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4)「地球深部探査船」の概要
 本船は、世界初のライザー掘削船で、全長210m、幅38m、深さ16.2m、排水量約60,000トン、最大搭載人員150名といった極めて大きな船であるとともに、船体のほぼ中心部には、デッキからの高さが実に63.5mもあるデリックと呼ばれるヤグラがそびえ立っています。なおライザー掘削とは、ドリルパイプの外側にライザー管という掘削船と掘削孔の間を繋ぐ管を設けたもので、以下のような特徴を持っています。
 
1. 軟弱地層の大深度掘削
 孔壁を強化する機能のある泥水を循環させることで掘削孔を安定化し、大深度までの掘削を可能にします。
 
2. 噴出防止
 噴出防止装置によって炭化水素が存在する海域での噴出や海洋汚染の防止ができ、しかもこれまで掘削が制限されていた科学的に重要な海域での堀削を可能にします。
 
3. 掘削の効率化
 泥水中の掘削屑を分析しながら掘削するため、常に最適なビット(掘削ドリルの先端部)を使用して、効率よく掘削することができます。また、泥水特有の大きな粘性によって、掘削屑を効率的に孔底から排除できるので、掘削効率が上がります。
 
4. 掘削孔の長期安定化
 ライザー管を利用して海底下深部まで効率よくケージング(孔が崩れないようにするためのパイプ)を挿入することができ、その孔を利用した長期にわたる孔内計測が可能となります。
 
5. ドリルパイプ長の延伸
 ライザー管は、海底と船との間で引っ張り力が加わった状態にあるため、中を通るドリルパイプは、余分な曲げを受けることがなく、その分、ドリルパイプ長を延伸できます。試算では、ライザー管を使用しない従来のライザーレス堀削では、ドリルパイプの延伸は約9,000mが限度であるのに対し、ライザー掘削では、マントルに到達することのできる約11,000mまで延伸することが可能となります。
 
 
堆積物に含まれる微化石
 
科学掘削船(JOIDES Resolution号の研究室)
 
半裁されたコアの断面写真
 
地球深部探査船「ちきゅう」基本設計の概要
主要寸法  喫水と排水量  搭載人員
船体全長 210m
38m
深さ 16.2m
喫水 9.2m
満載排水量 約60,000トン
最大搭載人員 150名
 
 
(拡大画面:86KB)
 
測位システム
衛星測位システム 深海掘削を行う場合、海上での掘削船の位置を正確に把握する必要があります。船の位置を知る方法としては原理的にはカーナビと同様、衛星からの位置信号が用いられます。陸上基準局からのデータを用いて位置の補正ができる場合、1〜5mの精度で測位が可能となります。これが不可能な場合でも、16mの精度で船の位置を割り出します。
音響測位システム 衛星測位装置のバックアップとして音響測位装置を採用しています。海底に設置したトランスポンダと本船との間で、音響信号の送受を行い、本船の位置を算出します。複数のトランスポンダを用いるLBL方式の場合、30mの精度で測位が可能です。
 
自動定点保持システム
自動船位保持装置
  測位装置からの位置・方位情報及び風向風速データ等を基に、360度回転するアジマススラスターと呼ばれる6台の推進装置を制御し、本船を自動的に所定の位置及び方位に維持します。また、ライザーの傾きを最小にするように制御する機能も備えています。
 







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