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III. U造船
1. 艤装関連組織
 製造部と鉄構部にわかれ、前者が船舶の建造を担当。艤装工事は、主に船装課、機装課が担当している。
 
2. 職種別技能者数
表3.1 艤装関係技能者数(U造船所)
職種 人員 協力会社数 発注形式 管理物量 現在の課題
本工 協力工 技量低下 人員確保 管理能力
塗装 1 20 21 1 人工提供 m2      
船具 3 0 3 0          
鉄艤装 2 10 12 1 取付・据付 トン
一品
     
甲板仕上げ 0 0 0 0          
木艤装・保温・防熱 1 16 17 2 材工一括 m2      
配管 11 39 50 5          
製缶 4 3 7 1 取付・据付 トン  
機械加工 0 0 0 0          
機関仕上げ 4 3 7 1   馬力
トン
 
空調 0 3 3 1          
電装 1 12 13 1 材工一括        
足場 0 6 6 1          
クレーン運転 2 2 4 1          
合計 29 114 143 15  
・足場(協力工)=6人(平常)、15人(多忙時)→ 解体時は20人(陸者で可)
・クレーン運転:3台4人(本工、協力工各2人)
 
3. 職種別作業内容
○電装
・電線はドラムで買い付け、構内で切断。
・電線用配管は、配管が担当。
○塗装
・外板塗装:ブラストと塗りは同一人で施工。
・造船所スタッフはインタバル、湿度、膜厚管理などの管理が中心。工業高校出。実際の配員は、協力会社のボーシンが行っている。
○船具:3人
・船長経験者(甲板艤装の作業長兼務、52歳)+水産高校出×2人(22歳、20歳)
・ワイヤ加工(本船取付用ステイ、玉掛ワイヤなど)も行っている。
○鉄艤
・製作は加工外注。構内の協力工は取付けのみ。ケミカルのパッセージも外注。
○甲板仕上げ:鉄艤の班長1人で施工。応援は機関仕上げと兼務(多能工化指向)
○木艤
・床舗装、木艤、保温防熱で各1社。防熱業者は専属で、他は他社と共用。
・木艤:材工もち(資材扱い)。衛生陶器含む。機器類は支給。照明は電気。
・居室:壁はパネル嵌め込み方式
○配管
・甲板配管と機関配管を分離。
・地上ブロック配管と取付は兼務。
・配管工の仕事は、圧力テスト、管の銘板、系統別色分けまで。
・本社の仕事は工数、品質、工期管理が中心。下積みの経験が重要。
○製缶
・製作は外注。鋼材支給。防熱は防熱屋が施工。
・構内技能者は取付、溶接のみ。多能工化指向。
○機械加工
・軸ボーリングは専門業者に外注(四国の業者)。舵のボーリングはなし(最初から仕上げでいる)。
・軸心見透しは、船台課長が指揮。レーザは未導入でピアノ線ベース。押し込みは機装課機関仕上げで行う。
・ブッシュの仕上げは別業者(仕上げ代は会社が指示)。
・工作機械はない。
○機関仕上げ
・主機は4分割で搭載。発電機、ポンプなどの補機関係工事も含む。
・主機ライナは、チョックファースト。
○空調:3人
・機器、ダクトは資材扱い。
・協力工3人で取付。
○足場
・15人。タンク内は、ピースがつけられないので総足場。バラすときは20人。
 
4. 外注政策と発注形式
・従業員=98人(除く管理職以上)、協力工=200人、計ほぼ300人で推移
 本工を採用しても定着率が悪いので、協力会社に「即戦力を採用」してもらう方向。
 結果的に外注率を徐々にあげていく。
・製造に関しては、今後、日本の造船界は外注がますます増え、取付作業だけが造船所に残る可能性が高い。したがい、造船所は管理、技術に磨きをかける必要がある。
 
5. 雇用環境
・製造業全般、業種を問わず人が集まらない。
→ 出勤率が悪くなる傾向(当日の出勤率は、出面ベースで94.9%)。
・入っても定着率が悪い。
 
6. 技能レベルと必要資格
○技能レベル
・鉄艤:特別の技量は必要ない。ただし、ステンレス製の荷油管だけは腕がいる。溶接の技量向上が中心。
・木艤:一括外注につき、技量問題は特に意識していない。
・配管:溶接技量(甲板は特に)と図面(系統図)の解読力がいる。特に、機関室配管は曲がりが多いので、系統図を読めなければならない。
・機関仕上げ:かつて機関を製造していたので結構、技量の高い人が多い。ただし、芯だしの技能伝承は今後、心配。
*軸心見透しはブロック位置決めと関係深いため、軸心見透しは造船所専門家の仕事。
*機関仕上げは、将来とも本工中心で行う。したがい、技能伝承も会社で責任をもつことになるので技量向上策を考える要あり。
・トラブルを経験することが「技能向上」には不可欠。
・技量向上には、意欲が一番。経験量より、じっくり経験させたほうがいい場合が多い
 
○必要資格
・配管溶接:資格必要。荷油管の裏波は特定の人にしかさせない。色物(SUS、クラッド)の溶接も同じ。
・機関整備士:資格保有者はいない。
・電装:一種、二種電気工事士。船舶電装士(船舶電装協会認定)保有者もいる。
・資格認定制度について:「差し迫った必要」は感じていない。
 
○技能の級分け
・給与体系見直し中であるが、その関係から級分けの必要性は感じている。
 
7. 教育訓練
○技能伝承について
・30、40代が少なく空白があることに不安。対策として「技術は人とともに去りぬ」にならないよう、作業手順をポンチ絵で示したマニュアルを作成し、教育に注力。
→ 伝承が必要な技能:ブロック大組立/船台の取付・溶接、塗装、機関仕上げ(造船特有)。
・OJT:行う余裕はない。OJTが機能している職種は、強いて言えば「仕上げ」。
○現場の年齢構成
・NC;平均28歳、型鋼卦書・切断;52歳、撓鉄;50歳
・小組立;50歳、大組立;55歳、船台組立;48〜50歳
・塗装;48〜9歳、甲板艤装;50〜52歳、甲板配管;47〜8歳
・機関仕上げ;40歳半ば、機関配管;52歳
○新入社員教育期間
→ 1ヶ月(ただし、H11年以降新入を採用していないので、最近の実績はない)
○公的あるいは共同研修所について
・公的助成の可否 → 現状で良いのではないか(新たな助成措置は不要?)。
・研修方式;センター式か巡回式か
→ センター式がいいのでは。設立されれば、参加させたい。ただし、新入社員だけでなくそれに準じる社員まで拡大することが望ましい。
・大分県南部での共同研修所設立について
→ どこがリーダシップをとれるかが問題。
→ 人が集まらないのではないか(それだけの需要があるかどうか疑問)。
・技能者のレベルアップ方法について
→ 熟練工はプライドがあるので難しい。マニュアルや訓練に「反発する」傾向がある。
→ 巡回指導であれば「受け入れる」可能性はある。
○資格登録制度について
・『顔』でつながっている現行よりは「良い」。希望する人だけ登録すればいい。
→ 定年退職する(した)人に限定しないと人事政策上、難しい。従い、企業にとってのメリットを含め運用を工夫しないとならないだろう。
→ 人余り(=供給過剰)は起こらない。退職スピードの方が早いので、能率のあがった分を補償する心配はないのではないか。100%子会社で定年退職者を雇用延長しているが、意欲のある人しか採用していない。意欲のない人は、腕がよく出ても採用しない。
・また、引退した人が、働く意思があるかどうかは別。
・さらに、他府県に住んでいる人が他所に移ってでもいくかどうかなど微妙な問題がある。
・個人情報の程度 → 資格に加え職歴も必要
○大手の技能者の採用について
→ 人による。かつて提携していた大手から出向してもらったNCの人は良くやってくれたが、家庭の事情で戻っていった。
→ 人が良く短期(1年くらい)であれば、協力会社にいれて働いてもらうことはできる(本体はダメ)。終身雇用はできない。
 
8. 工事遂行上の課題
・製缶、機関仕上げの2職種は、人員確保と技量低下問題を感じている。
 
9. 外国人労働者
 本社、協力会社とも採用していない。
 
10. 雇用流動化に対する考え
 次章(11. 協力会社の状況)、参照。
 
11. 協力会社の状況
○技能教育・訓練について
・就職率が悪くなったことと、下請けの人間を育ててもらう目的で、旧水産高校でガス、溶接の扱い方を教えてもらっている。資格はとれない。早い話、進路指導の先生が陰でしている状況。就職口がない社会情勢なので、良い方向ではある。
→ 行政から補助金がでれば「大手をふってできる」。学校で資格をとらせてくれるなら下請け企業としては大賛成。
→ 技能教育としては、ポリテクセンターがあり、資格をとらせてくれる。
・行政が補助することが前提。給与の1/3の費用がかかるのでは、教育費を払う余裕は下請けにはない。教育は現場で叩き込むのが一番、効果がある。
→ 造船所ほど賃金が安いところはない。行くところがないから、「造船所へでもいこうか」というのが若い者の本音ではないか。近隣の造船所でも若い者は入ってくるが、入っては辞めを繰り返している。
→ 船台の職人を育てるのが一番難しい。ある下請け会社では20歳代が6〜7人。60歳代は少なくなっている。
→ 給与が高くないと、造船所はもたないのではないか。
○雇用流動化:地域での労働事情について
・仕事があると、人の融通はしたがらない。他所の仕事するなら「出て行ってくれ」という造船所もあり難しい。ただし、裏では職人の貸し借りはしている。
○能率を上げた場合の補償方法:単価差/技能差の補償法
時間で還元するしかない。結局、元請ぐるみで他社と「かけっこ」「我慢競争」「サバイバル競争」することになる。
1人作業になった時点で1人前の人しか使えなくなった(単価上、および責任上)。
→ 高齢者が退職したら、後釜を採用するだけ。
 
以上







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