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4. MARPOL73/78附属書Iの見直し(議題4関連)
(1)プレナリーでの審議
(イ)MARPOL Annex I の改正
 コレスポンディンググループのコーディネーターであるギリシャから、コレスポンディンググループの審議報告(BLG7/4)がなされた。プレナリーでは、未解決事項(Outstanding issue、BLG7/4 Annex2)を各項目ごとに審議することとなった。
(a)第7規則 検査強化
 我が国は、コレスポンディンググループにコメントしたとおり、13G規則の改正でCASを導入したことにより、Enhanced surveyは不要との結論になったことを説明し、第7規則のEnhanced surveyを削除するよう要請し、これをサイプラスが支持した。ギリシャがこれに反対の意を唱えたところ、ワーキンググループで審議することになった。
(b)第18規則 油記録簿
 第18規則の油記録簿第1部が150トンから400トンのタンカーに所持されなくなることが、単に第16規則との整合が理由で改正することに我が国は反対し、結果ワーキンググループで検討することになった。
(c)第36規則 緊急措置手引き書
 第36規則の「in accordance with」か「based on」については、IMOのガイドラインに従い「based on」を使用する事となった。
(d)その他
 その他については、いくつかの議論はあったがワーキンググループで審議することとなった。
(ロ)13F(3)の解釈
 ダブルハルスペースにはIBCコード18章のIII類貨物のみをとするノルウェー提案(BLG7/4/2)は、多数の国の反対により、結果BLG6で原則合意されたIBCコードで規定されている船型3貨物を積んでよいとの結論となった。改正案文は、
"13F(3) The entire cargo tank length shall be protected by ballast tankers or spaces other than tanks that carry oil as follows;"
とした。
 
(2)ワーキンググループでの審議
 プレナリーでの議論に引き続いてWG2にて審議が行われ、下記の点が確認、合意された。
(イ) 第1規則中の適用期日の表現につき、ギリシャ提案の“or”を“and”にすべしとの提案は棄却され、現行改正案どおりに“or”を用いる事となった。
(ロ) ESPに関する第7規則は、我が国提案どおり削除される事となった。
(ハ) 第16規則機関室からの油排出につき、タンカーとその他の船舶に対する区別はつけないことが合意された。
(ニ) 第17規則について、我が国より“abnormal conditions or”が現行第14規則から移行の際に削除されている点を指摘したところ、この件は既にBLG4にてノルウェー提案に基づいて審議されており、削除する事にて合意済みである旨の説明があった。
(ホ) 第18規則について、我が国より現行規則どおりに400GT以下のタンカーにも油記録簿第1部を持たせるべしとの提案を行ったが、議長を始めオランダ、スウェーデン、アメリカ、INTERTANKOより反対の意見が述べられた。理由は以下の通り。
機関室からの油排出規則である第16規則と調和すべし。(上記各国)
第16規則においてタンカーとその他の船舶を区別しないと決定している故、この項目においてのみ適用を区別するのは理にあわない。(オランダ)
400GT以下に対するタンカーの第2部所持の規定と同一にすべしとの日本の意見に対し、INTERTANKOより「貨物区域からの油混合物の排出量と機関室からのその排出量は比較にならない。この大きさの船舶の機関室からの油混合物の排出量は、貨物エリアからの排出と比較すると無視できる量である。」「第2部の所持と、第1部の所持を同じ観点から見ること自体意味が無い」との意見が出された。
これらの反対意見に対し、マーシャルアイランドのみが日本提案に賛成であった。
 議長より「主官庁の要求があった場合には油記録簿第1部を要求できる」旨の条文を追加する提案があったが、スウェーデンよりPSCが個々の船舶に対してその事実を把握する事は困難であり、混乱する恐れありとの反対意見が述べられ、審議の結果この提案は却下された。
 議論の結果、本条文につき400GT未満の船舶には油記録簿第1部は不要となった。また、、WGへの報告書に反対意見を述べた国がある旨を記述する事となった。
(ヘ) 第21規則を始めとし、条文中に使用されている「wing cargo tank」「center cargo tank」の表現につき、WG1の変更すべきでないとの結論に基づいて審議された結果、現行規則の表現をそのまま使用することとなった。
(ト) プレナリーより指示されたBLG5/6/3(Australia) の提案に基づき貨物油管システムのsea chestからの積極的分離措置について検討を行い、種々審議の結果、第28規則第7節に取り入れられることとなった。具体的対策の例示については、IACSより「機関のしかるべき部門(DE等)にて検討し、文章にて回章すべき」との提案に従い、本文中には「主官庁に承認された積極的手段と方策」との文言だけとした。また、現存船への適用につき、我が国とINTERTANKOが反対意見を述べた結果、新造船にのみに適用することとなった。
(チ) 第35規則規則油記録簿第2部については、現行案どおり150GT以上の全ての油タンカーに適用することとなった。(上記(ハ)及び(ホ)参照)
(リ) 第36規則第2節に関し、ギリシャより「in accordance with」を「based on」に変更すべしとの提案があり、プレナリーでの審議結果どおりに「based on」を使用する事となった。
 
(3)プレナリーでの審議(WG開催後)
 プレナリーにおいて、WG議長よりBLG7/WP.6に基づいてWGでの審議結果の説明がなされた。本件につき、我が国より、第18規則の変更により油記録簿第1部が400GT以下のタンカーに不適用になることについて、我が国は再度検討を行い、必要であればMEPC48又はBLG8に提案文書を提出することを発言した。新規則第28規則第7節の「積極的方策」の具体例については、各国が検討を行い、次回BLG7に提案することとした。その他の条文については、問題なく承認された。
 
5. 化学品の安全性及び汚染危険性の評価(議題6関連)
(1)ESPH7の報告(BLG7/6)
(イ)プレナリーでの審議
(a)ESPH7の進捗状況について
 ESPWGの議長からBLG7/6に基づいた説明があり、その後小委員会に対する下記要請事項の議論を行った。
(b)BLG小委員会への要請事項の検討
 WG報告書のBLG小委員会への要請事項のうち、.1〜.2については特段の反対なく了承された。
 .3についてはIPTA提案(BLG7/6/1)の新造船についての残留量を100Lから75Lにするとの提案を論議し、特に反対はなく了承された。
 .4の船型のクライテリアに関しては我が国より提案(BLG7/6/4)の主旨説明を行い、船型については専用船の場合やパームオイル輸送への影響は重要であると述べた。サイプラス及び豪州は、我が国提案に賛成し、パナマは絶対的な輸送量も少なく影響は無視できる程度であるとの意見であった。議長はESPHに対し重要性を考慮して検討することを要請した。
 .5の分類方法について、我が国は特に無害物質が科学的根拠なくnoxious liquidとされることから3分類法に対し強く反対した。これに対し米国、アルゼンチン、インドネシア、韓国、中国、マレーシア、バングラディッシュ、ブラジル(日本を含め9ヶ国)が賛成し蘭、ベルギー、ノルウェー、英国、独国、デンマーク、イタリア、サイプラス、フィンランド、スウェーデン、スペイン及び大勢順応的にパナマ、ライベリア、並びに4団体(INTERTANKO、CEFIC、IPTA、ICS)が3分類を支持した。サイプラスより本件は政策的でありMEPCで決定されるべきとの意見もあったが、議長は無害物質の問題を中心にWGで検討するよう指示した。
 .6から.15については特に意見はなく.16のBLG7/6/5の三国間協議のコンタクトポイントについてはオランダが問題としたが独国、サイプラスと検討し、まずMEPCサーキュラーで周知することとなった。
 なお関連のBLG7/6/2、BLG7/6/3、BLG7/6/4およびINF2、INF4についてもWGで検討するよう指示があった。
(ロ)ワーキンググループでの審議
(a)新5分類、3分類と現行5分類の比較
 約20項目について各々のメリット、デメリットを検討した。我が国、米国は5分類支持の立場から項目の修正、追加を行ったがWGの出席国の大半は3分類支持国であり、我が国の意見は十分に反映されなかった。
(b)汚染分類クライテリアの検討(BLG7/6/3)
 独国の船型クライテリアと汚染分類のクライテリアは原則的に同じにすべきとの提案をもとに、汚染分類への適用も検討し汚染分類のクライテリアの修正を審議した。汚染分類についてRemarkコラムのRelevant Remarkに代えてE3(海岸のアメニティへの影響)を使うという点は否決されたが、Remarkの内クライテリアにはC、M、R、T、N、Iを反映させることとなった。
(c)船型要件(BLG7/6/4)
 我が国は、BLG 7/6 annex 5のクライテリアに基づいた場合に現行の船型要件に比較して格上げ及び格下げになる物質を紹介し、我が国において大量に輸送されているキシレンを例に挙げ、船型要件のクライテリアに揮発性等の物性が反映されていない旨を指摘すると共に、当該クライテリアの変更を提案した。しかしながら、独、蘭、ベルギー、ノルウェー等の欧州諸国から、変更提案はGHSに基づいてはいないこと、揮発性は気候による影響が大きいこと、船型要件は事故による貨物の流出を考慮したものであるため揮発性の高い貨物が大量に流出した場合は大気汚染にもつながること、変更を提案したクライテリアに該当する物質の多くは“油類似物質”であり、MARPOL条約附属書Iではシングルハルタンカーでの輸送が禁止されているため附属書Iとの整合が取れないこと等の指摘があり、我が国提案は合意されなかった。独国提案については、汚染分類決定のためのクライテリアに関する修正提案と同様の理由で合意されなかった。
(d)その他のWGでの検討
 新規化学品のIBCコード及び二酸化炭素のIGCコードの提案は11月に開催されるESPH会合で行うこととなった。
(e)報告書のとりまとめ
 報告書については上記の議論についてエディトリアルな修正を行ったが、結論部分でのBLGとして3分類を推奨するかどうかについて議論を行った。我が国はもし3分類を推奨するのであればリザべーションをかけるとの意志を表明し、米国、マレーシアも同調したことから、WGの報告にBLGに3分類の推奨を行わないことになった。
(ハ)プレナリーでの審議(WG後)
(a)WGの報告(BLG/WP1、BLG/WP1/Corr)
 ESPH議長の蘭よりBLG/WP1を基に汚染分類クライテリアの見直し、汚染分類方法に関する3分類と5分類の比較結果、船型要件の見直しについて報告があった。
(b)汚染分類方法に関する3分類と5分類の比較
 我が国より、汚染分類に関する3分類法と新5分類法の比較において3分類が優れたように見られることにつき、以下の理由から同意できないと主張した。
(i)Pros/Consの比較は考え方によって逆転すること、例えば3分類の方が簡単で制度的に受け入れやすいという主張があるが、新5分類は現行法に類似しているためになじみやいとも言える。
(ii)排出要件に関して3分類はより環境に配慮しているとされているが、新5分類も環境要因を同等に考慮していること、また、現行附属書IIの考え方を踏まえ特定海域を設けることによって実質的に同等の配慮ができる。5分類でIII分類が残るのはむしろProでこれを残さないのはConと言える。
 中国、米国、マレーシア、インドネシア、フィリピンが我が国を支持、ライベリア、INTERTANKO、サイプラス、ノルウェー、蘭、パナマが反対を表明した。
 さらに、サイプラスから、22項目の比較自体は有用であるが、Pros/Consは見方によって逆転することがあり、MEPCでの各国判断に委ねるべきであることから、比較表のPros/Cons欄を削除する案が提案され、ノルウェー、蘭が反対し、DGAC、フィリピン、ギリシャが賛成を表明した。我が国はそもそもの比較の仕方が適切ではないためPros/Consのみを削除しても意味はないと主張した。
 議長はBLG小委員会はMEPCに対して専門家の意見が求められているとの観点からPros/Consの比較を添えてMEPCに提出すること決定した。
(c)船型要件の見直し
 WG報告に対して、船型クライテリアの選定は欧州の考え方を中心に決められていること、あまりにも現行の運航に与える影響が大きいことから、我が国は留保を表明した。蘭はIMOが環境保全に関して積極的な態度を明確にし新しい科学的知見を受け入れやすい制度を作るべきであること、産業への影響に関してはWGでの議論に産業団体が加わっていることから受け入れられると主張。一方、我が国が提起した内航船の問題には理解を示し、特例的な処置の可能性に言及した。DGACはアップグレーディングされる物質に関する我が国提案BLG7/6/4の調査を賞賛、対象物質数が多いことに対する驚きを表明した。運航に関する影響があることを認め船型要件の微調整が必要と主張した。ベルギー及び蘭は、事前洗浄が減ることも利点であると述べた。米国はDGACのコメントを支持し、今後のWGの提案に注意を払うことを表明した。議長はWGが分類にGHS-GESAMPの提供情報以上に分類上の操作を行っているか確認を要請し、WG議長(蘭)は、汚染分類はGESAMPの情報に従っているが、船型要件のクライテリアはIMOで行っていると回答した。我が国は、現行5分類方法のままでGHSを導入する場合に比べ、改正5分類は格上げされる物質がその2倍になることを紹介した。議長は船型要件に関して微調整が必要と認めつつ、WGの多数が支持した内容への同意を提案した。フランスは議長提案を支持。ベルギーは我が国の提案はクライテリアのダウングレーディングであると批判した。
 CIFFICは産業界としてレスポンシブルケアの観点から新しいデータを尊重すると表明した。本件は引き続きMEPCへ報告の上、審議されることとなった。







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