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VI. K造船
1. 艤装関連組織
 製造部門は、船殻課、艤装課、組立課に分かれ、艤装課はさらに船体艤装、機関艤装、電気艤装の3係に分かれている。
 艤装工場は、本社工場と川をはさんだ対岸に位置し、こちらで進水後の艤装工事全般が施工される。
2. 職種別技能者数
表6.1 職種別技能者数(K造船)
職種 人員 協力会社数 発注形式 管理物量 現在の課題
本工 協力工 技量低下 人員確保 管理能力
塗装 0 9 9 1 材工一括 m2      
船具 8 8 16 1 人工提供 径×長×Kg      
鉄艤装 4 15 19 1 材工一括 金物図    
甲板仕上げ 4 5 9 1 取付据付 工数      
木艤装・保温・防熱 0 7 7 1 材工一括 m2      
配管 0 6 6 1 取付据付 m      
製缶 0 6 6 1 取付据付 個数      
機械加工 0 5 5 1 取付据付 重量
時間
     
機関仕上げ 4 14 18 1 取付据付 時間    
空調 0 7 7 1 材工一括 m      
電装 0 7 7 1 材工一括 m      
合計 22 92 114 11  
 
3. 職種別作業内容
 スタッフ、本工は自らも作業を行いながら、協力工を管理、監督する。
(1)一括外注
 材工込みの一括外注対象は、塗装、鉄艤装、木艤装、機械加工(機器台、推進軸仕上げ加工)、電装、空調。
 いわゆる工作図や詳細図はなく基本図だけを提供するので、技能者は現場あわせなどの応用力を要求される。
(2)構内取付け/据付
 構内だけで作業が行われる作業は、取付・据付工事と、人工提供工事にわかれる。
 前者には、甲板/機械仕上げ、配管、製缶
 後者には、船具と一部の鉄艤装(組立、溶接)がある。
4. 外注政策と発注形式
・原則、内作中心。
・製作、加工を伴う作業は、材工込みの一括外注を指向。
・このため、作業量を示す管理量を作業ごとに設定して、見積査定を密に行っている。
(船具ワイヤでは径、長さ、重量を掛け合わせた管理量を採用)。
5. 雇用環境
・都会地ということもあり、撓鉄、配管、足場は人員確保が困難で、かなり厳しい状況にある。
・ついで塗装、鉄艤装、機関仕上げの人員確保が難しい。
・これらの職種は、納期確保の必要に迫られれば、単価優遇で確保する。
6. 技能レベルと必要資格
 最近の傾向として技量低下が憂慮される職種は、配管。本職種は、系統図だけで現場合わせ取材を行わなければならない該社の作業方法も一因である。
7. 教育訓練
(1)教育訓練、技能伝承
 鉄艤装(鉄工)、機関仕上げは、入社時、1000H(半年)は時間計上せず、マンツーマン教育訓練を行っている。
 協力会社は、本社より時間は短いものの(塗装(25H)、鉄艤装(100H)、配管(500H)、機関仕上げ(100H))かなりの訓練期間を設けている。
 しかし、若手の毎年採用する余裕がなく、一方では高齢化が進むので、後継者育成に不安をもっている。
(2)資格認定と登録制
 造船には、資格制がなく、職人としてのプライドが希薄になりつつあるので、資格認定制には賛成。
 ただ、個人の登録制度には賛成できない。造船所が協力会社に増員を求めるときは、技能者個人を採用するのではなく、協力企業のグループの一員として採用し、施工してもらうので、個人単位で登録すると管理監督の手間が増える。
8. 工事遂行上の課題
 主な問題は、人員確保。工事量が一定していればいいが、半年先の工事量が見えないので、いきおい協力工も「必要なときに、必要な人員を、必要な期間だけ調達」することになるので、所定の技量をもった人員を確保するのが難しい。
若年者を採用しても定着が良くないため、全体の技量向上ができず、始終、未熟練→半熟練→離職→未熟練者採用の悪循環に陥っている。
9. 外国人労働者
・本社、協力会社とも採用していない。
 
11. 協力会社の状況
(1)山谷調整法
 造船所の繁閑差が激しいため、いくつかの対応策をとっている。
 一つは、少人数単位の孫請け会社の起用。協力会社自身が、「孫請け」を活用することで、山谷調整を行う。
 閑なときの陸工事の確保。
 ただし、特に年輩の孫請け技能者は、他所での作業を好まず(かつての“渡り職人”の忌避)、閑なおりは失業保険の給付を受けたがる傾向にある。
(2)教育、技能伝承
 特段のことはしていない。
 技能レベル向上は必要であるが、地域の同業者で共同実施したことはない。あくまで、個々の企業問題として、協調策はとられていない。
 
以上







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