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2. ワンド
 淀川には、ワンドとよばれるいろいろな大きさの入り江があります。
 
 明治時代のはじめに、淀川に蒸気船(じょうきせん)を通すための工事が、オランダ人技術者のデ・レイケの指導で行われました。
 工事は、ヨーロッパの新しい技術である「粗朶沈床工(そだちんしょうこう)」を使って行われました。
 木の小枝や下草をあんで積み重ねた上に大きな石をのせ、川の底にしずめて水制(すいせい)をつくり、川の水の流れの強さと方向をコントロールしました。
 この水制(すいせい)は、日本では、特に、「ケレップ水制(すいせい)」とよばれています。
 この水制(すいせい)に囲まれた所に土や砂がたまり、その上に水ぎわを好む(このむ)木や草がしげり、現在のワンドになりました。
粗朶(そだ)ってなに?
 粗朶(そだ)とは、里山(さとやま)から伐採(ばっさい)してきた、ナラ、クリ、カシなどの木の枝をたばねたものです。
粗朶沈床工(そだちんしょうこう)の模型(もけい)
 
 ワンドの中には、浅いところ、深いところ、流れのあるところ、よどみのあるところ、植物や石のあるところなど、いろいろな環境があります。
 水辺には、ヨシやマコモ、湿った(しめった)ところを好むサクラダテ・ヤナギダテ・ドクセリ・ミゾソバなど、水面には、ホテイアオイやボタンウキクサなどがただよっています。
 植物の豊富なワンドは、魚たちの絶好(ぜっこう)の生息地(せいそくち)で、ハスやワタカやゲンゴロウブナなど、たくさんの種類の魚がすんでいます。最近では、スジエビやタナゴの稚魚(ちぎょ)(子どもの魚)などを食べるブラックバスやブルーギルなどの外来魚(がいらいぎょ)(外国から入ってきた魚)がふえてきて問題になっています。
 また、ワンドやワンドの周辺のヨシ原では、多くの水鳥を見ることができます。
 
●ワンドの環墳と魚介類の生活場所
(拡大画面:51KB)
《ワンドにすむ生きもの》
【魚類】
イタセンパラ、オイカワ、コイ、ゼゼラ、ニゴイ、ハス、フナ、モツゴ、ワタカ、ヨシノボリ、ゲンゴロウブナなど
○外国から来た魚
タイリクバラタナゴ(中国大陸)
カムルチー(朝鮮半島〉
ブラックバス(北アメリカ)
ブルーギル(北アメリカ)
カダヤシ(北アメリカ)
タウナギ(東アジア)
【貝類】
二枚貝(イシガイ、ドブガイなど)
巻貝(まきがい)(ヒメタニシ、カワニナなど)
【その他の生きもの】
○スジエビ、テナガエビ
○アメンボ、イトトンボ、
○カヤネズミ、ハタネズミ
○アオダイショウ、ニホンアマガエル、トノサマガエル、イシガメ、クサガメ
 
 ワンドには、国の天然記念物になっている貴重(きちょう)な魚もすんでいます。
〔イタセンパラ〕
 イタセンパラは、淀川を代表する魚です。「たなご」の仲間で、10cmくらいの平たい体をしています。浅い沼や池を好み(このみ)、藻(も)などをエサとします。
 体の色は、淡い青色で腹の部分が銀白色です。
 秋のたまごを産む(うむ)季節になると、オスの体は赤紫色(あかむらさきいろ)に変わります。メスは、イシガイやドブガイなどの二枚貝の中にたまごを産むというめずらしい習性(しゅうせい)をもっています。
 たまごからかえった子どもの魚は、貝に守られて冬をすごし、5月ごろに貝から出てきます。
 イタセンパラは、富山平野(とやまへいや)・濃尾平野(のうびへいや)・淀川水系(よどがわすいけい)の3地域に生息していましたが、すみかが減って、今では絶滅(ぜつめつ)が心配される希少性生物(きしょうせいせいぶつ)になっています。
 
イシガイ
 
カラスガイ
〔アユモドキ〕
 アユモドキは、姿や形がアユに似ていますが、ドジョウの仲間の淡水魚(たんすいぎょ)です。口先に6本のヒゲがあり、水の中の昆虫などを食べます。大きさは、10cmから20cm。
 きれいな水が好きな魚で、淀川と岡山県内の川にすんでいましたが、今ではほとんど姿を見かけなくなっています。







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