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3.4.6 舵
 一般に舵軸の各断面では、舵面に加わる水の圧力により曲げモーメントMとねじりモーメントQ(これをトルクともいう)とを同時に受けている。これらを求めるには、舵面に加わる水圧の大きさおよび圧力の中心の位置を知らなければならない。
(a)舵面に働く垂直圧力
 舵の面に働く圧力の大きさは、船の速度、操舵角、舵面積によって異なってくる。これについては次の公式が一般に広く用いられる。
ボーフォイの公式:(第3.24図参照)
P=58.8AV2 sinα (20)
 ここに、P=板の受ける圧力(kg)、A=板面積(m2)、v=板の速さ(m/sec)、α=水の進行方向と板面のなす角(これを迎角という)
 なお、実験によれば、α=35°のときに圧力が最大となるので、舵の強度計算にはα=35°のときの圧力を用いればよい。
 
第3.24図
(b)圧力の中心
 圧力の中心の前後方向の位置を求めるには、次式を用いる。
ジェッセルの公式(長方形板に関するもの):
x/b=0.195+0.305sinα (21)
 ここにx=板の前縁より圧力中心までの本平距離、b=長方形板の幅、α=板の迎角強度計算では、α=35°とすればよいから、(21)式でα=35°とおくと、
x/b=0.37 (22)
 そこで、実際の舵では、第3.25図のように、舵面を横に細長い長方形に分割して、各々の長方形(22)式を適用して、全体としての圧力中心の前後方向の位置を求める。
 圧力中心の鉛直方向の位置は簡単に、舵面積の重心と一致しているものとしてよい。
 このようにして、圧力の大きさと、圧力中心の位置がわかれば、その積によって舵頭材に働くねじりモーメントを求めることができる。
 
第3.25図
 
(c)舵頭材の計算
 舵頭材の計算は、舵の種類によっていくぶん違ってくる。すなわち、第3.26図(a)のような舵は、上端固定、下端支持と考えられるもので、この場合には曲げモーメントはねじりモーメントに比べて小さいので無視して差し支えない。次に(b)のようなマリーナ型舵は、上端固定、中間支持と考えられるもので、この場合には二つのモーメントは同程度の大きさとなる。次に(c)のようなハンギング型舵は、上端固定、下端自由と考えられるもので、この場合には曲げモーメントの方がねじりモーメントよりはるかに大となる。
 
第3.26図
 
 舵頭材に働くねじりモーメントは、(a)、(b)、(c)いずれの型式においても、舵面に働く水圧力と、その圧力中心の軸線ABよりの距離との積で与えられる。
 曲げモーメントは(a)型ではほとんど無視してよく、(b)型ではA端固定、B端支持のはりが第3.27図(a)に示すような水圧に比例した段階的荷重を受ける場合のA端における曲げモーメントの値をとればよい。(c)型ではやはり上端固定、下端自由のはりが第3.27図(b)のような場合のA端における曲げモーメントの値をとればよい。
 このようにして、ねじりモーメントと曲げモーメントの値がわかれば、舵頭材の寸法は次の公式により容易に計算することができる。
(23)
 ここに、M=曲げモーメント、Q=ねじりモーメント、d=舵頭材の直径、S=許容垂直応力であるSとしては7.88kgf/mm2(77N/mm2)くらいをとる。
 
第3.27図
 
3.4.7 溶接継手
 溶接継手の応力分布や破断強さは必ずしも単純なものではないが、継手の形状と寸法を決定するための強度計算では、のど断面内の応力分布を一様と仮定して簡単に行なうのが普通である。そしてのど断面について計算した垂直応力またはせん断応力が、許容応力よりも低くなるように継手形状と寸法を設計する。
 まず溶接継手に関する主な術語を以下に示す(第3.28図参照)。
 
(すみ肉溶接)
 
(突合せ溶接)
 
第3.28図
 
ビード:溶接棒を母材に溶着させたときに一工程でできた溶接部の形
脚(きゃく)長:すみ肉溶接の溶着金属が母材と融合している部分の長さ
のど厚:溶着金属の底部と母材との支点からビード表面までの最短距離。強度計算には補強盛りを除いた理論のど厚を使う。
溶け込み:溶着金属が母材と融合している部分の深さ
 次に、代表的な溶接継手について、のど断面の平均応力を計算する式を第3.29図にまとめて示す(溶接線方向の長さをlとする)。
(I)突合せ溶接継手
 
(II)すみ肉溶接継手
(イ)溶接線が引張荷重に直角方向の場合
(拡大画面:9KB)
 
(ロ)溶接線が引張荷重に平行の場合
(拡大画面:9KB)
 
(ハ)T型すみ肉溶接継手
(拡大画面:9KB)
 
第3.29図 代表的な溶接継手ののど断面の平均応力
 
 溶接継手の形状と寸法の決定にあたっては、実際に継手にかかる設計応力が接着部の材料の強さ(普通は引張強さ、またはせん断強さ)の何分の1かの安全な応力、すなわち許容応力を越えないように設計する。なお設計上継手効率が重要であるが、これは継手の破断強さが母材の破断強さの何%の大きさかを示す数値である。引張では引張強さどうしを、せん断ではせん断強さどうしの比を用いる。
 継手の許容応力を決定する主な方法として2種類ある。その1つは、溶着金属の機械的性質をもとにして安全率を考慮して継手の許容応力を直接指定する方法であり、他は継手効率を定めて母材の許容応力に継手効率をかけた値を、継手の許容応力とする方法である。許容応力、継手効率の値は各種の規程に応じてまちまちであるが、最近多くの規程で継手効率を100%としているが、これは溶接技術の進歩を物語るものである。参考のため、日本機械学会提案の許容応力を第3.2表に示す。
 
3.2表 日本機械学会提案の軟鋼溶接継手の許容応力
荷重 継手強度(kgf/mm2) 安全率 許容応力(kgf/mm2) 備考
静荷重 引張 28〜34 3.3〜4.0
(3.0)
7.0〜10.0
(9.0〜12.0)
(1)カッコ内の数字は母材に対する値を参考のために併記したものである。
(2)すみ肉溶接には本表中の許容応力に継手効率80%をかける。
圧縮 30〜35 3.0〜4.0
(3.0)
7.5〜12.0
(9.0〜12.0)
 
せん断 21〜28 3.3〜4.0
(3.0)
5.0〜8.5
(7.2〜10.0)
 
吊上動荷重 引張圧縮   6.0〜8.0
(5.0)
3.5〜6.0
(5.4〜7.0)
 
せん断   6.0〜8.0
(4.0〜5.0)
2.5〜4.5
(4.3〜5.6)
 
振動荷重 引張圧縮   9.5〜13.0
(8〜12)
2.0〜3.5
(4.8〜6.0)
 
せん断   9.5〜13.0
( 〜 )
1.5〜3.0
(3.6〜4.8)
 







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