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人口と開発に関するアジア議員フォーラム
第4回大会
クアラルンプール宣言
1993年10月28日
マレーシア国、クアラルンプール
 
前文:
1. 1993年10月26日から28日にクアラルンプールで開かれた人口と開発に関するアジア議員フォーラム第4回大会に出席したアジア24ヵ国の国会議員は、人口と開発に関する諸問題に取り組みつつ、人口と開発に関するアジア議員フォーラムのニューデリー(1984年)、北京(1987年)、バンコク(1990年)宣言を想起する。
 1992年8月にインドネシアのバリ島で開かれた第4回アジア太平洋人口会議において1994年9月にエジプトのカイロで開催予定の国際人口・開発会議の準備過程の一環として採択された人口と持続的開発に関するバリ宣旨に注目する。
 2010年までに、乳児死亡率を出生1000人当たり40人以下に減らし、妊産婦の死亡率が高い国々や地域においては、妊産婦死亡率を少なくとも半減するために、置き換え水準の出生力を達成する(女性1人当たり生涯に子供2.2人出産)との同宣言に採択された目標を尊重する。
 人口は、環境を守り、持続的開発を遂行する上において決定的に重要な役割を果たす。従って、計画策定と政策立案のあらゆる側面に人口ヘの十分な配慮がなされなければならないとの同宣言に賛同する。
 なおかつ、現在から将来にわたるすべての人々が、幸福を等しく享受できることを確保するための手段としての持続可能な開発には、人口、資源、環境、開発間の相互関係があることを十分に認識するとともに、それを適切に管理し、機能的に調和のとれた均衡を図る必要があることに賛同する。
 各国は、持続可能な方法で生活の質を向上させるために、人口、資源、環境、開発の間のよりよい調和を促進する強制力のある施策を策定すべきであることを確認する。
 どの国も、その国固有の特殊な人口問題と政策目標を抱えており、地球の持続可能な開発という目標に関して、その国独自の人口目標や政策、計画を実施する主権を有することを再確認する。
 人間の幸福に配慮するに当たって、人口政策は、個人、家族や共同体、社会、国家、地球社会の一員であり、それらの枠組みの中で権利を有することを理解すべきであることを認識する。
 貧困は、人口、資源、環境、開発の間の不均衡を助長することを認識する。
 さらに、人口、資源、環境、開発の間の均衡をとる最善の方法は、人口増加を鈍化させ、人口分布を適正化し、貧困を緩和し、環境に危険な消費形態を減らすための諸々の取り組みを調和させる総合的な戦略を採用することであることを認識する。
 家族計画は、社会・経済的開発において社会がなし得るコスト効果が最も高く効率的な投資の1つであることを確認し、上述のような総合戦略の不可欠な要素でなければならないことを強調する。
 母子健康を促進し、家族計画サービスを普及し、質を向上させ、身近に利用しやすくするために、さらに踏み込んだ取り組みを支援する必要性を認識する。
 女性は、人口と持続的開発に関連するすべての意思決定において、中心的役割を演じ、その決定に全面的に参加しなければならないことを強調する。
 なおかつ、人口と開発の分野においては、国際協力が必要不可欠であり、これらの分野において、国際社会が行なう貢献や支援にはいかなる政治的条件も付帯してはならないことを強調する。
 
人口情勢
2. 1992年のアジアの人口は32億人で、世界人口の約59パーセントに相当する。世界で人口の多い上位10ヵ国中、6ヵ国がアジアにあり、最大の人口を抱える中国とインドの2大国の人口を合わせると世界人口の38パーセントを占める。アジア地域の人口は、西暦2000年までに37億人に達し、さらに西暦2006年中には40億人を突破すると予測されている。人口増加率は、向こう20年間に、現在の1.8パーセントの水準から、1.3パーセントに低下すると見込まれるが、今後西暦2010年までに、同地域の人口は約10億人増加するとみられる。このうち半分をはるかに上回る増加が南アジアで起こり、現在アジアの中で最も人口の多い東アジアを追い抜くであろう。
 
3. アジアの人々の3分の1以下が都市に住んでいる。しかし、アジア地域は目下、都市化革命の真っ只中にある。1990年に、同地域の低開発諸国では、世界の他のどの地域よりも多い8億7900万人の都市居住者を抱えていた。これは、低開発地域の都市人口の63パーセントに、また世界の都市人口の39パーセントに各々相当する。アジアの都市居住者の数は、西暦2025年までに現在の3倍に当たる25億人になる見通しである。現在、世界で最も人口が集中している13都市のうち、東京、上海、ボンベイ、ソウル、北京、カルカッタ、大阪の7都市がアジアにある。1994年に、新たにジャカルタ、天津、マニラの3都市がこのリストに加わる見込みである。さらに、西暦2010年には世界で最も人口の集中した26都市中、14都市がアジアに存在すると予測されている。
 
人口・環境・開発
4. 開発の過程において、基礎となる地球の天然資源を破壊してしまっては、開発は持続不可能である。また、現在のペースで人口が増え続け、消費と資源利用の形態が不変のままであっても、開発は持続できない。
 
5. 現在、貧困が深刻化してきており、その主な原因は土地不足と就労機会の不足にある。農村地帯における貧困は、土地を全くあるいは不十分にしか持てず、貧困から抜け出すだけの所得を得られない世帯に集中している。都市部での貧困層は、不安定で低賃金の非公式部門(インフォーマルセクター)の雇用に就きがちである。
 
6. このような諸条件は、急速な人口増加と、農村から都市へ、農村から農村への移動など、すべて密接に連関した事象により悪化している。急速な都市化は、周辺の田圃を食い尽くし、良質な農地をだめにしてしまう。これが結局、農民による土壌の過剰利用や、ひいては土地の疲弊を招き、生態学的に脆弱な辺境地帯や、道路に近接したり、海岸線沿いのような手近な地域へと農村の移住者を追い立てている。その結果起こる、これらの地域の人口密度の増加は、移住者に過度の開墾や森林作物の乱獲、遠隔地や急峻地帯への定住拡大を強いている。
 
家族計画・女性の出産に関する保健(リプロダクティブ・ヘルス)・女性の地位
7. 家族計画によって、すべての夫婦や個人が、自由に責任をもって子供の数や出産間隔を決めることができる。貧困を緩和し、総合的に保健、特に女性の出産に関する保健を改善し、教育の質を改善し、教育機会をとりわけ女子に対して均等化し、社会および開発過程の双方における女性の役割と地位を向上させることを目的とした社会、健康、福祉、経済の諸施策を盛り込んだ拡大総合包括策の一部として行なわれれば、家族計画の効果は高まる。
 
8. 効果的な家族計画プログラムが、そのアクセス、普及、利用を容易にする法的、社会的、経済的施策をともなって導入されれば、効果は倍増する。これらのプログラムは、すべての男女の自発性と責任に基づいた十分かつ平等な参加を促進しなければならない。
 
9. 意思に反した計画性に乏しい妊娠を女性が回避できれば、妊産婦の死亡の25〜40パーセントは未然に防げると推定されている。しかし、家族計画サービス、ひいては女性のヘルスケア全般には、国家予算の配分において概して低い優先順位しか与えられていない。女性の地位が低く、育児が女性の社会的機能の主要部分と見なされている国々においては、女性が従属的な地位にあることが問題である。
 
10. 法の下での平等な待遇は、対等な人間としての女性の尊厳を高める。しかも、女性の自尊心を高め、出産の選択の幅を広げる。男子優遇の社会では、幼い頃から性差別が始まる。しかし、自己を男子と対等な者と見なすよう育てられた女子は、大人になってより積極的に家族計画を取り入れる傾向がある。また、男児と女児に平等な価値を与え、自己の出生に関するヘルスケアの重要性をより理解しやすい。
 
11. 女性が家族の扶養により大きな責任を引き受けるのにともない、女性を二重の負担から解放するため、男性は育児と家事の責任を分担する必要がある。
 
行動計画
12. アジアの人口と、人々が消費する資源量との間の持続的均衡を図るには、ただちに以下の4つの領域に注目する必要がある。
○社会部門の、とりわけ人口増加の抑制を図り、女性の出産に関する保健を改善するための取り組みに対し、より一層の注意を払う。
○貧困に対する直接的かつ徹底した取り組み。
○よりバランスの取れた農村および都市開発への移行。
○教育に重点を置いた、女子と女性の地位の決定的向上。
 
13. 結局、持続可能な開発は、個人、共同体、国家、世界にとっての選択と責任にかかわっている。その目的は、家族規模、人口政策やプログラム、限られた国家予算の中での数多くの競合する要求などの様々な選択の機会がある中でどのように選択するかという選択の自由(幅)を拡大することであり、開発の理念と実践における選択を行なうことである。
 
14. 言うまでもなく、選択には責任がともなう。男女は避妊と育児に、個人はその消費形態に、共同体は弱者や不利益をこうむりやすい人々に対して、国家は国民の福利厚生に対して、国際社会はその他のあらゆるものが依存する開発と環境との均衡を取ることに責任をもたなければならない。
 
15. アジア諸国の社会・経済・政治的諸条件の違いに留意し、各国の国家主権を尊重しながら、我々、国会議員は、立法府議員であり共同体の指導者としての二重の立場において、国内の法案を推進し、この行動プログラムに盛り込まれた勧告に対する政府および公の支持を取りつけることを誓約する。
 
家族計画プログラムヘの投資
16. 人口増加を鈍化させ、出生率を低下させる上で、最も対コスト効果が高く効率的な手段は、強力で断固とした家族計画プログラムに投資することである。事実、出生率の永続的な低下は、広範で自発的な家族計画サービス・情報の利用によってのみ実現され得る。強力な家族計画プログラムは、国家の開発のいかなる段階においても重要な効果をもたらす。夫婦は、その所得や教育の程度にかかわらず、適正かつ適切な家族計画の情報やサービスが得られる場合、より小さな家族を選ぶ。家族計画プログラムが効力を発揮するためには、政府による全面的な支援と取り組みがなされねばならず、十分に調整、統合された国家戦略の一環として以下に配慮しなければならない。
(a)情報やサービスが身近に受けられるようにする。
(b)サービスの質を向上し、多様な方法を提供することに重点を置く。
(c)女性を対象とした女性が運営する施設の利用を盛んにする。
(d)男性や青年、新婚者を巻き込み、職場の青年に伝わるような新鮮で革新的な方法を採用する。
(e)すべての健康サービス、とりわけプライマリーヘルスケアのサービスを充実させる。
(f)従来の個人を対象としたアプローチに加え、とりわけ南アジアにおいては、共同体を対象としたアプローチを奨励する。
(g)他の社会的プログラムに対し比較優位にある人口・家族計画の相乗効果を最大化するために、政府、非政府、民間部門の間の連携を強化する。
(h)特に若い女性に対し、出産間隔をあける利点を強調する。
(i)出産に関する選択と妊産婦と子供のヘルスケアの強化。
 
17. すべての男女は、出産の選択、権利、責任を有すると同時に、女性は出産に関する適正かつ適切な保健を受ける権利を有する。出産の権利には、男女双方が平等に負担すべき責任ある家族計画や育児を含む、出産に関する責任がともなう。社会もまた、子供の数や出産間隔に関する自由で、事前に知らされた上での選択を助け、支援する法・社会・経済・文化・政治的環境を創出する責任を有する。このためには、とりわけ、以下を要する。
(a)社会的性差による男女の役割は多様で、変化しつつあることを認識する。
(b)社会的性差としての男女の関係において、不公平な権限や権力が行使されている現実を確認し、これらの不平等に対処する具体的な対策を講ずる。
(c)家族計画や育児、家事をはじめ、家族としての責任のあらゆる側面において男性の積極的な参加を奨励する。
(d)若年の女性の出産に関する健康を促進・保護するための施策を取り入れる。
(e)これまで省みられなかった妊産婦の死亡に、より一層の注意を向ける。
(f)危険な中絶は、主要かつ主要性を帯びた公共の健康問題であることを認識する。
 女性の出産に関するヘルスケアに不可欠な一部分として、効果的ですべての人々に行き渡る妊産婦と子供の健康および家族計画のサービスを提供する。
 妊産婦の死亡や疾病、中絶、不妊、性病を減らし、HIV/AIDSの蔓延を防止するための取り組みをはじめ、妊産婦と子供の健康や女性の出産に関するヘルスケアを総合的にとらえる政策・プログラムを策定する。
 
女性のエンパワーメント(女性が身体的・社会的に“力”をつけること)
18. 女性のエンパワーメントとは、女性に男性と同等の地位を与えることである。また、あらゆる職業とあらゆる部門において女性に均等な機会を与え、男性と同等の条件を保証し、同一労働に対する同一賃金を払い、男女間で家事の責任を平等に分担することを意味する。このデリケートな領域において、国内で以下の立法化を働きかけることにより、国会議員が果たすべき役割は極めて重要である。
(a)生産性が高く有利な雇用に女性がつけるように努める。
(b)女性を、経済的差別をはじめ、あらゆる形態の差別や暴力から保護する。
(c)自己の財産を所有し、信用を受ける権利を含む、女性の権利と経済的自立を阻む、あらゆる法律、行政、社会上の障害を撤廃する。
(d)同一の労働に対する平等な雇用と平等な賃金を保証する法律を制定、強化する。
(e)開発計画のあらゆる側面に社会的性差への配慮を織り込む。
(f)女児の地位、平等、健康福利を推進し、男児に社会的性の平等と調和した行動規範や価値観を教え込む政策やプログラムを策定する。
(g)農村部および都市部の発展の均衡を図る。
 
19. 都市化は不可避、不可逆的なものである。毎年何百人もの世界の最も貧しい人々が仕事とよりよい生活を求めて町や都市に移住してくる。多くは貧困、多産、環境破壊に追いつめられてのことであり、その他は、都市の市場や輸出市場に有利な開発政策の恩恵を求めてくる。その結果、巨大都市が増大し、失業・不完全雇用の移住民がスラムや臨時定住地にあふれ、農村部門は衰退し、その国家経済への貢献が低減している。このような状況に対処するために、以下のような施策が必要とされている。
 農村部から都市部への移住を制限するよりは、むしろ農村部と都市部の発展の均衡を図る国家政策を開発すること。
 都市中心部とその周辺地域の経済・制度の連携を強化すること。
 地方自治体へ権限を分散して、その都市開発計画および運営能力を開発すること。
 職業訓練を行ない、また信用貸し制度を利用できるようにして、非公式部門に働く移住民の所得能力を向上させること。
 農村・都市両地域において、母子保健や家族計画サービスを含む基本的な社会・保健インフラストラクチャーを整備、拡張すること。
 小規模な町や都市への民間部門の投資を奨励、促進すること。







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