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5.2 平成14年度の油排出管理分科会
(1)第1回委員会(平成14年4月18日開催)
(イ)第45回船舶の設計、設備小委員会(DE.45)(平成14年3月開催)の報告
 提出資料をもとに、DE小委員会の出席者から会議の模様について、報告を受けた。その主要点は、以下のとおりである。
a. 我が国が提案した「統合ビルジ処理システム(IBTS)」
 決議:MEPC.60(33)見直し案の要件を満たすための、油水分離器の大きさは、相当大型の装置となるので、小型船ではIBTSが好ましいとの多くの賛意を得た。
b. MEPC.60(33)の見直し
・15ppm油水分離器に、非常用手動操作機構ではなく、フェールセーフ機構の設置が義務化された。
・記録装置の封印の問題は、さらに検討を継続することとなった。
・15ppm警報装置の記録を3年間保持する方法については、決定を見なかった。
 なお、油分濃度計の精度点検を製造者の認定した者とすることについては、代理店を含むことにより、製造者側で対応できることが確認された。
・試験流体の仕様及び試験仕様は、次回までの継続審議とした。
・15ppm警報装置の封印に関連する諸問題(装置の不調に起因する15ppm超の油分を含む、ビルジを船外排出した際の責任の所在。装置の封印をどの部分にするのかで、乗組員の保守、整備に影響が出る。)が討議された。我が国は、この問題に関連して、さらに明確にすべき点を以下のように指摘した。
(1)400G/T以上1万G/T未満の船舶に対しても、15ppm警報装置が義務付けられるのか。
(2)フェールセーフ機構とは、動力源が喪失したときに、ビルジの船外排出が自動停止する機構であれば、要件を満たすのか。
c. IBTSの提案
 各国から「IBTS」の詳細について、多くの関心が示された。
(ロ)委員会の対応
a. 15ppm油水分離器
 試験流体Cに混入する物質の成分及び汚損の深刻な実船ビルジに対応した装置と試験仕様を検討する。
b. IBTSの承認基準及び方法を検討する。
c. 海洋環境保護委員会回章:第235号「船舶の機関室の油性廃物処理システムに関する指針」(平成2年12月13日)の見直しをIBTSの関連において、検討する。
d. 決議:MEPC.60(33)及び同A.586(14)の見直し
 現存装置に対する追加的措置の必要性及び見直し案に対応し得る装置製作の可能性について、性能面及び経済面の双方から検討する。
 
(2)第2回委員会(平成14年8月27日開催)
(イ)DE.46への対応
a. IBTS
 最近10年間に建造された船舶のうち、400G/T以上1万G/T未満の近海資格船に設置された、IBTS概念の装置の状況を検討した。これらの大部分の船舶では、水と油が混合しないような設備を導入している。最初の設計段階からIBTSを考慮すれば、特段の問題のないことを提示する。
b. 海洋環境保護委員会回章:第235号(MEPC/Circ.235)
 見直し作業と分担及びDE小委員会における質疑応答の取りまとめは、事務局が行うこととした。
c. 決議:MEPC.60(33)の見直し
・自動遮断機能装置の義務化
 400G/T以上1万G/T未満の船舶に、自動遮断機能装置を義務化した場合、装置およびその設置費用、設置場所の余積及び乗組員の熟練度に問題のあることが挙げられる。これらの問題を念頭に、DE小委員会への対応を図ることとした。
・試験流体C
 試験流体Cに対する実器試験規模での攪拌方法及び実船ビルジの現状についての知見を得るため、実態調査を行うこととした。これらの調査結果は、DE小委員会に提出し見直し案に反映させる。
・15ppm警報装置の封印
 乗組員の保守、点検に影響を及ぼさないことを考慮に入れて、封印部分を検討するようDE小委員会に提案する。これに関連して、15ppm警報装置の較正方法について国内外製品を対象に調査する。
d. 決議:A.586(14)の見直し
 DE小委員会の報告書が未入手のため、来着を待って検討することとした。
 
(3)第3回委員会(平成14年11月13日開催)
(イ)決議:MEPC.60(33)の見直し
a. 15ppm警報装置の封印
 見直し案に示される封印の箇所は、装置全体ではなく、「不可欠な制御部分」及び「再較正部分」としている。乗組員が行う保守、整備箇所は含まれないと理解されるとする製造者側の調査結果を了承した。また現在の装置は、ゼロ点調整及び感度調整を必要としない製品が大部分であるとの説明があった。これにより、使用者側が懸念する問題は、解消されたが、なお異常な排出があった場合の責任の所在が、不透明のまま残された。この問題は、技術的問題としてではなく、法的問題として検討されるべきものと考える。
b. 試験流体Cの調製方法
 実用試験規模での、試験流体Cの調製方法を実験研究した。試験項目は、安定した乳化流体を得ることに、影響する要因を選択し、それらの組み合わせを変えて、実験することとした。実験研究結果より、以下のような知見が得られた。
・循環ポンプの容量とタンク液量との関係
・循環配管系とタンク内開口部の位置
・循環ポンプ(旋転式)の必要最低回転数
・最低攪拌時間
・塩化ナトリュウムの乳化に対する影響(試験流体は浄水で調製する。)
・燃料油の混入方法
 これらの結果は15ppmビルジセパレータの型式承認のための試験液の仕様及び試験手順に関するコメントとしてDE.46へ提出した。(DE.46/4/3)
 
(ロ)決議:A.586(14)の見直し
 第45回DE小委員会での配布資料をもとに、見直し案への対応を検討し、以下のように確認した。
・見直しの大枠
 油排出監視制御装置は、150G/T以上4000G/T未満船と4000G/T以上船とでA類とB類に区分されている。これを単一区分のものとするなど、6項目を見直しの対象とする。
・決議の適用
 見直しによる決議の適用は、新造タンカーとする。
・油排出監視制御装置の性能仕様
 15ppm警報装置と整合性のあるものとする。
・油排出監視制御装置の試験仕様
 油タンカーの積荷の特性を考慮して、独自のものとする。
(ハ)実船のビルジ採取による実態調査
 各種船舶40隻の機関室ビルジ溜、または油水分離器入口からビルジを採取して、成分分析を行った。
 エマルジョン含有量は、サンプル中のエマルジョン化していない浮遊油を取り除いた後、MEPC.60(33)に基づきCCl4抽出分析によって測定された。エマルジョンの平均的含有量は50ppm、最大含有量は300ppm、最小含有量は1ppmであった。
 殆どの場合、エマルジョン化していない油(浮遊油)で、SS(懸濁物)が見つかった。SSの量は、採取されたサンプルの場所に依存して様々であり、ビルジセパレータ入口から採取したものより、ビルジ溜りからのサンプルから、より多く観測された。これに関連して、ビルジ溜りのサンプルの値は、ビルジセパレータに水を供給することを考慮すると切り捨てられる。平均SS含有量はビルジセパレータの注入口から摂ったサンプルにおいては58mg/lで、試験流液Cに対してのSSの指定量は提案された100mg/l以内であって満足している。これらの試験結果をDE.46へ提出した(DE.46/4/3)。
 
(ニ)統合ビルジ処理システム(IBTS)
 我が国提案の「IBTS」の承認基準及び試験方法の検討を推進する。この検討のために行う調査研究の成果は、海洋環境保護委員会回章:第235号の見直しにも、資することにも、配慮することとした文書をDE.46へ提出した(DE.46/4/4)。
 
(4)第4回委員会(平成15年2月20日開催)
(イ)DE.46小委員会への対応
 決議:MEPC.60(33)及び同A.586(14)の見直し案に対して、ドイツ、国際海運会議所(ICS)及び我が国からの提案文書があった。このためドイツ及びICSの提案の要点を審議し、見直し案への対応を検討した。
a. 型式承認試験に用いる試験流体
 試験流体の仕様は、A、B及びCの3種の油水混合物とし、A、Bについては、油の種類をISO.8217−DMA、同−RMF25またはRMG35とし、CについてはAとBの混合物を界面活性剤により乳化流体としたものである。
 RMFとRMGの選択は、いずれでも可とした。
b. 型式承認試験の仕様
 型式承認試験の仕様において、A、B及びC試験流体のそれぞれの混合流体を用いることの提案がある。一方、我が国からも試験仕様に対して提案しているので、この提案に沿って対応することとした。
c. 15ppm警報装置の改ざん防止のための封印
 封印すべき「必要不可欠の主要制御部」と「封印を解く」ことが求められるときの要件を明確化すべきとの提案がある。修文後の見直し案は、これを支持することとした。
d. 総合ビルジ処理システム(IBTS)
 IBTSは、機関室ビルジによる海洋汚染を完全に防止することを目途とした船内設備である。この設備は、我が国の多くの船舶が導入し、既に効果的な実績を挙げているものである。この設備を導入することに関連して、MEPC/Circ.235「船舶の機関室の油性廃物処理システムに関する指針」の見直しが必要になる。今後のDE小委員会における審議資料とするため、我が国での研究方針と計画を提示した。
e. その他
 15ppm警報装置の呼称の変更、見直し案の示す記述内容の明確化のための修文及び試験設備の構成要素の加除訂正等の提案がある。これらは、決議の内容に重大な影響を及ぼすほどのものでないことから、具体的な対案の検討は省略し、提案の認識に止めた。







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