国際人口・開発議員会議
(ICPPD)
人口と開発に関するカイロ宣言
1994年9月4日
エジプト国、カイロ
1. 私たち国会議員は、1994年9月3日と4日エジプト国カイロに集い、人口と開発に関する国会議員の会議において、国際人口・開発会議の前夜に人口・開発問題について討議を行なった。以下はその宣言文である。
2. 多様な人類の文化と伝統が一堂に会したこのカイロ会議の開催をここに歓迎する。信条、習慣が違っていたとしても、世界の指導者と人々は世界の調和と協力をもたらすことを志向するべきであり、このことに関して国会議員は重要な役割を持っている。
3. 私たちは、一連の国連主催の環境、人権、社会開発、そして女性の役割に対する会議の中で、枢要な時期に開かれる国際人口・開発会議で生み出される結果の重要性をよく認識している。私たちは、すべての開発計画政策およびプログラムに、人口問題を統合的にその欠くべからざる一部として、組み込む戦略を支持する。従って、私たちは国際人口・開発会議に参加している各国代表に対し国際人口・開発会議の行動計画に対する合意に到達するように呼びかける。
人口と持続可能な開発
4. 世界の国会議員は、人口と天然資源の間の微妙なバランスを認識してきた。従って、私たち国会議員は、人口問題は単独の問題として扱いうる問題ではなく、人類にとっての諸条件の改善を果たしうるこの地球の持続可能な開発という、より広い文脈の中で扱わなければならないことを主張する。人類にとっての諸条件の改善を図りうる地球の持続可能な開発とは、過剰消費の抑制と生産力の向上を通して、すべての人にとってその生活の質を向上させる経済活動であり、貧困の緩和であり、環境と調和的な持続可能な農業開発、工業生産の達成、エネルギーと天然資源の利用であり、そしてヘルスケアの改善と教育の質および利用のしやすさ(アクセス)を向上させるものである。人口と開発問題に対して今日私たちがとる行動が人類の将来を決定する。この人口・開発問題の解決はすべての人間にとってその尊厳を守るために不可欠なのである。従って、持続可能な開発を可能にするような、新しくより広い経済政策を策定し、それに基づいて国際的な合意を築き上げることが必要不可欠である。
再生産に関する健康(リプロダクティブ・ヘルス)と家族計画
5. 私たちは、家族計画をリプロダクティブヘルスケアというより広い枠組みの中に位置づけるという手法をとることを積極的に受け入れる。私たちは、すべての政府に対し自らの文化的アイデンティティ、価値観および伝統を尊重しながら問題解決のために責任をもって努力することを強く勧告する。従って、私たち自身、国民の代表として、家族計画サービス、情報および教育を手に入れる上で、私たちの国に存在する障害を取り除くために最大限の努力を行ない、そしてまたリプロダクティブ・ヘルスと家族計画を可能な限り広く供給できるよう支援を行なう。私たちはさらに私たちの国のすべての人口と開発政策およびプログラムが国際的に認知された基本的人権を守るものでなければならないものであることを強く勧告する。
6. 私たちは中絶が世界中の女性にとって主要な関心事(大きな問題)であるという事実を認識している。従って、家族計画の(使用)によって予期せざる妊娠を予防するために、私たちは各国政府に対して広範囲に家族計画の情報とサービスを提供することで、中絶の必要性を減らすことを呼びかける。
性の平等と女性の地位の向上
7. 女性の地位の向上とその政治的、社会的、経済的状況そして健康状態を改善することは、女性にとって重要な結果をもたらす。私たちは更に、人類の発展は、女性に男性と同等の権利と地位を与えることなくもたらされることは、ありえないと信じるものである。女性にとって平等を獲得するまでの過程は、単に利益という観点から見られるばかりではなく世の中の仕組みを変えるという点からも考えられるべきである。そのためには、女性に自らの性に対する意識を向上させることが必要である。従って、私たちは教育こそが男女平等と女性の地位向上のための唯一の道であると信じるものである。その教育は男女差別を肯定するようなステレオタイプ化した社会的性差を排除することを目的とし、男性と女性の協力とパートナーシップを考慮に入れた形での女性の地位を向上させることを目的とするものであるべきである。従って、私たちはカイロで採択されるICPD行動計画の中に記された教育における目標を強く支持するものである。そして私たち自身、私たちの国に残る女性の公共および政治的な活動を含む社会参加を妨げ、差別するすべての法的、社会的、文化的障壁を取り除くために関与する。私たちは世界中の立法者に呼びかけ、私たちとともに国家の優先課題として女性の地位向上に取り組み、政府にはそのための立法を強化することを呼びかけるものである。
健康と死亡率
8. 人類の平均余命のある程度の改善にもかかわらず、予防、治療可能な病気がいまだに早期幼児と女性の主要な死亡原因となっている。少なくとも50万人の女性が妊娠に関連して死亡し、出生とこの妊産婦死亡の99.5パーセントが途上国で起こっている。加えて多くの人々が感染症、寄生虫病そして呼吸器疾患のリスクにさらされている。HIV/AIDSは死亡率を高める原因となっている。従って、資金、特にドナー国からの資金はこれらの社会的弱者に向けられるべきであり、彼等にとって緊急に必要となっている乳幼児および妊産婦死亡率の低減のために使用されるべきである。
9. 従って、私たちはすべての人たちが、今世紀の終わりまでにプライマリーヘルスケアを得ることができる権利を支持する。そしてまた私たちは、詳細が行動計画の中に記された各国の間に横たわる健康条件と死亡の危険性の格差を減らすために働くことを誓約する。
資源の調達
10. 人口政策とプログラムの成功と質はいかに各国が様々な部門から戦略的に資源を調達し、人口・開発問題に対する資源を大幅に増加できるかどうかにかかっている。これが実現できるかどうかは、それぞれの国の社会的、政治的、経済的そして文化的現実と人口政策とプログラムがその国の中でもっている優先度による。人口・開発問題の解決を実現するために、私たちは人々の代表として選ばれた存在として、人々の人口と開発のための行動に対する支持を仲介し、予算上の人間および行政上の能力(資源)を有利に配分する責任を受け入れる。私たちは、国内的および国際的な財源を十分に調達する必要性があるとの強い国際的合意に注目し、行動計画に記されている必要と推計されている資源(量的目標)を支持する。人口と開発に対して更に必要となる資金は、軍事費を削減することによってもたらされるべきである。
11. 従って、私たちは人口・開発プログラムに対する国内の資金を適切な規模に増加させるための立法を行なうために働くことを誓約する。そして国際社会に対しては人口・開発問題の解決のために行動計画に示された目標と目的を達成する上で必要な活動を実施するための必要な資金を供与するように呼びかけるものである。同時に、分散化、大衆参加、特定のグループにしぼり込むこと、国家の対応能力を向上させるなどの方法をとることで、現在存在している資金を効率的に使うこともまた重要である。
行動の呼びかけ
12. 人々の代表として社会から与えられた役割という点から、私たちはカイロで採択されるICPD行動計画を国家レベルで実施する上において、また国家のそして地方のそして私たちの惑星に対する新しい関心を呼び起こす上において、そして政府が人類のための国家政策を作る上で、特別な役割を持っている。従ってすべての国会議員に以下のことを呼びかける。
(a)各国政府が国家人口政策とプログラムを形成することを可能にするための立法を行なう。特に、女性の地位を法的、社会的、経済的そして文化的に向上させることを目的とした立法を行なう。
(b)女性に対する差別撤廃条約を批准していない政府に対して、批准を求め、そして実施の監視を求める。
(c)そのような政策とプログラムを監視し、評価するための国会議員のための組織を設立する。
(d)人口政策とプログラムを実施する上で、増加する資金需要に対して予算上で承認する。そしてそれを支援する立法を行なう。
(e)国家の人口・開発政策およびプログラムを実行するために必要な国内の資金の利用について選挙民の支持をとりつける。
(f)持続可能な開発という地球全体の視点から見た人口と持続可能な開発に関する政策決定者と一般市民の認識を高める。
(g)各地方(サブ・ナショナル)、各国、地域、地球レベルにおける人口と開発に関する国会議員の委員会を設立または強化する。
(h)世界中の人口と持続可能な開発の分野に携わる国会議員の間の協力を促進し拡大する。
関与から行動へ
13. 私たちはここに、このもはや猶予のない挑戦を行なうために国家の立法者としてまたそれ以外の部分でも、適切に私たちの個人的な関与から政治的な行動へと移行することを誓約し、その他の人々を私たちの活動へ加えていくことを促進すると誓うものである。
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