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第3回国際人口会議
「勧告」
(要旨)
1984年8月14日
メキシコ国、メキシコシティー
 
前文:
1. 1974年のブカレスト世界人口会議以後、世界の社会・政治情勢が著しく変化する中で、世界人口行動計画(以下「行動計画」)の目標は、達成されたものもあれば未達成のものもあり、また新たな問題も現れてきており、行動計画はその補強が必要となった。
 
2. 過去10年間で世界全体の人口の増加率は低下したが、アフリカ等途上国の中には逆に高くなった国もある。家族計画の普及、婦人の地位の向上による出生率の低下は見られるが、途上国においてはいまだ避妊の普及は十分ではなく、50パーセント以下の婦人しか避妊方法を利用していない状況である。人口都市集中が途上国では大きな問題であり、また、人口趨勢の変化により、人口高齢化の問題が現出している。
 
3. 今後10年間の人口問題解決にとって次の諸問題が課題である。
(a)今後とも増加する人口
(b)乳児および妊産婦の高い死亡率
(c)需要に追いつかない家族計画プログラム
(d)人口高齢化等を特徴とした人口構造の変化
(e)人口都市集中を中心とする国内人口移動、国際人口移動、難民等の諸問題
(f)婦人の地位の向上
(g)食料確保、保健および教育の充実
(h)データ収集・分析の向上
 
平和、安全保障と人口:
4. 平和と開発との密接な関係に留意しつつ、人間性を尊重した人口政策および経済・社会開発の前提条件となる平和、安全保障、軍縮、国際協力を促進させることが重要であり、資源は軍事よりは社会・経済目的により多く用いられるべきである。
 
勧告:
5. 経済社会開発と人口
(a)経済社会開発は人口問題解決の中枢的要素であり、また、人口は開発計画の非常に重要な要素であることに留意しつつ、開発政策は人口、資源、環境および開発との関連性をふまえた総合的な見地より策定されるべきである(勧告1)。
(b)先進国は、貿易障壁の減少、ODAの増加等を通ずる国際協力を行なうことが求められる(勧告3)。
 
6. 人口政策の推進
(a)人口政策を効果的に推進するためには、地域のニーズに合ったものにすべきであり、人口政策を策定するに当たっては、コミュニティおよびNGOの参加が促進されるべきである(勧告7)。
 
7. 人口増加
(a)人口増加が、国家目標を阻害すると考える国は、しかるべき人口政策を策定することが求められる(勧告8)。
 
8. 疾病率および死亡率
(a)死亡率の高い国は、2000年までに、最低、平均寿命60歳、乳児死亡率出生1000対70以下の達成を目指すべきである(勧告9)。
(b)妊産婦死亡率を2000年までに少なくとも半減させ、また人工妊娠中絶を回避する方法を考えるべきである(勧告13)。
(c)母子保健、出産間隔の観点から母乳保育を促進すべきである(勧告15)。
(d)婦人の教育水準と乳児死亡率との密接な関係にかんがみ、婦人の教育水準の向上を図るべきである(勧告16)。
 
9. 出産と家族
(a)政府や、NGOは出産年齢にあたる婦人のニーズ(必要)に応えるため家族計画プログラムに必要な資金を割り当てることが強く求められる(勧告21)。
(b)家族計画を進めるに当たっては、人口政策は強制的、差別的なものであってはならず、社会に普及している文化的価値および国際的に認められた人権を考慮したものでなければならない(勧告25)。
(c)出生率に関する政策を採用しようとする国は、量的な目標を設定すべきである(勧告27)。
 
10. 婦人の地位
(a)政府は開発のすべての局面における婦人の参加を図ることが強く求められる(勧告29等)。
(b)婦人差別撤廃条約の早期批准が求められる(勧告33)。
(c)出生の開始を遅らせる政策を促進すべきである(勧告29、31)。
 
11. 人口分布と国内人口移動
(a)人口政策は49条において個人または集団を占領地から強制的に移住させること、また、占領地へ自国民を移住させることを禁じた「1949年の戦時における市民の保護に関するジュネーブ条約」のような国際協定の趣旨に一致したものでなければならなく、更に力によって占領地に入植地を設けることは、不法であり、国際社会によって非難されるべきものである。
(b)政府は、個人、家族、各種の社会経済グループ、コミュニティ、また、国全体の利益を包括的に分析し、国内移動に関する政策を策定することが求められる(勧告34、35)。
(c)農村の生活水準自体を向上させるための農村開発計画に優先度を置くべきである(勧告41)。
 
12. 国際人口移動
(a)国際人口移動に係る政策は不法移住者も含め移住労働者の基本的人権を重視すべきである(勧告43、46)。
(b)条件の良い雇用創出等を通じ、頭脳流出の原因となる要素をなくすことを目的とした、国内的、国際的な流出防止策を策定すべきである(勧告44)。
 
13. 難 民
(a)難民の基本的人権を保障するためにも、各国が難民条約を批准することが求められる(勧告52)。
(d)難民流出の原因の除去、自主的な帰還のための条件の創出等が求められる(勧告53)。
 
14. 人口構造
(a)人口高齢化の問題は、その開発全般、社会サービス、医療等に対する影響を分析し、それをもとに、政府は高齢者の福祉と安全を確保する施策をとることが求められる。他方、高齢者を単なる被扶養グループという観点でなく、社会に対し活発な貢献を行なうことができるグループとして見る必要がある(勧告56)。
 
15. データ収集、分析、研究
(a)政府は効果的な人口政策策定の基礎となる人口推計を行なうために人口動向をモニターし評価すべきである(勧告59)。また、国内の標準調査を確立または強化すべきである(勧告63)。
(b)研究の分野においては専門家の訓練、モニタリング、評価等を含めた実用的な研究に重点を置くとともに、出生率の決定要因に関する社会面での研究にも優先度をおくべきである(勧告67)
 
16. 各国政府の役割
(a)政府は自ら人口政策を進めるに当たって、自助努力に高い優先度を置くとともに、モニタリング、評価システムの確立、国際協力の国内プログラムとの調整、人口計画策定、実施に際し地域社会(コミュニティ)の参加を確保することが求められる(勧告74)。
 
17. 国際協力の役割
(a)国際社会は行動計画の継続的実施のために重要な役割を果たすべきであり、人口分野における援助を増加させることが求められる(勧告76、79)。
(b)UNFPAの活動が強化されるべきであり、その活動について、事務総長に対し1986年までに報告を提出するよう要請する(勧告80)。
(c)国会議員、NGO、マス・メディア、政策担当者等が国際協力の分野で果たしている役割を今後とも継続させていくことが求められる(勧告81、82、83)。







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