貧困の緩和
20. 広く拡大した貧困は、人口および開発努力にとっての大きな挑戦となっている。貧困は無知や非識字、女性の低い地位、限られた保健・家族計画サービスヘのアクセスなどがともなう。これらの問題はすべて出生率、罹病率、死亡率を引き上げる原因となっている。また、大家族と永続する貧困の悪循環が、環境破壊と資源の枯渇を一層促進している。
21. 従って、貧困と徹底的に闘うことが、人口増加を抑え、貧困や不利な立場にある人々の経済的機会を増大し、貧困に苦しむ人々の基本的な保健・教育・社会的ニーズを満たすために一層の努力を図る上で不可欠である。これには有効な家族計画プログラムと、農林業、再植林、段畑の造成などの雇用創出ができる環境保護活動を同時に進め、相互作用を高めることが必要である。
高齢者の保障
22. 国の人口に占める高齢者の数と割合は着実に増大しており、これは、可能性を提供するとともに解決すべき課題を呈すものでもある。機会とはすなわち、大半の高齢者が家族や地域社会に貢献する多大な潜在力を有する点である。課題とは、その特徴として社会的移動性と家族離散が益々高まる急速に変化する世界に適用を迫られているアジアの高齢人口に、ヘルスケア、社会、経済、心理的な保障を与えることである。この課題に挑むためには、以下の施策が必要とされている。
(a)人口の高齢化がもたらす社会・経済的影響を明確に考慮した総合的な長期開発戦略を策定すること。
(b)高齢者の雇用・年金の権利を保護し、無料あるいは低料金の医療を提供し、無料あるいは低料金の住宅へのアクセスを保障する法律を制定すること。
(c)定年を引き上げ定年後も働くことを希望する者には、専門訓練プログラムを設け、労働の機会を創出すること。
(d)地方レベルにおいて、活動的な高齢者を主流の社会・経済活動に組み入れるプログラムを開発すること。
(e)とりわけ若者の高齢化問題に対する認識と理解を育成し、個人ならびに社会にとって身内の高齢者の世話をすることがいかに重要なことであるかについて若者を教育すること。
資源の動員:国の行動と国際協力
23. 行動計画がいかに総合的で野心的であろうとも、それを実施するための資源がなければ実効を上げられない。そのような人的・技術的資源や資金を提供する鍵は、政治的意思と公約にある。すなわち、統合的な人口・環境・開発政策と計画を採択しようという公約と、この公約を実行する意思である。
24. その公約と意思はあらゆるレベルに存在しなければならず、政府、非政府、民間のすべての部門の資金投入を結集するものでなければならない。国は、総合開発戦略の一部として国家政策やプログラムを策定し、社会部門への予算の割り当てを増額し、それらを実施するために必要な人的資源を提供しなければならない。南南協力を通じて、発展途上諸地域の国々は、貴重な経験、知識、専門技術を共有し、そのために必要な資源−人的資源および資金−を配分しなければならない。そのような交流は、まだ人口学的な目標と目的を達成する途上にある諸国にとって、大きな助けになるであろう。
25. 世界各国の人口プログラムの支援に必要な新たな資金を動員するためには、国際社会の強力な支援が必要である。かかる資金の動員は、資金提供国がODAの4パーセントを人口プログラムに配分すれば可能となるであろう。この援助を仲介する最も適切な機構は国連システム、とりわけ国連人口基金であろう。特に国際家族計画連盟(IPPF)をはじめ、他の国連機関、国際機関、NGOは、人口政策とプログラムの実施を支援すべきである。
行動への呼びかけ:
大会は以下を要請する。
26. アジアの立法府議員
人口と持続可能な開発の複雑な相互関係に関する立法府議員、政府高官、および一般市民の認識と理解を一層促進すること。
本宣言の行動プログラム、とりわけ女性に権限を付与し、母子および女性の出産に関する保健を改善する施策を支援する法的措置を含む適切な措置を講ずること。
政府および非政府組織(NGO)間の定期的な交流を奨励し、革新的なプログラムの開発において政府の協力とNGOの活用を促進するために尽力する。
バリ宣言に明記された人口目標を支持し、それらの目標の達成を促進する法律を推進、支持することを立法府に奨励すること。
27. 各国政府
人口、環境および開発問題、とりわけ家族計画および女性の出産に関する保健に対する有効で総合的なアプローチを達成することをめざす活動の促進と支援に、国家予算および人材を十分に配分すること。
国の人口プログラムの独立性を作ることを目標とする長期計画を開発すること。
貧困を緩和するための国家戦略に不可欠なものとして人口増加を低減する努力を含むこと。
他人への敬意、非暴力、協力および浪費の排除を強調する倫理的次元を組み入れた統合的アプローチにより、人口増加、資源の活用および経済社会発展の均衡を図ることをめざす統合的な人口・環境・社会プログラムを開発すること。
女性の権利と経済的自立を阻む、存続するあらゆる法律・行政・経済・社会上の障害を撤廃すること。
とりわけ、母子保健や家族計画サービスを含む基本的な保健・社会インフラストラクチャーの整備・拡大を通じて、農村部と都市部の開発の均衡を図る国家政策を開発すること。
高齢者に十分なケアの提供を保障するための諸計画を策定すること。
バリ宣言の中で採択された人口目標の達成に努めること。
28. 非政府組織
地域社会の参加を土台とした草の根レベルのネットワークや戦略を通じて、国の人口プログラムを支援し続けること。
とりわけ家族計画サービスの実施の分野において、政府の担当組織との定期的な交流を開始し、促進すること。
29. 報道およびメディア
人口−環境−資源−開発の複雑な相互関係に関する認識を形成すること。
特に次回の人口と開発に関する世界会議に関連して、人口問題を積極的かつ建設的に報道すること。
30. 国際社会
アジア地域における人口問題への援助要求の増大に応じられるよう、多国間および二国間組織、およびUNFPAやIPPFを中心とする非政府組織の財源を増やすこと。
すべての国連機関・組織に対し、人口政策およびプログラムヘの支援を促すこと。
とりわけ母子保健、女性の生産に関する保健、家族計画プログラム、および女性の地位向上のための財源を生むことを目的とした負債削減計画を模索すること。
人口プログラムの経験に関する南南協力を推進すること。
避妊法に関する科学知識や技術情報の伝播を通じて、国の家族計画プログラムを支援すること。
発展途上国の、特に訓練・管理プログラムをはじめとする国の人口政策やプログラムを策定・開発・実施する能力を強化・拡大することをめざした活動を奨励・支援すること。
活動の重複を避け、成功するプログラムを見極め、それを拡大し、国際協力の効率性とその協調ある活用を保証するために、他の資金提供国と緊密に協力すること。
国民総生産や政府開発援助の割合に応じて、援助レベルに関する指針および勧告を制定すること。
31. アジア議員フォーラム(AFPPD)事務局
アジア地域における人口・家族計画プログラムの質ならびに効果を高めるために、立法府議員等の間での情報や専門知識の定期的な交換を促進すること。
新たなる献身:
32. アジア議員フォーラム第4回大会に出席した我々は、立法府議員、地域社会の指導者、あるいは国民の代表としての立場で、人口増加を抑制し、人口分布の合理化を図り、貧困を緩和し、環境の面から見て危険な消費パターンを削減するために力を結集し、真に持続可能な開発をもたらすべく、弛まず努力・専心する。我々はそのために、家族計画プログラムヘの投資、母子保健および女性の出産に関する保健の向上、女性に対する権限付与、農村部と都市部の成長の均衡化、貧困の緩和、高齢者に対する保障供与、資源の結集を目的とする政策やプログラムを支援することを誓う。
そのために、我々は、人口増加、社会・経済開発、資源利用および環境保護の間に、より良い調和を確保できることを期待しつつ、「行動プログラム」を成功裡に実施するべく、あらためて惜しまず努力する。さらに、人類全体のより良い、平和な未来のために努力することを誓う。
|