3.4.4 甲板および外板
甲板および外板は船体の縦強度部材として働くほか、局部強度材としても種々の甲板荷重および水圧に耐えなければならない。
局部強度としては、座屈強度(甲板、船底外板の圧縮座屈、船側外板のせん断座屈)および水圧・甲板荷重などによる曲げ強度の二つについて考えなければならない。
例えば第3.17図(a)のように四辺を支持した板が圧縮を受けると、圧縮応力がある限界値Scrに達すると平面状態が不安定となり、図のように板に垂直方向のたわみを生じてそれ以上の応力に耐えられなくなる。このような現象を、座屈という。(a)の場合は圧縮座屈といい、座屈の生じる限界応力Scrを座屈応力という。また(b)のように、板がせん断応力を受ける場合もせん断応力がある限界値Scrに達すると、図のように板に垂直方向のたわみを生じて座屈する。これを、せん断座屈という。
局部強度を考え場合は、縦通材・横置材に囲まれた板だけのパネルとさらに大きな区画、例えば横隔壁と船側外板に囲まれた板と桁材からなる広い部分の両方について検討する必要がある。
(a)圧縮座屈
第3.17図(a)
(b)せん断座屈
第3.17図(b)
(1)板だけのパネルに関するもの
a 座屈応力
甲板、船底外板はフレーム・縦通材により囲まれた板を取り出して、第3.18図に示すように、一方向に圧縮される四辺支持の長方形板として考える。図において、a=フレームスペース(横置材間距離)、b=縦通材間隔、t=板厚である。
第3.18図
a/t、b/aがわかれば、種々の公式あるいは計算図表を用いて、座屈応力Scrを計算できる。板に生ずる圧縮応力をこえてはならない。一般に、a/tが大きいほど(すなわち板が薄いほど)座屈の心配がある。もっとも座屈が起こっても直ちに破損するわけではないから必ずしも船の致命傷とはならない。
船側外板のせん断座屈についても同様に検討する必要がある。
b 横荷重(水圧、甲板荷重など)による外板のたわみと応力
外板や甲板のように連続したパネルに横荷重が加わる場合には、第3.19図のように、骨組により囲まれた板を取り出して、これを四辺固定の長方形板として考える。図の長方形板(a>bとする)が分布荷重を受ける場合、最大たわみは中央点0に生じ、最大曲げ応力は長辺の中央Aに生じる。
第3.19図
(2)大きな区画全体に対するもの
甲板、船側外板、船底外板などは第3.20図に示すように、縦横のスチフナにより補強された平板となっている。このようなものを、補強板という。
第3.20図
図のような補強板が、面に平行な圧縮応力を受けるときに現われる座屈には次の二つの型がある。
(i)スチフナがほとんど変形せず、座屈が主として平板のパネルに生じる場合
(ii)補強板全体が一体として座屈する場合
スチフナの曲げ剛性が小さいときは、板の全体としての座屈が起こり((ii)の型)、スチフナの剛性を大きくするほど座屈強度が高まる。しかし、スチフナの剛性がある限度以上になるとパネルだけの座屈が現われる((i)の型)。補強板では一般にパネルだけの座屈が生じるように計画される。パネルだけの座屈の場合の取扱い方は前と同様である。
補強板が横荷重を受ける場合のたわみと応力は計算図表を用いて求められる。
3.4.5 柱
主として軸方向の圧縮荷重を受ける構造部材を、柱という。断面の寸法に比べて長さの長い柱がその縦軸に沿って圧縮力を受けるときには、圧縮破壊する以前に第3.21図のように、横方向のたわみを生じて腰がくだけてしまう。このような現象を(柱の)座屈という。
一般に、柱は二つの水平部材の間隔が変わりそうなところに突張りとして配置するもので、船では、ピラーを甲板の間・甲板と内底板の間などに置いて、甲板荷重の一部を受け持たせるとともに、甲板ビームのスパンを短くすることにも役立たせている。また、デリックブームが貨物をつり上げたときにも、同様な圧縮荷重を受ける柱として働く。
柱が受け持たなければならない圧縮力よりも小さい力で座屈を起こすようでは、柱としての役に立たないわけであるから、あらかじめ座屈応力を計算して、長さに対して適当な断面寸法を決める必要がある。
座屈に大きな影響があるのは、柱の細長比との両端の支え方である。
(a)細長比
断面の寸法が小さくて(細くて)長さの長い柱ほど座屈を起こしやすいことはいうまでもないが、断面の寸法が同じでも、座屈に強いものもあれば弱いものもある。柱の長短の比較の基準は、細長比の大小による。
第3.21図
細長比とは、柱の長さlを断面の最小回転半径kで割った、l/kである。
断面の最小回転半径kは、断面の面積をa、断面二次モーメントをIとすれば、I=k2×a
あるいは
(19)
で与えられる。
例えば、第2.22図(a)は中実丸棒で、kは棒の直径dの0.25倍、図の(b)は中空円筒で、kは円筒の平均直径dm(内径と外径の平均値)の約0.35倍である。
柱を座屈の心配なく圧縮力に耐えさせるためには、細長比はなるべく小さいほうがよく、船で実際に使うときは、中実丸棒のピラーで150以下、中空円筒の特設ピラーで90以下とすることが望ましい。
第3.22図
(b)両端の支え方
柱の座屈は両端の支え方にも左右される。
第3.21図に、いろいろな支え方を示しているが、はりの場合と同様に、(a)を両端支持、(b)を一端自由他端固定、(c)を一端支持他端固定、(d)を両端固定という。これらの座屈応力は、(b)を1とすると、(a)は4倍、(c)は約8倍、(d)は16倍となるこら、柱はなるべく(d)のように両端をしっかりと固定して、荷重をかけてもこの部分が常に垂直に立っているように取付け方に気をくばるのがよい。
この場合、とくに注意しなければならないことは、せっかくしっかりと固定しても、相手の甲板や内底板が弱いと、土台もろとも曲がってしまうので、両端固定のつもりでも、実際には支持端に近いものになってしまう。例えば、第3.23図(b)のように、甲板が弱く、内底板が強ければ、下端は固定、上端は支持とみるのが妥当である。
第3.23図
|