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セッション II
HIV/AIDSに関するアジア太平洋、CIS地域における政治的コミットメント
 
1、シリ・テイラー UNFPA中国駐在代表
 HIV/AIDSは国連安全保障理事会で取り上げられた初めての疾病である。また、一つの疾病をめぐって国連としてはじめて共同プログラムが行なわれている。同じ時期にエイズの発症を確認した国々の中でエイズに対する対応がとられなかった国は三五%の感染率になっているのに対し。対策が取られてきた国では三%程度にとどめることができた。
 エイズを予防しその被害を食い止めるためには適切な対策ができるだけ早くとられることが必要。目に見える指導者のコミットが必要不可欠。行政の関与、厚生省だけではなくセクター横断的な対応、総合的な動員が必要である。
 国会議員役割は明確。いち早く、はっきりとした意思表示を行なうことができる。医療関係者だけに任せてはいけない。農水省、家族計画省など省庁横断的で総合的な対策が必要。
 UNFPAの貢献は大きなものがある。UNFPAはこれまで継続的にセンシティブなテーマを扱ってきた。人口もかつてはセンシティブな問題と受け止められていた。いまでは様々な努力によりかなりオープンに議論をすることができるようになった。
 HIV/AIDS感染者の半分は若者であり、具体的な蔓延予防策としては、コンドームの供給が重要。HIV/AIDS問題は内容的にもセンシティブであるがUNFPAはセンシティブな問題を扱いそれに対処してきた経験がある。その意味でHIV/AIDS予防に関しても有効な役割を果たし得る。来週にはワークショップを開催し、緊急時においてリプロダクティブヘルス、HIV/AIDS資材の確保をテーマにした討議を行う予定である。
 
2、トニー・ベイツ UNAIDSバンコク
アジアのエイズは“沈黙の時期”
 アジアのエイズはまだ早期の段階であり、まだ沈黙の時期といえる。アフリカ南部ほどの状況ではない。その結果、政策として積極的に議論されていない。しかしエイズの問題で自国は別だといえる国はない。アジアでも局地的に深刻な状況となっている。エイズの罹患率は麻薬常習者や性労働者、軍隊で高い。今はそれほどでないとしても、いずれ流行する。沈黙の時期である、いま努力することで大きな成果を上げることができる。HIV/AIDSは医療の問題だけではない。
 アジアでもタイやカンボジアで成功事例をみることができる。しかし現在タイではその成功によって自己満足が生じ、安心感が広がっているが、その手綱を緩めることはできない。
 エイズが発見されてから、これまで六千二百万人がAIDSに感染し、現在四千万人が生存している。二〇〇一年にはアジア・太平洋地域で六百六十万人感染者がおり、昨年あらたに百万人が感染した。新規感染者は二十五歳未満に多く、今後深刻な影響を与えることになる。世界中でエイズ感染が加速してきている。サハラ以南のアフリカを例外として世界の各地域の中でアジアのAIDS感染者数は多い。
 アジアのエイズ感染者数は近い将来サハラ以南を越える。HIV陽性の九五%は自覚していない。これがエイズ予防の難しさにつながっている。エイズ治療には抗レトロウイルス剤による治療が重要であるが、アジア太平洋地域でこの治療を受けているのはわずか三万人以下でしかない。
 私達がエイズ予防に対する行動をとらなかった無作為の場合、どのような結果が生まれるのだろうか。それは(1)社会の不安定化、生産性の減少、(2)地域の不安定化−軍人罹患率はその他のグループより高い、(3)開発成果を相殺してしまう−ミレニアム開発目標を達成することができない、(4)経済的なコストが対策を講じた場合に比べ、はるかに増大する。
 エイズは予防し得る病気であり、対策が必要とされる集中したグループに何もしなかったら、対策を十分講じた場合の三倍以上の費用がかかることになる。
 エイズ対策はできるだけ早い時期に十分行えば行うほど、コストを抑えることができ大きな意味を持つ。
 タイの状況を事例として考えてみる。タイでは八〇年代に患者がはじめて発見され、九〇年代に積極的な対策を講じた。もし、九〇年代の時点で、何もしなければ数約百万、場合によっては千万人が影響を受けていたと考えられる。
 新しい推計値では二〇一〇年には五千万から七千五百万人が感染者となると考えられている。中国、インド、ナイジェリアなどでは感染者が三倍に増えると考えられる。
 現在、HIV/AIDSに対する取り組みとしてはAPLF(アジア太平洋指導者研修)がある。このAPLFは政府高官をターゲットとした研修の場を与えており、財務省、文部科学省、法務省の局長など、直接的かかわりを持たない省庁の高級官僚にHIV/AIDSの意味やその社会・経済に与える影響を啓発することで、省庁横断的な総合対策を取れる環境を作ろうとするものである。このAPLFを二〇〇三年までに国家戦略の中に明確に組み込む事が必要である。このHIV/AIDS蔓延を防止する上において市民社会との連携がきわめて重要であり、さらにHIV/AIDSの感染者とのつながりを持つことも重要となる。具体的な対策としては次の7つが挙げられる。
1、積極的な政策、法制化、
2、開発政策へ組み込む、正式におりこむ。
3、資金配分を増加させることができる。
4、セクター横断的なプログラムが必要。
5、質の高いサービスを担保する必要がある。
6、この問題を自分の問題として取り組む。
7、待つ時間はない、今こそ行動をとるべきである。
 
 連帯を示すため、コミットメントの証として赤いリボンをつけてほしい。
 
3、ホアン・フラビエ 上院議員(フィリピン)
 フィリピンの経験を話す。HIV/AIDSが流行し始めたとき、非常に限られた情報しかなかった。かつては、アフリカの風土病である、また同性愛者だけに感染する病気である、不治の病である等の情報が流れた。これら無知に基づく情報の不足が状況を悪化させた。
 エイズ流行当初はこの病気に対する情報が非常に限られ、感染経路も不明であり、対策をとることはできなかった。
 対策をとらなければならないとはいっても、政府関係者の中にはエイズという病気そのものが不明な点が多く、具体的な影響もわからない。そのような中で政府として具体的な対策をとることはできないという反論があった。
 このように余りにも多くのことがわからない中で、エイズ感染者を隔離することができるのか、政府内部でも多くの問題点があった。
 まず、エイズの感染を確定するためには検査を行なわなければならないが、政府にとってもそのエイズの脅威をどのように受け取るべきかの判定が不明でだったのである。自分が保健長官(大臣)に就任した時点では専門家と一般のギャップが非常に大きかった。この当時、一般国民はエイズという病気について国民の一〇%しか知らなかったのである。
 エイズ予防として、国民にコンドームの使用を薦めた。この普及に際し、エイズ感染者が勇気を出し、自分が感染者であることを公表し、政府に対しても協力してくれたことにより、国民に対しエイズがどのような病気であるのかについて具体的に理解してもらう上で大きな影響があった。エイズ感染者は感染経路についても語ってくれた。悲しい話であった。当時はエイズそのものが科学的に理解されていなかった。具体的なエイズの対策としては、
a、SEXをつつしむ。
b、セックスのパートナーを特定の人に限定する。不特定多数を相手とすることはリスクを極端に大きくする。
c、コンドームの使用を薦める。注意する。
d、感染血液。輸入しない。
等の方策が考えられる。
 しかし、コンドームの使用に対して、キリスト教会から反発があった。キリスト教会はエイズを利用して家族計画を進めようとしているのではないかと警戒されたのである。
 しかし、民衆の間にエイズに対する理解が深まっていき、エイズ対策の成果に対して無知に対する光を与えたとしてコンドームで作った花束を受け取った。
 問題解決へのきっかけがつかめたのである。エイズ対策を行う際には人々の関心を高めることが重要である。
 いまフィリピンはエイズに国を挙げて取り組んでいる。フィリピン国家エイズ協議会を設立し、一九九八年二月には共和国法八五〇五で国民に対するエイズ検査を義務化した。これは現在エイズ対策法と呼ばれている。
 自身が上院に参加した理由は保健長官を止めても、政府の政策が継続して実施される環境を作りたかったからである。教会が反対したために残念ながらトップ当選することはできなかった。しかし全国で五位当選することができた。
 エイズ対策法が成立したことで、「全国的な教育による知識の普及」、「感染者の人権保護」、「最大の安全対策として警告を発する」などの対策を実施できるようになった。またエイズを撲滅する上では、「貧困」、「麻薬」、「無知」の撲滅が重要である。
 また、一般的な市民に対し、啓発を行う上で感染者の役割にも非常に重要なものがあった。現在、エイズ予防法の中で、安全な処置が義務づけられている。治療や輸血、移植の際にエイズ検査が義務化された。その規定を無視して感染を招いた場合には懲罰を既定し、六年から十二年の懲役が課されることになった。そのほかにも罰金や医療資格停止などの措置がとられることになったのである。
 同時に、エイズ法でHIV感染が労働条件に影響をあたえてはいけないとなっている。検査をしてもその結果は本人にだけ告知され、感染した患者の匿名を許すことにした。このことは検査の前に説明され、検査の後の治療も保健省が公費で責任を持つ事を明確にした。保険がHIV患者にも提供され、性行為による感染者に関しても人権保護がはっきりと唄われた。
 学校や病院にもこの考え方が適用される。エイズ患者が差別されることがあってはならない。差別した場合、懲役四年またはそれ以上の罰則を設けた。重要なことは、基本的に安全な環境を作る事が重要であり、さらに検査を受けることを忌避されない環境を作ることに焦点を置いて実施した。
 どのような問題も協力しあうことで解決に向けることができる。現在の課題は、地方政府レベルでいかに実施するか、そのプログラムをいかに機能させるかが重要な問題となっている。
 
―これはブラック・ユーモアです―
 
 国連人口基金に対するアメリカの拠出が停止されたが、これは最悪のニュースである。いま手綱を緩めることは出来ないのである。世界一の大国であるアメリカの拠出がストップした。世界一の人口大国である中国の江沢民主席がこれは悪いニュースである、この世には神はいないと嘆いた。
 フィリピンの神様はがっかりし、もうこの世の中は終わらせよう、一週間あればこの世の中を終わらせることができるといった。それを聞いた第三世界のフィリピンの大統領は、グローバルなグッドニュースである。フィリピンがアメリカ、中国と肩を並べて世界的な影響力をもったと喜んだのです。その後、一週間で地球人類が死に絶え、AIDSが消えてしまったのです。
 二〇〇四年にエイズの会議があります。地球が滅びる前に三日でエイズが消えますように。







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