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人口と持続可能な開発のための開発協力とパートナーシップに関するアフリカ―アジア国会議員会議
行動計画
 
前文
 アフリカとアジア・太平洋29カ国から参集した51名の国会議員が2001年11月29日・30日東京に集まり、「人口と持続可能な開発のための開発協力とパートナーシップに関するアフリカ―アジア国会議員会議」で、人口と持続可能な開発政策とプログラムの分野におけるアフリカとアジア・太平洋の国々および国会議員の間に協力関係を促進し、強化するために以下の行動計画を発表する。
 
1. 1994年カイロで開催された国際人口開発会議(ICPD)行動計画(POA)の基本方針に対する我々のコミットメントを再確認し、以下に掲げる行動計画の実施に向けた誓いを新たにする。
・国際人口開発会議の前夜に採択された国際人口開発議員会議(ICPPD)カイロ宣言
・1999年に採択されたICPDから5年評価のための国会議員ハーグ宣言
・1999年の国際人口開発会議行動計画の評価と達成状況に関する国連報告書
 
2. 国際人口開発会議行動計画が実施に移され、進展が果たされたが、優先的に解決すべき重要な課題が存在し、その問題を解決に向けるためには更なる資金が必要であることに注意する。
 
3. 行動計画の実施によってアフリカとアジア・太平洋の諸国で大きな経験が得られたことを認識しており、我々の国の間での協力を拡大することで経験を共有することは重要な意味がある。
 
I. 人口と持続可能な開発
行動の根拠
 世界は過去50年にわたって、人口の面でも、経済の面でも、社会組織の面でも大きな変容を遂げてきた。世界のグローバリゼーションが進んでいる今日、持続可能な開発の達成は大きな課題として横たわっている。
 
 世界人口における出生率の低減にもかかわらず、今後50年間で61億の人口が93億まで拡大すると考えられている。この期間にアフリカの人口は8億1260万人から20億人にまで拡大すると予測されている。一方アジア・太平洋地域も37億2000万人から54億200万人へと増加すると考えられている。両地域におけるこの人口増加は人口の構造および分布を変化させ、持続可能な開発に対し重大な影響を与えることになるだろう。
 
 ほとんどの国、特にアフリカとアジア・太平洋において、人口の不均衡がさまざまな問題を引き起こし、さまざまな課題を生んでいる。この状態は持続可能な開発にとって深刻な障害となっている。
 
 利用可能な土地やすべての人に食料を生産する利用可能な水資源、持続可能な開発の文脈のもとでの持続的な開発の促進、貧困の終焉、同様に職業の面や教育の面での女性のエンパワーメントなどの問題が、人口増加とグローバリゼーションの問題であることは広く理解されてきている。職業の面や教育の面での女性のエンパワーメントは女性の地位を向上させる。
 
行動
・人口と環境相互作用に注意を払った、持続可能な開発と貧困削減プログラムの開発と実施のために、市民社会、NGOおよび民間部門の参画を図るために国会においても、選挙区においても地域においてもすべてのレベルで支持し、リーダーシップを発揮する。
 
・自らの重要な役割を推進し、開発と貧困削減戦略に中に人口問題の考え方を十分に取り込むための適切な行動をとる。
 
・私達の国における、マクロ経済的な環境変化、特に雇用と貧困に影響を与える要素を常に注視し、これらの変化が貧困者に与える悪影響を緩和するようにする。
 
II. 人口と食料安全保障
行動の根拠
 2001年版の世界人口白書は多くの国で近年、人口増加が食料生産の増加を凌駕してきていることを示している。1990年から1997年にかけて世界の穀物生産が年率1%しか増加しなかったのに対し、途上国における平均人口増加率は1.6%に達した。FAOによれば105の途上国のうち64の途上国で1985年から1995年にかけて食料生産の成長率は人口増加率に追いつかなかった。さらに多くの低所得―食料不足国における食料生産能力は、土壌劣化、慢性的な水不足、不適切な農業政策および急速な人口増加によって劣化の一途をたどっている。穀物に対する需要と生産の乖離は南アジア・太平洋地域で1990年の100万トンから2020年には2000万トンヘと拡大すると予測されており、サハラ以南のアフリカでは900万トンから2700万トンヘと拡大することは予測されている。これらの国々は食料安全保障を実現しようとしても限られた耕地、家族あたりの耕地の減少、土壌劣化、水不足、灌漑の問題を抱えている。
 
 食料安全保障は単に農業生産を増加させても達成できない。その達成のためには多面的な包括的な対策が必要となる。食料安全保障の達成――健康な生活を送るために十分な食料をすべての人が入手できる――には単に食料を増産させるばかりでなく、環境を保護することが必要となってくる。人口増加の低下を促し、女性のエンパワーメントを促すような行動、および食料生産がそれに依存している自然資源の保護を促進する。さらに、個人レベルおよび世帯のレベルでの食料安全保障は所得と関連している。食料が十分にあっても多くの人々にとってはそれを購入することができないし、入手することもできないのである。
 
行動
・それが適切なところでは最良の実施モデルに関する立法を普及し採択する。
 
・共同体における農業開発を促進するような法的枠組および政策を開発し、食料に対する国家レベルでの食料安全保障における対応能力構築を行うための投資を増大させる。
 
・地方農民――特に地方における女性生産者にとって――融資、土地、水、適切な技術を含む生産財を公正に利用し、所有できるようにする立法を行なう。
 
・世界貿易機関(WTO)を含む国際的な合意に対し、このような合意を形成することによって導入されるさまざまな条件が、当事国の伝統的な主食、または農業生産および環境にどのような影響を与えることになるのかを検討する。
 
III. 人口と水管理
行動の根拠
 (淡)水は持続可能な開発の限界を決める資源であろう。水の代用品は存在せず、人類の水に対する需要と利用可能な量はすでに危険な状態になっている。安全な水を利用できることは、人間の基本的なニーズであり、人間の基本的な人権である。
 
 過去70年間で世界人口は3倍に増えたが、水の利用は産業の発達や灌漑用および都市化による使用量の増加によって6倍にも増えた。
 
 世界的に見て利用可能な水の量の54%が既に利用されていると推計されており、このまま需要が増大し続ければ2025年には世界の消費量は人口増加分だけで利用可能な水の量の70%を利用することになる。都市およびその周辺における急速な、そして無計画な人口増加は、その地域における水需要に対する対応能力をはるかに超えている。
 
 技術的対策だけでは水不足に対する解決策として適切ではない。政治的な、そして社会的な決断が必要とされるだろう。現在でさえ解決困難なこの問題は、人口が増加するとさらに困難な問題となるだろう。
 
行動
・すべての人が安全な水を利用できるよう政策とプログラムを促進する。
 
・水の効率的利用を推進する。
 
・地下水管理を改善し、砂漠化や集約的農業、森林伐採によって引き起こされる土壌劣化、灌漑地域における塩類集積、地下水の化学物質による汚染、地下水位の低下などのような水に関連する問題を改善するよう支援する。
 
・漁業資源利用の管理、海洋ならびに淡水における生物多様性を守る国際的な合意や条約を早期に批准し実施するよう促す。
 
・それが可能な地域では天水農業およびその他の水を節約できる農法を促進し、水が国家開発計画の不可分な一部となるようにする。
 
IV. 人口、リプロダクティブ・ヘルスとHIV/ADS
行動の根拠
 国際人口会議行動計画の主要な目的の一つは、家族計画を含む広範なリプロダクティブ・ヘルス・ケアに関する包括的かつ事実に基づいた情報とケアを確保し、それがすべての利用者にとって入手可能で、購入可能で、受け入れ可能なもので、さらに便利なものとすることであった。
 リプロダクティブ・ヘルスとライツに関する不適切な知識および理解、さらに政策とその実施がほとんど発展しなかったことを含む制約が、今なお存在する。
 
 この制約には単なる医学的な観点に基づいたアプローチから、人権に基づいた、より全体的(ホーリスティック)で、患者中心の、リプロダクティブ・ヘルスの多分野にまたがった方法に移行したというアプローチの構造的変化の明確な理解が欠如している。
 
 性行為感染症の発生率は高く世界の多くの場所で増大している。特に重大な懸念は、サハラ以南のアフリカおよびアジアの幾つかの国におけるHIV/AIDS感染の拡大である。2001年末、世界中で4,000万人がHIV/AIDS感染者と推計されており、そのうち90%が途上国の感染者であり、70%または2,810万人がサハラ以南のアフリカ、17%強710万人がアジアにいる。これら感染者の半数以上は25歳以下である。この問題の重要な点は、数千万人ものHIV/AIDS感染者が検査、治療、ケア、支援を受けることができないでいることから、社会経済的な影響はさらに悪化し、蔓延防止のための努力を侵食することにある。
 
 推計によれば世界中で58万5,000人以上の女性が妊娠に関連する原因で毎年死亡しており、その15倍もの女性が障害を受け、感染している。これらは南アジアやアフリカで特に高いものとなっている。およそ7万の女性が毎年安全でない中絶で死亡している。
 
 3億5000万以上のカップルが安全かつ安価で購入可能な避妊方法を入手できないでいる。その多くはアジアとアフリカにいる。
 
 若者は特に被害を受けやすく、またほとんどリプロダクティブ・ヘルス・プログラムを受けることができない。彼らのほとんどは妊娠、性行為感染症およびHIV/AIDSの予防について貧弱な情報しかもっていない。
 
行動
・アジア・太平洋とアフリカからきた国会議員はそれぞれの国および地域の同僚国会議員および指導者をより良いリプロダクティブ・ヘルスおよびHIV/AIDS感染防止を促進するようなこの活動に参加させるための努力を倍増することに合意する。
 
・安全で安価な避妊手段を利用できるようになることを含むリプロダクティブ・ヘルス・ケアの改善を通し、妊娠に関連する原因や安全でない中絶による妊産婦死亡を防止するために今後も努力する。
 
・HIV/AIDSに関連して精神的な負い目(スティグマ:社会的偏見)を背負わされることを理解し、すべてのレベルでそのような負い目を取り去るために積極的に働く。
 
・リプロダクティブ・ヘルスの改善およびHIV/AIDS蔓延の抑制プログラムのための政治的な公約を動員するために、大統領、首相、その他の高い地位にいる人々の参加を得るよう一貫して努力する。
 
・国会議員は立法の評価およびプログラムのモニターとして働くばかりでなく、教育の普及、草の根レベルでの行動の変化、コミュニティーレベルでの参加を高めるなどの方法でそれぞれの選挙区における変化の担い手として活動する。
 
・適切なケアおよび治療、ゼネリック(商標登録の切れた)医薬品の生産を促進と貿易を容易にすることを含む、安価な(購入可能な)医薬品が入手できるかどうかについて特に注意を払う。
 
・若者が学校の内外を問わず被害を受けやすい存在であることを認識する。HIV/AIDS感染防止の活動、思春期のリプロダクティブ・ヘルス(ARH)の推進は若者のために若者の手によってなされるべきである。若者の団体はプログラムの形成と実施に積極的に関わるべきである。
 
・HIV/AIDSに関する国連エイズ特別総会(UNGASS)宣言の完全な実施を支持する。
 
 これらのプログラムは以下のような点を強調したものでなければならない。
 
・アジア・太平洋とアフリカにおける予防および治療プログラムの成功例を文書化する。
 
・プログラムを成功させ、さらに効率的に実施している各組織の間を橋渡しすることで、相互の経験から学び、有益な情報を得ることができる。
 
・リプロダクティブ・ヘルスおよびHIV/AIDSに関する治療を進める専門家訓練への協力関係を促進する。
 
・アフリカとアジア・太平洋の国々および国会議員間で政策や実施例に関する情報が恒常的に行き交うようなメカニズムを開発する。
 
・HIV/AIDS、結核およびマラリアに関して、世界的な保健基金からの資金利用を促進し、モニターする。







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