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5. まとめ及び今後の課題
 COADSには、海上気象の各要素のデータが19世紀から全海洋に対して蓄積されており、地球規模の長期変動を解明する上で非常に重要なデータと言える。しかしながら、そのデータは主として船舶観測によるものであり、20世紀前半以前は、時間的・空間的に密であるとはいえない。今回、神戸海洋気象台に保管されてきた1899年から1932年までの約400万通もの海上気象観測資料がデジタル化されたことにより、特に北太平洋域において、データが存在する格子海域の数を明らかに増大させた。これにより、20世紀初頭からの約100年間に渡るデータセットの作成が実現し、長期変動の解明に有用に活用されることが可能となった。しかしながら、COADSとKoMMeDS−NFを統合したデータセットを使用しても、各年の月によってはデータの欠測となる格子が依然として存在する。これらの欠測域の存在は、EOF解析などの長期変動を対象とした解析を行う場合には、時間的或いは空間的に内挿を施す必要があり、本研究においては冬季平均の時系列に対する解析に限定された。
 また、KoMMeDS−NFがカバーしない第二次世界大戦中のデータは、太平洋・大西洋を問わず依然として欠測域として残存しており、長期変動の解析を行う際にはこの期間のデータの処理に注意が必要である。
 
参考文献
 
Folland, C. K. and D. E. Parker (1995) : Correction of instrumental biases in historical sea surface temperature data, Q. J. R. Meteorol. Soc., 121, 319-367.
 
Mantua et al., (1997) :A Pacific interdecadal climate oscillation with impacts on salmon production. Bull. Am. Met. Soc., 76, 1069-1079.
 
Minobe S. (2000) : Spatio-Temporal Structure of the Pentadecadal Variability over the North Pacific, Progress in Oceanography, 47, 381-408.
 
Thompson, W. J. and J. M. Wallace (1998) : The Arctic Oscillation signature in the wintertime geopotential height and temperature fields, Geophys Res Lett., 25, 1297−1300.
 
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図1. 
緯度4x経度10の各格子において1989年から1932年の44年間に海面水温の月平均値データが存在する月の数の分布(a:COADSのみ、b:COADS+KoMMeDS−NF結合データセット)
 
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図2. 
COADS+KoMMeDS−NF結合データセットがCOADSのみより欠測格子点が改善された数の分布(1899年から1932年の44年間、緯度4x経度10格子の月平均データ)
 
図3: 
165 E−5 Nにおける海面水温の時系列(a:COADSのみ、b:COADS+KoMMeDS−NF結合データセット)
 
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図4. 
北太平洋のSST第2EOFモード(青線)と北大西洋のSST第1EOFモード(赤線)の時間関数(相関係数=0.82)
 
 
図5. 
北太平洋の海面水温に対する第2EOFモード(寄与率=15.7%)(a)と北大西洋の海面水温に対する第1EOFモード(寄与率=32.0%)(b)の空間分布







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