守ができるもので、海上安全情報の無休聴守のためのナブテックスのカバレージ外を航行する船舶に搭載が義務付けられている。
DSCは、国際VHF無線装置に、自動化されたデジタル通信方式のDSC機能を付加したもので、船舶からの遭難警報、緊急、安全通信及び一般呼出通信に対応することができる。また、多数の無線局が同一の周波数で共同運用している中で、特定の局又はグループを指定して、あるいは全船舶を一括して呼び出すことができる。
VHFデジタル選択呼出装置の受信機能のみを有する装置である。
デジタル符号を用いて自動的に相手局に接続し、通信文書を送受信するためのテレックス装置である。MF/HF無線設備又はインマルサット無線設備に接続される。
遭難現場において、主として生存艇(救命艇、救命いかだなど)と本船と救助船との間、生存艇相互間などの連絡通信に使用される小型の無線電話の送受信機である。
常時は、操舵室などに格納されていて、非常の際に持ち出して使用する持運び式と常時生存艇に装備されている固定式の2種類がある。
衛星EPIRBは、コスパス/サーサット(COSPAS/SARSAT)衛星を使用したものであり、船舶に搭載される遭難通報設備で、遭難信号を発射する小型の送信機を内蔵している。船舶が遭難した場合、船舶や救命いかだなどから発射された遭難信号はこの衛星を経由して地上に送信され、地上局はこれを受信して信号を解読して遭難船の船名や遭難時刻などを知るとともに、その位置を算出して、最適な救助活動を開始する。
なお、衛星EPIRBには、浮揚型(手動発信のほか船舶から自動離脱して浮揚する装置)と非浮揚型(手動発信の機能のみを有し船橋等に装備)とがある。
SARTは、船舶や航空機が海上で遭難等人命の安全に係る重大な事故に遭遇した場合、その発見と救助率の向上を図るためのものである。即ち、船舶や航空機に装備されている9GHz帯のレーダーの電波に応答して、これと同じ電波をSARTから発射し、それを船舶や航空機に装備されているレーダーの表示面上には、レーダー側から見て、このSARTが存在する位置の後方に、多数の点列が表示され、遭難場所の方位や距離が分かるホーミング装置である。
因みに、SARTの電波の有功到達距離は、船舶用レーダーを対象とした場合は、レーダー空中線の高さにもよるが、約10海里、捜索用航空機のレーダーを対象とした場合は、約50〜60海里といわれている。
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