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3.1.3 地表面過程
 沿岸・内湾での海霧予測の実用化研究(平成13年度事業)では、地表面過程で土壌湿潤度を一定としていたため、降雨の有無とは関係なく、地表面の湿潤度が決定されていた。このため、降雨後の最下層大気への水分供給量が過小評価され、霧の発生を予報できなかった可能性がある。したがって、本研究では地表面過程を変更する。
 下表3.1.1に代表的な地表面過程のモデルとその概要・特徴を示す。
・代数的に求める方法や蒸発効率を使用する方法は、土地利用や降雨に関わらず湿潤度が決定されるため目的に合わない。
・蒸発効率を使用する方法は、土地利用によって湿潤度が変化するが降雨などの土壌変化を表現できない。
・強制復元法は、非常に乾燥した場合を表現することができないが、降雨などの日変化は表現することができる。
・地表面を数層に分けて計算する方法は、地表面2層以降の初期値を設定するのが非常に困難である。
 以上から、本研究では強制復元法を使用する。
 
表3.1.1 様々なモデルと地表面過程
  使用モデル メリット デメリット
地表面を数層に分けて計算 RAMS 各層ごとに温位と水分量の予報方程式を解く。 土壌の状態などを詳細に予報できる。 初期値を設定するのが困難。
強制復元法(FR) ARPS Deardorff(1978) (次節参照) 日変化や季節変化を考慮して湿潤度を予報できる。 非常に乾燥した場合などが表現できない。
蒸発効率を使用する ANEMOS qg=βqsat(Tg)+(1−β)
qk=1
土地利用別に水分量を診断的に求められる。 降雨や季節などによる土壌の変化が表現できない。
代数的に求める方法 RSM qg=qsat(Tg
qg=qk=1
煩雑な計算が必要ない。 土地利用や降雨・季節に関わらず決定される。
RAMS(Regional Atmospheric Modeling System):コロラド大学で開発された数値モデル
ARPS(Advanced Regional Prediction System):オクラホマ大学で開発された数値モデル
RSM(Regional Spectral model):気象庁で運用されている局地モデル 
 
 Deardorff(1978)の提案した強制復元法は以下の2式で表される。
 (3−14)は地表面が日変化する深さ(10cm)までの土壌湿潤度の予報式であり、(3−15)は季節変化する深さ(50cm)までの土壌湿潤度の予報式である。
 
   Eg 蒸発量
  P 降水
  Wg 地表面の湿潤度
  W2 土壌0〜d'2の平均湿潤度
  Wmax 流出の始まる湿潤度
 
 C1C2は無次元の値でC1は地表面の水フラックスが土壌に与える影響を決めるパラメータで、C2は水分量が平均値へ戻ろうとする速さである。J.Noilhan S.Planton(1988)は、土壌を26層に分けて予報するモデルからC1C2の関係式を解析的に導いた。以下にC1C2の関係式を示す。
 
   Wl 1.0e−30 土壌が飽和した場合のパラメータ
  Wk 飽和湿潤度
  C1sat、C2refb 土壌に依存するパラメータ
 
 C1sat、C2refb、Wkは土壌に依存する量である。J.Noilhan S.Planton(1988)は観測などから求めたパラメータを用いて様々な地表面過程で、良い結果を残した。
 本研究では、J.Noilhan S.Planton(1988)のパラメータを用いた。
 
 以上から求められた地表面湿潤度を使用して、ANEMOSの地表面過程を変更した。ANEMOSの地表面過程は(3−18)〜(3−24)式で表される。ANEMOSではWgが変更されるため、地表面への水分フラックスや潜熱・土壌比熱なども変化する。その結果、地表面温度や顕熱なども変化する。
 
ANEMOSの地表面過程
 
   Eg 蒸発量
  Rs 太陽放射
  R↓、R 長波下向き、上向き放射
  LE 潜熱
  H 頭熱
  T0 土壌深部の温度
  λs 土壌熱伝導率
  Cs 土壌の比熱







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