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人口と開発に関するアジア議員フォーラム
第1回大会
ニューデリー宣言
1984年2月20日
インド国、ニューデリー
 
序文:
1. 1984年2月17日から20日「人口と開発に関するアジア議員フォーラム第1回大会」にアジアの24ヵ国から参加した我々国会議員は、人口と開発に関する問題に関して、次のとおり呼びかける。
(a)議員たちが、1979年のコロンボ宣言、1980年のクアラルンプール宣言、1981年の北京宣言以来、全世界的な経済政治条件の悪化にもかかわらず、人口計画(人口プログラム)への問題意識が高まっていることを満足を以て留意する。かかるコミットメントは、各国国内委員会(ナショナル・アソシエーション)の設立等に反映されている。
(b)出生率、乳児死亡率といった人口動態上の目標の達成に向けての前進を確認する。(かかる前進は、家族計画や社会経済開発上の諸活動によりなされたものである。)
(c)地域の人口増加は、1981年の26億人から、2000年までに36億人に達すると推定されていることにかんがみ、人口増加率低下の必要性を認める。
(d)2000年までにアジア地域の人口増加率を1パーセントにするとの北京宣言における重要勧告の1つを再確認する。
(e)基本的人権として乳児死亡率を減少させること、家族計画の受け入れを促進することの必要性を確認する。
(f)社会経済開発のための適正な人口分布の達成のため効果的措置をとることの必要性を認識する。
 
2. 前述の問題に対処するため、このフォーラムは次の人口動態上の変化に留意する。
(a)人口増加率と出生率の問題
(b)死亡率、特に乳児死亡率の問題
(c)農村から都市への移動等の人口分布の問題
 
3. フォーラムは、アジア地域における平和と国家安全保障の維持と軍備競争の終焉が重要であることを認識する。また国内平和を乱す暴力活動とテロリズムを終結することが必要である。
 
4. 人口動態上の目標を達成するための家族計画についての情報やサービスの提供は、基本的人権としての家族計画の認識に基づかなければならない。
 
5. 1979年、UNFPA(国連人口活動基金)およびIPU(国際議員連盟)が主催したコロンボ会議は、人口と開発問題にかかわる課題の増大に対処するに当たって、選ばれた代表の持つ大きな役割を見出し、そして、議員の参加を導き継続させるための議員組織が編成されることを要求した。
 
6. UNFPA(国連人口活動基金)は、1981年北京における第1回人口・開発に関するアジア議員会議を主催した同会議は、人口と開発の間の相互の関係についての認識と理解を増大することの必要性を強調した。北京の主要決定事項の1つは、アジア議員フォーラムの設立であった。かくして、1982年3月9日ニューデリーにおいて、アジア議員フォーラムが発足した。同様の会議が他の地域でも開かれ「人口と開発に関する国会議員世界委員会」の形成へとつながった。
 
7. コロンボおよび北京の会議以後、アジアの数ヵ国において、議員からなる国内委員会が、異なる政党間、種々の社会部門の宗教家、リーダー間に政治的コンセンサスを確保するためのイニシアチブをとった。このことは、人口政策をより緊急のセンスをもって推進する上で肝要な“政治的意志(political will)”を生み出した。コロンボからニューデリーへの道のりは、“政治的意志”に到達する道のりであった。このことは、人々を動員し参加させる統率力となった。
 議員は果たすべき重要な役割を有している。議員は、人類にとり、かくも重要な意味をもつ使命を受け、あらゆる資源をさらに培い、人々との新たなつながりを強化し、創造しなければならない。このことこそ、今後、議員に求められている最大の課題である。
 
特定の目標:
8. 議員は、次の特定の目標を達成するため協力しなければならない。
(a)西暦2000年までにアジア地域全体における人口の増加を抑え、人口増加率1パーセントを達成すること。
(b)アジア全域における死亡率を減少すること。特に西暦2000年までに地域内における乳児死亡率を50パーセント減少させること。
(c)計画的な都市人口の増加のための政策と人口を地方に留めおく努力を併せて行ない、アジア諸国内における人口分布の均衡化を実現すること。
 
行動計画:
人口増加率の抑制
9. 望ましい人口増加率を確保するために以下の諸行為が議員によって行動に移され、支持される必要がある。
(a)すべての開発計画に包括的人口政策を統合すること。
(b)非識字者、特に女性の非識字者をなくす努力を直ちに行なうこと。法的障害の除去と経済参加機会の増進による女性の地位の向上を図ること。
(c)すべての人々が容易に利用しうる家族計画についての情報およびサービスを早急に拡大すること。
(d)基本的保健サービスの向上と同サービスの家族計画への結びつきを図ること。
(e)行政管理の改善、訓練の拡大、異なる人口層(特にアジアの人口の60パーセントを占める若年人口層)の情報伝達を開発すること等によって家族計画の立案強化を図ること。
(f)様々な種類の避妊方法供給の継続と普及しうる新しい避妊方法の導入を図ること。
(g)すべての宗教グループに受け入れられる新しい避妊技術の研究を支援すること。
(h)家族計画の立案および実施過程において、不必要な形式主義を省き、すべてのレベルの共同体が参加できるように保証すること。
 
死亡率(特に乳児および早期幼児死亡率)
10. 乳・幼児の死亡率は、十分に低下していない。死亡率の低下が達成され福祉が向上されることは、出生率の低下をもたらし、少人数家族構成を受け入れることとなる。同様に、出産間隔が広くなれば乳児の生存の一助となる。乳・幼児死亡および心身障害の主たる原因は以下の諸事項を営むことで調整されたPHC(基本的保健サービス)政策によって除去されよう。
(a)すべての子供に対する予防接種の実施。
(b)子供の成長測定手法の利用を含む栄養物摂取および栄養教育の実施。
(c)経口補水療法による下痢の治療を含めた一般的幼児期疾患の治療に関する保健教育を両親に行なう。
(d)スラムおよび農村における飲料水の供給の確保。
(e)母乳育児の有益性に関する教育計画。
(f)地域社会指導者、特に昔ながらの助産婦と医者を参加させた一般的幼児疾患の判定と簡易治療に関する訓練計画。
 
人口分布
11. 天然資源に比較し、均衡のとれていない人口分布は、社会・教育開発の阻害要因である。特に急激な都市化は、国家および都市部の資源と恒久的基幹施設に重い負担をかけるばかりでなく森林伐採、土壌浸食、人口分布の不均衡をももたらす。この不均衡を是正するための方法としては、次のものが指摘されよう。
(a)大都市への誘因要因の削減および中規模都市と小さい町、区の開発を含め、総合的な国家的都市化計画の立案とその実施を図ること。
(b)農村部での雇用機会を拡大すること。
(c)農村部における基本的社会、保健面での安堵感を向上、拡大すること。
(d)都市の成長を規制するために適切な方法を開発すること。
 
行動の呼びかけ:
12. 会議は以下のように訴える。
(a)アジアの国会議員に対して
(1)国内の国会議員の組織を強化して、人口と開発の相互関係について理解を深め、国会議員間の相互交流と対話を促進すること。
(2)行動計画を支援するために、立法措置を含めて、適切なイニシアチブをとること。
(3)人口政策の策定と展開の一貫性を高めるため、学術界と研究界との結びつきを密にすること。
(4)人口政策と計画の策定と実行を調整する法定機関を各国に設立すべく行動を開始すること。
(5)適切と判断される場合には、結婚最低年齢を20歳に引き上げるために立法化を始めること。
(6)人口と開発に関する国会議員委員会を設立すること。
(b)政府に対して
(1)可及的速やかに、行動計画を実現すること。
(2)行動計画および人口に関するその他の開発計画に対して、その実行促進のために十分な資源を配分すること。
(3)社会的、経済的な不均衡の是正を特に目的とした社会、経済計画を強化すること。
(4)非政府機関と任意機関への援助を増加させて、そのイニシアチブを維持、育成すること。
(5)UNFPAを含めた国際機関とIPPF等の非政府機関を通じての人口問題のための援助を増やすこと。
(6)政府開発援助の総額を増やし、UNDPおよび二国間機関を通じてふりわけること。
(7)発展途上国に対して自立を促進するために、その人的・物的資源を動員するように働きかけること。
(8)老齢者のための福祉計画を準備して、彼らが社会の生産的な一員として引き続き参加することを奨励すること。
(c)非政府機関に対して
(1)IPPFのような国際機関、国内のNGO(非政府機関)並びに学術、開発機関は、引き続き、積極的かつ革新的な役割を担って、家族計画プログラムの奨励努力を強化・拡張することに努めること。
(2)コミュニティレベルでの自主的援助を引き続き募り、小家族基準がより広く受容されるために有効な新しいアイデアを求めること。
(3)効果的な人口政策・計画の策定を推進するために、人口および開発の問題について、国会議員と協調して動くこと。
(d)報道機関と媒体に対して
(1)人口問題についてより積極的かつ建設的な報道をすること。
(e)国際社会に対して
(1)UNFPA等の国際機関、二国間機関、政府並びにアジア諸国の非政府機関(NGO)に対する財政援助を増額する。
(2)家族計画の生物一医学、コミュニケーションおよびプログラムに関する研究に対する援助を増やすこと。
(3)国連に呼びかけて、人口問題への注目を集め、世界人口デーの宣言を実現すること。
(4)加盟国政府に対して、1984年メキシコシティーで開催される人口に関する国際会議に国会議員を多数参加させるように要請すること。
(f)ASIAN FORUM運営委員会に対して
(1)アジアの国会議員の対話の機会を引き続き提供すること。
(2)対話を各地方の立法機関にまで広げること。
(3)行動計画の進捗状況を検討し、報告すること。
(4)人口に関する国際会議の政府代表国に国会議員が多数参加できるように努力し、同代表国に対して、今会議で採択された勧告を知らせること。
(g)グローバル・コミッティーに対して
(1)国会議員による地域、小地域または国内グループの設立を促し、協力するために、従来からのグローバルな努力を継続、強化すること。
(2)前記の国会議員グループの仕事を奨励、援助して、国会議員と適切な国際機関との非公式な結びつきを生み出すこと。
(3)国連の内外において、人口と開発の問題について国会議員が主要な役割を果たすべく、広く推進努力をすること。
 
結び:
13. 最後に、行動計画の早期実現を願って、今会議に集まった我々国会議員一同は、人口と開発プログラムの恩典を広く各レベルの人々、とりわけ貧しい、恵まれぬ人々に広めて、人々の社会・経済的レベルを向上させるために働く所存である。そのために、人類のよりよい明日のために行動計画を実行すべく献身することを、改めてここに決意するものである。







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