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2.5 まとめ
 日本における冷夏および旱魃と海面水温変動との関連性を調べるため、気象官署の夏季平均日最高気温データおよび夏季積算雨量と船舶気象観測データから作成した海面水温の月別季節別平均2°格子データを比較調査した。
 冷夏の指標として気象官署の夏季平均日最高気温データの経験的直交関数(EOF)の第1モードを用いて条件抽出法により冷夏年前後の月別海面水温偏差を求めた。またEOFと季節別海面水温との相関分布を求めた。北太平洋には有意水準95%で有意な水温偏差を示す海域があり、相関も有意にあることがわかった。前年9月では日本近海から北緯40°線に沿って日付変更線付近までの北西太平洋海域は正偏差、アラスカ南の北東太平洋は負偏差である。アラスカ南の負偏差は冬から春にかけて千島列島から日本近海に伸び、夏には日本は負偏差域に覆われることがわかった。
 同様に旱魃の指標として気象官署の夏季積算雨量データのEOF第1モードを用いて条件抽出法により旱魃年前後の月別海面水温偏差と、EOF第1モードと季節別海面水温との相関分布を求めた。旱魃と海面水温でも北太平洋には有意水準95%で有意な水温偏差を示す海域があり、相関も有意にあることがわかったが、冷夏ほど明瞭でなかった。
 
2.6 今後の課題
 冷夏と北太平洋の海面水温には何らかの関連があることが示唆された。これらの関連がどのような仕組みで発生するのか調査する必要がある。より詳細な時間・空間分解能で解析し、海面水温以外にも海面気圧・海上気温なども解析すると組織的な関係がわかるかもしれない。
 旱魃と海面水温には何らかの関連があることが示唆されるが、冷夏ほどはっきりしていない。また旱魃の指標として選択した全国的な降水量の指標と考えられるEOF第1モードの寄与率が0.333と低い。日本の降水量と海洋変動の関係はより局所的に解析する必要があるかもしれない。
 この調査で得られた結果は年々の変動における関連性である。より長期のスケールにおける関連性を解析する必要がある。
 
2.7 参考文献
力石國男、佐々木有子(1991):東北地方の異常気象と海面水温, 海と空 67, 97−l08
高井博司ら(1995):'93年ヤマセの冷気塊の移流に関する研究, 月刊海洋 28, 16−22







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