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地震の巣を探る
(1)地球とその海底
 
(1)地球の構造
 太陽系の惑星は、主に固体から成る地球型惑星とガスが大きな割合を占める木星型惑星とに分かれます。地球型は、外側に主として岩石から成るマントルと内側に金属から成る核をもっています。地球では、さらにマントルの外側にごく薄い地殻を持つ三層構造をしており、その構造は、ちょうど卵のようになっています。
 
(2)熱的に生きている地球
 月などの小さな地球型の天体は、すでに内部も冷えて固まっていますが、地球や金星では、形成時からのエネルギーがまだ内部に残っており、内部の核にまだ溶けている部分があります。そのため、地球内部から外部に向けて絶えず熱の放出が起こっているのです。
 地球の場合、この熱は、各の外側にある“固体”であるマントルに、一億年以上かけて1回まわる、といったゆっくりした対流によって地球の外に運ばれます。この対流の地球表面での出口では、その熱によって火山活動が起こり、新たな硬い岩石から成る“表面地殻”が形成されます。
 
(3)地球全体の7割を占める海洋底
 地殻は、この対流によって更新される海洋性地殻と表面に殆ど止まる大陸性地殻とに分けられます。大陸性地殻は、海洋性地殻より軽い岩石が分離したもので、ちょうど海洋性地殻の上に浮いているような構造をしています。そして、地球表面が固まった後からのものが残っており、その最も古いものは、約40億年もかかって形成されたといわれます。
 一方、海洋性地殻は、常に更新されるため、最も古いものでも約1億年5千万年程度にすぎません。これが地球表面の7割を占めており、すべてが海に覆われています。
 
(4)地球表面の更新とプレートテクトニクス
 海洋性地殻には、その上に大陸性地殻を乗せたものと、そうでないものがあります。また、マントル内の対流において、流れないで固まり、マントルの表面を覆う部分があります。それは、地殻とすぐ下のマントルの最上部から成り立っており、プレートと呼ばれます。このプレートは、地球の表面に14枚存在し、マントル層の上を年間1〜10cm程度の速度で移動しています。
 
破線はプレートのおおよその境を示す。ローマ字はプレートの略語。
AF:アフリカプレート、AN:南極プレート、AR:アラビアプレート、AU:オーストラリアプレート、CA:カリブプレート、CO:ココスプレート、EU:ユーラシアプレート、NA:北アメリカプレート、NZ:ナスカプレート、PA:太平洋プレート、PH:フィリピン海プレート、SA:南アメリカプレート
 
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(1)千島・カムチャッカ海溝 (2)日本海溝 (3)伊豆・小笠原海溝 (4)マリアナ海溝 (5)ヤップ(西カロリン)海溝 (6)パラオ海溝 (7)南西諸島(琉球)海溝 (8)フィリピン海溝 (9)トンガ海溝 (10)ケルマデック海溝 (11)アリューシャン海溝 (12)中米海溝 (13)ペルー海溝 (14)チリ海溝 (15)ジャワ(インドネシア)海溝 (16)南西インド洋海嶺 (17)南東インド洋海嶺 (18)東太平洋海膨 (19)大西洋中央海嶺
 
 これらのプレートは、お互いに別の動きをしており、離れたり、衝突したりする部分があります。この離れる部分では、地球内部に対流によるマントルの噴き出し口となり、海底に長く連なる大山脈、すなわち“中央海嶺”が形成されます。一方、プレートが衝突する場所では、軽い大陸性地殻をもつプレートの下に、重い大陸性地殻が潜り込む現象が起こり、このような場所では、長い溝、すなわち“海溝”が形成されます。このようにして海溝で潜り込んだプレートは、マントルの対流に乗ってそのまま地球内部に戻っていくことになります。なお、プレートが沈み込む場所を“沈み込み帯”と呼びます。これら一連のプレートによる地球表面での現象を説明する説を“プレートテクトニクス”といいます。
 
(2)有人潜水船で観た深海底の様子
 
(1)深海底の大地形
 中央海嶺、海溝、島孤、背孤海盆、海山、深海平原など地球表面で起こる地震や火山噴火は、プレートが相互に接触するために起こります。これらが発生する場所は、中央海嶺と海溝の周辺ですが、その殆どが海底にあるため、直接観察するのは困難です。
 
(2)中央海嶺の様子
 中央海嶺の表面は、(玄武岩質を主とする)新しい溶岩によって形成されていますが、その多くは枕のような形をしていることから“枕状溶岩”と呼ばれています。
 これは、火山が噴火した際に海底に噴出した溶岩の表面が海水によって急速に冷却されることによってできます。また海底には、熱水の噴出が観られますが、これは、海水が岩石の中に浸透してゆき、マグマによって熱せられると同時に、マグマから金属元素などを溶かし込んで、熱水となって噴出する現象です。熱水の中に重金属を含み、それが周囲の海水で急激に冷やされて黒い結晶となると、あたかも黒煙が噴き出しているように見えるため、これを「ブラックスモーカー」と呼んでいます。これに対し、熱水の中に多量の硫酸化物を含み、それが冷やされて結晶化して白く見えるものを「ホワイトスモーカー」と呼んでいます。これらが噴出する勢いは、熱水の温度が高い方が浮力が大きいために勢いよく噴出します。また、一般的には黒煙を噴出する熱水の方が温度が高い(約300℃以上)傾向があります。そして、これらの噴出口の周囲は、海水で冷やされた沈殿物が煙突状の形をしているため、これを「チムニー」と呼んでいます。
 
ブラックスモーカーとチムニー
 
しんかい2000で撮影された枕状溶岩
 
(3)海溝の様子
 海溝のできる様子については、先に述べましたが、それによってできた海溝の長さは、実に約11000mにも達します。海溝では、プレートが潜り込む時に大陸性地殻のプレートの表面に多くの断層が生じ、その時に大きな地震が起こり、津波が発生したりします。
 
海底地形とプレートの動き
 
(4)深海平原など
 実際の深海は、大半が極めて変化に乏しく、例えば陸上では、岩石等は“風化”“浸食”“運搬”“堆積”という4つの作用によって運び去られますが、海底では温度が一定で風化を受けにくく、また水の流れは、運搬は行うものの浸食は殆ど行われません。そのため深海平原は、何千万年におよび静かであることが多く、深海底に眠るマンガンノジュールは、極めて長い年月をかけて成長するのです(1cm成長するのに百万年かかるといわれています)。







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