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海洋科学技術研修テキスト

 事業名 マリンサイエンス・スクール事業
 団体名 海洋研究開発機構 注目度注目度5


海洋深層水
 海の深いところに存在する海水(海洋深層水:以下深層水と略す)の資源的な特性が注目されています。そして、水産分野、エネルギー分野、有用物質の生産、地域経済活性化のための製品開発など、いろいろな方面に深層水を利用しようとする試験研究が行われ、その有効性が実証されつつあります。
 
(1)深層水の分布と水質特性
 深層水とは、海洋学的に定義づけられた語ではありませんが、海の植物の光合成に必要な太陽光が届かない深さの海水を指しています。海域によって、その深さに違いがありますが、一般には水深200mより深い海水を深層水と呼んでいます。海洋は、地球表面積の約7割を占め、その平均水深は、3800mであるといわれることから、全海水量の約95%が深層水であるということができます。
 この深層水には、私たちが日常接している海水、いわゆる表層水に比べると、清浄性、低水温性、富栄養性、安定性などの優れた水質特性がみられます。
 
(2)深層水の生成と循環
 太陽光をエネルギー源として、光合成、食物連鎖、沈降、分解、湧昇などを通した物質循環系の中で深層水の特性が生成されます。
 
(3)海洋資源としての深層水
 深層水の清浄性は、水産動植物の優れた飼育・培養水として、低水温性は、飼育・培養水の水温制御やエアコンなどのエネルギー源の冷媒として、富栄養性は、有用な微細藻類や海藻の育成用肥料として活用することができます。換言すれば、深層水は私たちが必要とする多くの資源的な価値を持っており、クリーンで再生・循環する大規模な海洋資源としても期待されています。
 
(4)わが国における研究の経緯と現状
 1976年に当センターが基礎研究に着手し、その後1986年からは「海洋深層資源の開発に関する研究」が5ケ年計画で開始されました。そして、陸上型及び洋上型の深層水利用技術、特に水産分野や海域の肥沃化に関する研究開発が、当センターと水産庁日本海区水産研究所を中心とする多数の研究機関により、高知県及び富山県の支援のもとにそれぞれ行われました。この研究で、陸上型の深層水取水装置を核にして、1989年4月、高知県によってわが国初の海洋深層水研究所が設立されました。また、1995年3月には、富山県も水産庁や(社)マリノフォーラム21の協力のもとに陸上型の深層水利用実験施設が建設されました。
 現在は、これらの施設を拠点として水産分野、エネルギー分野などへの深層水利用のための研究が産学官の研究機関により進められています。また、高知県では、1995年10月から、地元や民間への深層水の分水が開始されました。その結果、これを使った清酒、ドリンク、水産干物などの製品開発が盛んに進められ、県外からは天然塩製造、化粧品関連などの企業の進出も決定されており、地域振興への波及効果が現れ始めてきています。現在では沖縄県、静岡県及び神奈川県などにも関連施設が建設されるなど全国へ波及しつつあります。ここでは、特に水産分野に関連した深層水の利用研究について紹介します。
 
深層水有効利用技術の研究開発
 
1)水産分野への深層水利用
 植物プランクトン、海藻類、貝類、魚類などの培養・飼育試験が行われ、冷水性生物、深海性生物などの新たな飼育培養手法が確立されつつあり、健康な親魚養成、周年安定飼育(疾病防止、生存率の向上など)への応用が期待されています。また生物飼育用の水温制御技術など省エネルギー・低コストの水産支援技術も開発されつつあります。
 
(1)植物プランクトンの培養
 珪藻類、緑藻類、紅藻類、プラシノ藻類などの微細藻類の増殖、浮遊性や付着性の珪藻類の安定した連続培養、希釈速度による珪藻類の収量密度や細胞粒径の制御試験。
 
(2)海藻の培養
 大型海藻類の水槽培養や暖海域の高地における冷水性のマコンブの培養試験。
 
(3)冷水性生物の飼育
 大西洋のサケとギンザケおよびサクラマスの暖海域の高知での水槽飼育(図1)やサクラマス親魚による種卵の安定生産試験。
 
(4)深海性生物の飼育
 深海性魚類であるメダイの飼育実験。
 
(5)その他の生物の飼育
 ヒラメの越夏飼育およびアワビ、アカウニなどの幼・稚仔の生存率の向上試験(図2)。
 
(6)生物飼育のための水温制御技術
 深層水の低水温や深・表層水の温度差を利用し、生物飼育の水温を制御する技術試験。
 
(7)水産生物飼育への表層水の多段利用
 深層水の資源的価値を無駄なく有効に利用する多段利用システムの研究開発。
 
 
 
2)今後の方向
 深層水は、表層水に比べて多くの優れた性質を持ち、資源的にも高い価値を持っています。しかし、地質学的な生成過程のなかで産生される化石燃料などの高密度・高品位の資源に比べると低密度・低品位であるといわざるを得ません。したがって、深層水資源を実用的なものにするためには、その低密度のエネルギーや低品位の物質をいかに上手に回収し、利用するか、といった手段や技術を確立するかが重要な鍵となります。
 その可能性として、一つは、低密度・低品位の自然環境で効率的なエネルギー交換や物質転換を行っている生物機能(光合成、代謝など)を活用することです。先に述べたように、深層水の資源的特性は、水産生物の生産(生物機能の活用)に対して特に効果的なことが判明していることから、生物生産分野における実用化の見通しが高まっています。もう一つは、図3に示すような深層水の資源性を無駄なく回収・利用する多段利用システム(カスケード利用システム)を構築することです。
 
図1
 
図2
 
図3 深層水の多段利用システム(カスケード利用システム)
 
 我が国では、39都道府県が海に隣接しており、そのうち海岸から5km以内に500mの以上の水深を有する自治体は、16存在します。この点からみても、我が国は、深層水利用の立地条件に恵まれた環境にあるといえます。
 
 
深層水を利用した各種の商品







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