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2・13・22 船舶自動識別装置(AIS:Automatic Identification System)
 船舶自動識別装置(AIS)は、衝突予防と人命安全という観点から、平成14年7月1日から船舶への搭載が義務化される装置である。
 主な特徴は、(1)その位置情報や操船情報(針路、速力、船首方位、航海状態、回頭角速度等)等の航行情報、船名や積荷等の船舶の固有情報をVHF帯電波で周囲に定期的に送信、(2)他船から送信されたこれらの情報を受信、(3)これらの情報を表示器に表示、を行うことにより、“船舶間の衝突防止”及び“通過船舶とその積荷情報の把握及び船舶運行管理業務(VTS:Vessel Traffic Service)の道具”として有用な装置である。
 
 航海情報記録装置(VDR)は、船舶の海難事故後の原因を調査する補助装置として、平成14年7月1日から段階的に船舶への搭載が義務化される装置である。
 航海情報記録装置(VDR)は、人為的過誤による海難の原因の調査と、今後の海難防止対策の目的で運行や船舶固有に係わるデータを記録に残し、事故後、そのデータを再生できる装置である。
 構成は、保護カプセル(運行データや船舶固有のデータを記録する最終記録媒体と水中音響ビーコンを取り付けている)、中継器、記録制御器、データ収集器、船橋音響収録用マイクユニット、データ表示装置、再生装置(船内装備の義務はなく、かつ、形式検定の対象でもない)等の例もある。
 なお、メーカーによって、機器の構成及び機器名はいろいろである。
 
 近代化船の船橋は、航海中の船内全体の指令塔の位置づけであり、1人で航海当直、操船ができることが望まれている。これらを背景として、NKは、このワンマン・ブリッジ・コントロールに関する「船橋設備規則」を平成5年以降から規定している。
 このNK規則の内容は、「船橋の配置及び作業環境」、「航海機器」などの一般規定の他に、ワンマン操船のための「事故予防」並びに「船橋作業支援」に対する規定がある。
 「船橋の配置及び作業環境」に関しては、視界の確保のための船橋の高さ、全面窓の大きさ及び船舶の周囲視界の確保のための作業場所と視野を遮る障害物との相互関係が規定されている。
 「航海機器」としては、レーダー、電子式船位計測装置、自動操舵装置等の一連の航行設備等の操作性と安全性を考慮した配置と機能について規定されている。
 「事故予防システム」に関しては、船橋に警戒態勢の当直航海者がいることを定期的に確認できるシステムであること、即ち、設定された確認間隔(12分までの確認間隔を船長のみが調整・設定できる。)を経過した場合、船橋に可視可聴警報を発し、かつ、30秒以内に当直航海者が対応できなかった場合、船長、指定支援航海者及び公室への「警報及び警告転送システム」が要求されている。
 「船橋作業支援システム」に関しては、1人当直を念頭に置いた一段と高度な航行装置を配置したものであり、航行装置の集中化並びに情報の集中化を図るための船橋情報システムのほか電子海図とレーダー映像の重畳表示システムの装備やオートトラッキングシステムが要求されている。
 なお、上記のNK「船橋設備」は次のように定義されている。
(1)「船橋の配置及び作業環境」及び「航海機器」について登録を受けた船舶を「BRS船」という。
(2)「船橋の配置及び作業環境」、「航海機器」及び「事故予防システム」について登録を受けた船舶を「BRSI船」という。
(3)「船橋の配置及び作業環境」、「航海機器」、「事故予防システム」及び「船橋作業支援システム」について登録を受けた船舶を「BRSIA船」という。
 最近の「船橋設備」相当の具体例として、「IBS」と「INS」がある。
(1)「INS」は、「集中航海設備:Integrated Navigation System」のことであり、まず航海情報収集機能として船首方位(ジャイロ、TMC、GPSコンパス等から)、船位(GPS受信機から)、船速等の航行情報の収集、次に航行情報判断機能として、電子海図システム、レーダー/ARPAの表示装置の集約、さらに、制御機能として、保針制御(オートパイロットの機能)、トラックコントロール(航路保持制御)等の機能を集約したものである。
(2)「IBS」は、「集中船橋設備:Integrated Bridge System」のことであり、システムの統合化の範囲について、確たるものはないが、広い範囲の例としては、「INS」の機能に加えて、GMDSS関連通信機器の統合、機関制御機器(機関部モニタ、ロガー、主機関遠隔制御等)の統合、荷役制御システムの統合、その他管理用情報システム等の統合を行うものである。
 したがって、具体的には、上記に加えて、ソナー、舵角指示計、VHF、ナブテックス、インマルサット、船体運動、機関部モニタ、機関部遠隔制御装置、荷役制御装置等が含まれることもある。







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