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V. Y造船
1. 艤装関連組織
・大別して4部体制
・艤装関連組織は、「生産部」の「船装課」、「機装課」で分担施工管理
2. 職種別技能者数
・工事量の波が大きいため、必然的に本工より協力工に比重が移り、協力工比率が上昇しつつある。経営としても、本傾向を容認せざるを得なくなっている。
・特に配管、機関仕上げのような核となる工事は本工中心としたいが、これも繁閑差大のため、協力工依存率が増えつつある。
表5.1 職種別技能者数(Y造船)
職種 人員 協力会社数 発注形式 管理物量 現在の課題
本工 協力工 技量低下 人員確保 管理能力
船体 20 77 97            
運搬 7 14 21            
塗装 1 27 28 3 人工提供 実行予算    
鉄艤 12 35 47 7 人工提供  
木艤 0 8 8 1 人工提供    
配管 3 33 42 4 人工提供    
仕上げ 8 20 28 3 人工提供    
電工 1 14 15 2 人工提供    
船渠 7 5 12 1 人工提供    
社内工事 1 4 5 1 人工提供      
合計 66 237 303 22  
 
3. 職種別作業内容
(1)一括外注
・木工職:材工込み。構内の木工工場で木材加工
・電工職:いわゆる電装職で、電線、電線長計測・切断、ラック/バンド製作、配線(敷
設)の一括外注。
(2)構内作業
・塗装:区画別請負制をとっている。外板は、左右舷で請負業者を変える。
・配管:機関配管と甲板配管の区別はしていない。
 
4. 外注政策と発注形式
・鉄艤品や管は、内作を原則とし、構内能力を超えた分だけを加工外注に出す。しかし、都合のいいときだけ超過分を外注に出すのは、相手の問題もあり、100%内作といかず、アイドルとのバランスが悩みの種になっている。
・近隣に造船所や関連工場が少ないため、外注は輸送費と輸送時間がかかるのが悩み。このため、ブロック外注、鉄艤品外注は近隣、近県中心とならざるをえない。
・ただし、マンホールやビットは瀬戸内地区から、資材として購入。
・また、管一品図を支給して瀬戸内地区に外注することがある。
・構内協力会社へは、原則「責任施工(請負)」で、関連する生産設計図や取付・据付図を支給する。
 
5. 雇用環境
・造船集積地から離れているため、すべての職種にわたり充足困難。
・いったん陸上業種や他地域(京浜地区など)に流れると、呼び戻すのは困難。
・50前後までは、生活のため、地元で頑張ってくれる人もいるが、60前後になると、労働意欲が減退する傾向にある。3Kで仕事がきついうえに、報酬が低いことも原因。
・現在の工事量でとりあえず、充足されている職種は、
 現図:定年退職者を必要に応じ、臨時雇い
 組立:転用がきくため、比較的集めやすい。
 船具:中途採用したため、とりあえず間に合い
・他地区からスポットを集めるには、あご足の問題もあり、単価面で採算があわない。
 
6. 技能レベルと必要資格
・工事量の問題で、急激に協力工比率が上昇しつつあり、今後、技術面の低下が懸念されている。
・採用条件は、職種を問わず、経験年数と保有資格。
 
7. 教育訓練
(1)技能伝承
・撓鉄:若者の養成に意欲をもっているベテランがいる。
・配管:本工中心から協力会社責任施工に移行する過渡期にあたり、ボーシンが少ない。
(2)教育訓練
・現在、入社時に行うだけで、技量向上訓練はほとんど行っていない。
・専ら、先輩によるOJTが中心。
・巡回指導方式は「賛成」。
・他所の会社で技量講習を受けても、設備、ガスの違いなどで、自社に直接つながらないと受講価値がなくなる。
(3)資格認定と登録制
・資格認定制は、個人の啓発にもなり「賛成」。
・個人ベースの登録制には「反対」。理由は、技量の低い者は、登録されないだろうし、技量の確かなボーシンの1本つりにつながりかねないこと。ボーシンがいなくなれば、若年者の訓練、技能伝承ができなくなるばかりでなく、協力業者の経営も成り立たなくなる。したがい、登録制は、「協力業者」単位(=ボーシン+配下の技能見習者)が前提。
 
8. 工事遂行上の課題
・緊急の課題は、「人員の確保」。厳密には、繁忙時に容易に「確保」でき、閑散時には、おひきとりいただく、きわめて柔軟な「人員確保」方式。技量低下より、喫緊の課題。
・協力工依存率上昇に伴い、塗装、船具、鉄艤装、木艤装の各職種で管理監督者(ボーシン)の量が問題になりつつある。
 
9. 外国人労働者
・本社、協力会社とも「いない」。
・地元の水産物加工工場には多くの外国人労働者を採用している。
 
10. 雇用流動化に対する考え
・立地上、きわめて厄介な立場にある。論理的には、「自由に技能者を調達」できれば問題ないが、いったん地元を離れると「戻ってこない」、あるいは「足元をみられた高賃金の補償」の危惧も大きく、即断できない、とのこと。
 
11. 協力会社の状況
 機関仕上げ、配管・鉄艤、船殻組立・取付けの3業者の社長と面談した。以下、その要点である。
(1)山谷調整法
・山谷激化の原因は、「漁船構造改善絡みの転売、新造」。転売先(国)でその船が漁をするので、漁船総量が過剰になった。本来、スクラップ&ビルドにすべきだった。
・単価低落は、元請、下請け双方が協力して対処するしかない。資材購買で原資をひねり出すのが、当面の方策。
・とにかく、工事量の安定確保が一番。山谷が激しいと、すべての施策が狂う。
→ 陸上工事をバッファに使用。両方できるように多能化
→ 山は残業で対応。
→ 近隣の会社と人員融通。ただし、多忙時が重なるのが頭痛の種。
(2)従業員
・概して、50歳以上と高齢化。
・しかし、積極的に若年者に世代交代を図っている会社も存在する。
・高齢化している会社では、若年者を採用しても長続きせず、2〜3ヶ月で退職している。これは、周りの社員がすべて父親ほどの高齢者で、話相手がいないことも大きく影響していると思われる。
・しかし、高齢化会社では、「若者は労働意欲が希薄」「頑張りがない」などと評価がよくなく、悪循環に陥っている。
(3)教育、技能伝承
・ものが分かる人と作業する人は別。管理する人(本工、技術スタッフ)は、相応の技術を維持する義務がある。
・自社で教育訓練する時間的、金銭的余裕はないため、ボーシン、先輩のOJTが中心。
(4)教育センタの設立について
・新入社員教育・訓練施設の設立には賛成。ただし、協力会社は、中途採用が中心のため、開講時期は随時が望ましい。
・負担費用は、因島技術センターにならい、受講費用だけでなく、日当補助も必要。
(5)後継者
・いずれも、後継者は「いない」。
 
以上







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