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3. ヨシ原
 淀川には、昔からたくさんのヨシが生えていて、ヨシの大群落(だいぐんらく)をつくってきました。ヨシ原には、ヨシ以外に、マコモ、カサスゲ、オギ、シロネなどの草や、ヤナギ、ハンノキなどの樹木もいっしょに生えています。これをヨシ群落といいます。
 
 ヨシは、水辺に生えるイネ科の植物です。タネができますが、ほとんどは、土の中に地下茎という茎を張り出して、春に、そこから芽を出し、夏には2m〜4mほどまで成長し、秋には穂(ほ)をつけます。冬には枯れてしまいますが、また春になると新しい芽が出てきます。
 
秋に穂をつけたヨシ
ヨシ(英語名reed:リード)
別名「アシ」といいますが、「悪し(あし)」に通じることから、「ヨシ」とよばれるようになったといわれています。
 淀川には、ふつうのヨシのほかに、セイタカヨシ、ツルヨシ、クサヨシなどが生えています。また、ススキの仲間のオギもたくさん生えています。
セイタカヨシ
 草丈2〜4m。陸の上に生える。
ヨシとはちがって、冬になっても枯れ(かれ)ません。
 葉先がたれず、上向きにのびることで、ヨシと区別できます。
 
ツルヨシ
 草丈1〜2m。ヨシとよくにていますが、株の根元から長いツルを出します。
 淀川本川ではあまり見られません。三川合流地で見られます。
 
クサヨシ
 草丈60〜150cm。水辺などしめった土地に群生します。
 葉の先に、細長い円すい形のあわい紫緑色の穂(ほ)が出ます。穂は、直立します。
 
オギ
 草丈1〜2.5m。
 川原など、しめった場所に生えます。
 ススキとよくにていますが、穂先(ほさき)にノギがなく、ススキよりも穂がふさふさしています。
 
◇たくさんの生きものがすむところです。
 ヨシ原には多くの鳥が生活しています。カイツブリやオオヨシキリは、ヨシ原に巣をつくります。カモは、波の強い日や敵(てき)が近づいた時にはヨシ原に隠れます。スズメやツバメもヨシ原をねぐらにします。
 ヨシ原には、魚のエサになるプランクトンが豊富(ほうふ)なので、たくさんの魚もすんでいます。フナ、コイ、モロコは、ヨシ原でたまごを生み、生活します。
 ヨシ原は、淀川にすむいきもののほとんどを見ることができる大切な場所です。
◇水をきれいにします。
 ヨシの茎(くき)には、空気を通す気道(きどう)があり、茎の中から土の中へ空気が流れます。
 ヨシの茎につく微生物(びせいぶつ)や土の中の微生物は、たくさんの酸素(さんそ)を使い、水中のよごれを分解(ぶんかい)し、それを栄養(えいよう)にして、ふえていきます。そして、川の水がきれいになります。
 また、ヨシは、大変成長が早いので、水中のチッ素やリンを養分としてたくさん吸収(きゅうしゅう)します。
◇人の生活に役立ちます。
 ヨシは、昔から世界中でいろいろに利用されてきました。
 外国では、ヨシの茎でつくったペンやヨシ舟があります。楽器のクラリネットや、オーボエの音を出す部分(リード)にもヨシが使われています。日本の伝統音楽である雅楽(ががく)の楽器「ひちりき」にも使われています。
 また、かやぶき屋根の材料やすだれやついたてに使われています。
 ヨシは、食材にも使われ、ヨシの根は漢方薬(かんぽうやく)になっていました。今でも、ヨシの葉は、チマキを巻くのに使われています。
 最近では、ヨシで紙をすいてつくった便せんやはがきやコースター、ヨシ笛やヨシ人形などの遊び道具もつくられています。また、草木染めの染料(せんりょう)や園芸用の腐葉土(ふようど)としても利用されています。
雅楽(ががく)の楽器「ひちりき」
 鵜殿(うどの)のヨシは、高さ5mもあり、太くて丈夫で、昔から「ひちりき」のろぜつ(リード:吹き口の音を出す部分)をつくるのに最適といわれ、大切にされてきました。
 
葺き屋根
 
ついたて
 近年、しゅんせつ工事や上流につくられたダムのために淀川の水位が下がり、ヨシが水につかることが少なくなり、ヨシ原が減ってきています。そして、ヨシにかわって、陸地に育つセイタカアワダチソウなどの帰化植物(きかしょくぶつ)(外国から持ち込まれた植物)がどんどんふえてきています。
 そこで、ヨシ原の中に水路をつくったり、ヨシを植えたりして、淀川の昔からの自然の風景を守り、淀川にすむ生きものにとって大切なヨシ原を守ろうとする活動がさかんになってきています。







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