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7. 教育訓練
(1)技能伝承
・技能伝承における不安
→ 大半が有限会社で小規模零細。株式会社は2〜3社。過去3年間で39名採用したが、定着したのは20名ほどで歩留まりが悪い。
→ 新卒から中途採用へ変更。ポリテクセンター出身者がいい。
→ 本社スタッフが“図面の見方”の教育を行うことを計画
→ 配管、仕上げ(機器据付)のベテランに続くリーダがいないことに一抹の危惧を感じている。
→ 若い者と教育に対する考えが違うことも問題。若い人が若い人を教えるのが良いのではないか。撓鉄のベテランは、若い人に教えたがらない。自分で盗め主義。
→ 伝承が必要な職種:船台木工、船殻取付(ブロック組立、船台)、配管取付。
→ 自動化技術者の後継者育成が急務。海上公試は機関担当部長2人で協力会社の職人に指示命令しているが、その技術者の育成が急務。
・OJTの現状
→ 親方の姿勢次第。しっかり“叱れる”人が上にいないといけない。
・年齢構成
→ 10代:3%、20代:13%、30代:10%、40代:24%、50代:40%、60代:10%。業者により定年は異なるが、60歳が多いのではないか(不確か)。
→ 平均年齢は47歳
 
(2)教育訓練
・訓練センターへ派遣して訓練することについて
→ 効果的でやり易い。因島技術センターが受け入れるなら派遣したい。
・現在、これといった技能研修の仕組みは有していない。
・公的助成について
→ 多能工化に対する助成があればいい。当然、年齢的にも40、50歳代も対象にして欲しい。
(3)資格認定制
・作業員は親方と密接なつながりがある。したがい、登録するのは難しい。よしんば本人が登録を希望したとしても、親方の了解を得る必要がある。いろいろ問題(業者間のとりあいが起こる)があり、難しいのではないか。
・ハローワークからくる人で、職歴が多い人の採用は敬遠している。定着率が悪く、自分自身を鼻にかける傾向がある。
・溶接以外にこれといった資格がないので、“○○士”などの資格は、若い人には励みになるのではないか。
(4)後継者問題
・NCオペレータを育てるだけでも苦労している。育てた後、それだけ稼いでくれるわけでもないので、業者は大変。
・世の中が変わっている。時代にあわせていかなければならない。例えば、足場工をなくすために足場機械導入を考えたが、データ入力にものすごい手間がかかり、使いづらい。とはいえ、後継者育成は大事。
 
8. 工事遂行上の課題
・人員確保に困難を感じている職種は、塗装、鉄艤、船具、製缶、配管、甲板及び機関仕上げ、機械加工(軸路ボーリング)を殆どの職種にわたっている。
・技量低下が懸念されている職種は、配管取付けだけである。
・工事監督者の管理能力に問題を感じている職種は、配管取付け、船具、木艤。
・以上、総じて、技量云々よりまずは「人員確保」がより大きな課題となっている。
 
9. 外国人労働者
・フィリピンからの研修生6名×2(1、2年生)+実習生6名(3年生)=計18名。
・選抜は現地で行っている。
・労災などの費用負担を考えると日本人と変わらない(安くない)。
・安定性(勤務態度)があり、仕事の覚えがよい。日本人が見習って欲しいくらい。事故は起こしていない。全員寮住まい。会社の担当を1人おいている。
 
10. 雇用流動化に対する考え
・技能者は、その造船所にとり一種の「財産」で、一人前になるまでには相応の教育・訓練と経験を要している。したがい、造船技能者が供給過剰になっていない現時点では、造船所は、自社の技能者を閉鎖的に使用したがるのではないか。
 
11. 協力会社の状況
(注)以下は、協力事業協同組合 副理事長との質疑応答の概要であるが、個人意見を含めて積極的に考えを聞かせてもらったため、必ずしも共同組合全体の実情、意見を代表しているわけではない。
(1)100%下請け依存上の問題
・雇用上は不利。しかし、最近は慣れた。
→ 習熟度があがると転出したりする問題もあり。
→ また規模が小さい企業が多いので、作業上のつなぎの問題もある。
→ 大手のようなサブコンラクタではない。したがい、業者レベルは高い(業者意見)。
・入れ替え率:<10%(定かではない)で、下請けといっても実質は準社員扱い。
(2)雇用環境
・2年前頃からとりやすくなった。1業者で毎年10名程度新卒を採用しているところもある。組合全体では14から15人。歩留まりは6〜7割。ハローワークは2割程度。
(3)技能伝承
・ベテランと若い人の組合わせに気遣い。
・若い人は、地元志向になっている。
・食事会などを行って育てるのに気を使っているが、定着するかどうかはリーダ次第。すぐ1つ上の仕事をやらせて興味を持たせるような仕事の与え方が重要。また、よく声をかけてやることも必要。
・新人に対しては、配管は早期艤装からはじめ、仕上げは雑作業でなくメインの仕事の先手をやらせている。
・水曜定時から、図面の見方を教えたこともある。
・共同訓練センターについて
→ 非常に良いこと。賃金面の歯止めが必要。ただ、せっかく訓練しても転職されると困る。
→ 3ヶ月の基礎教育で若い者はだいぶ変わる。規律、モラルの教育が大事。
 
(4)技量レベルと資格認定制
・資格認定制
→ 賛否両論あり。作ると「壁」ができる。陸上はみな資格という壁を作って新規参入の壁を高くしている。ランクづけはあった方がいいが、規制(その資格がないと仕事を出さない等)になると困る。
・技量レベルによる給与差
→ 5段階あり。3級が普通で、4級はおおよそ3ヶ月経過、5級は全くの素人。1、2級は管理者レベル。より多くの人数の管理能力があるほうが1級。
→ 社長自身が各人を観察し、総合的に判断。腕以外の要素も大きい。
・技量レベルによる生産性の差:単価差を補えるか?
→ 量より質が重要。腕の差に比し、賃金の差は余りない(実力本位ではあるが、だからといって実力に見合って賃金アップはしない)。
・管製作と取付は完全分業
→ 製作と取付は、原則、別々で交流させていない。取付職が製作すると仕事が粗くなる。
・とらせている資格
→ 玉掛、アーク溶接、高所作業車。
→ 機関整備士は役にたたない。
→ SUS溶接資格取得は賃金アップ。要は“仕事に不可欠で当然保有すべき資格は、賃金アップの対象としない”。
以上







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