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3.4 各部構造の設計
3.4.1 諸開口
 縦強度を受け持つ上甲板や外板にはいろいろな開口がある。上甲板のハッチ・機関室口など外板の舷門・載貨門などがそれである。
 これらの開口の周囲、とくに四隅には大きな応力が集中するから、ホギング・サギングのときにこの個所に割れ目がはいることがある。これに対して第3.11図に示すように、
(1)開口の四隅に丸みをつける。
(2)開口の四隅に甲板や外板と同じ厚さの二重張板をあてるか、あるいはあらかじめ約2倍の厚さの板を配置する。
(3)丈夫なコーミングを付けて開口部の変形を防ぐとともに、開口のため切断されたビームやフレームの端を取りまとめて、力の伝達に支障のないようにする。
 
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第3.11図
 
 なお、ハッチの四隅に生ずる応力集中は、ハッチの丸みの半径rとハッチの幅bとの比r/bによって支配される(第3.12図参照)。r/bが大きくなると、応力集中は急に減少し、その比が0.2以上になるとあまり変化がなくなる。したがって応力集中を減少させるにはr/bを大きくすることが最も有効である。
 
第3.12図
 
3.4.2 船楼端
 上甲板の上に、船橋楼などの船楼がある所とない所とでは船の深さが急に変わるから縦強度剛性が不連続となって、その境目の船楼端の近くには大きな応力集中が生じる。この応力集中の大きさは船楼端側外板の半径rの大きさ、主構造の深さ、船楼の長さおよび高さなどに関係する。船楼の長さが大きいほど、端部の応力集中は大きくなるが、船楼の長さが高さの数倍以上になるとほとんど変化がなくなる。
 第3.13図に示すような上下対象な凸形模型による実験によると、r/dが大きいほど、またd/Dが大きいほど、応力集中が減少する(すなわち、Smax/Soが小さくなる)。これからわかるように、船楼端の応力集中を緩和するには、r/dをできるだけ大きく平行部から船楼端へ移る部分の曲率の変化をできるだけ小さくするのが望ましい。また、板厚を増すなどして、その部分の強度自体を上げる方法が考えられる。
 
第3.13図
 
また、甲板室は船体が縦曲げ変形を起こすと、一般に第3.14図に示すように、主構造と逆方向に曲げ変形を生じる傾向がある。そのために端部では図示のような垂直反力が働き、それが損傷の原因となることもある。この集中力は、その部分の甲板のたわみ剛性が大きいほど大きくなる。それゆえこの集中力を減少させるには、甲板下の横隔壁の位置を甲板室端から離すなどの方法により、その部分の甲板のたわみ剛性を減少させるか、または甲板室側壁と甲板とのとり合い山形鋼などを入れて、それをバネとして働かせ、主構造と甲板室との相対たわみによる反力を減ずる方法が有効である。
 
第3.14図
 
3.4.3 隔壁
 一般に横隔壁は直接には外水圧による船体の変形に対して有力な抵抗材として横強度に寄与し、間接には隔壁位置で船体断面の大きな変形を防ぐことによって縦強度材の有効性低下を防ぐことにより縦強度にも寄与しているのである。したがって長大貨物を運ぶ船のように隔壁数の少ない船を設計する場合には、このことも当然考慮して、ウエッブフレームなどによる補強を行なわなければならない。
 しかし、一般に隔壁の構造寸法決定の直接の基準となっているのは、局部強度、すなわち船体に積み込まれた油または水、あるいは事故により船内に浸水した海水による圧力を受ける場合の強度および剛性である。
 隔壁には、その使用目的に応じて次の三種類がある。
(i)深水タンク隔壁、油タンク隔壁:常用的に水または油を入れる水タンクまたは油タンクの壁面となる隔壁。
(ii)水密隔壁:万一の遭難・事故のときに、浸水を局限するために設ける水密隔壁、すなわち貨物船の貨物倉間の隔壁など。
(iii)仕切隔壁:たんに仕切のために設ける非水密隔壁できわめて軽構造のもの、すなわち出入口または窓のあいている船室・倉庫などの仕切壁など。
 (i)のように常時液圧を受けるものと、(ii)のように船の一生を通じて一度あるかないかの浸水に備えてのものとでは、その構造寸法の決定基準に差があるのはもちろんである。
(1)平板型隔壁(普通型隔壁)
 平板型隔壁とは、平板にスチフナを取付た構造の隔壁で、通常平板は横張りにし、スチフナは比較的密な心距で立て方向に並列に配置されている。なお、隔壁の面積が大きい場合または大きい強度および剛性が要求される場合には立てスチフナと直交して水平方向に水平ガーダまたは水平スチフナが設けられる。
(a)スチフナ(防撓材)
(i)立てスチフナのみを有する隔壁
 一般に隔壁中央部のスチフナが最も大きい曲げモーメントを受けると考えられるから隔壁全体について考える代わりに、中央部のスチフナ心距についてその強度および剛性を考える。
 この場合、スチフナが液圧により曲げ作用を受けるときは、これに固着する隔壁板の一部分も一体となって曲げに抵抗するが、スチフナより少し離れた部分は遊びの状態にあってほとんど寄与しない。この際、スチフナとともに働くと考える板の幅を、有効幅という。
 こうしてスチフナと有効幅だけの平板から構成されるはりが、一心距間の液圧を受ける問題として考えればよい(第3.15図参照)。このはりの両端の固着度(すなわち固定とみなされるかあるいは単純支持とみなされるか、あるいはその中間か)は、スチフナとこれに結合される隣接部材の剛度およびスチフナ隣接部材との結合方法により定められる。
 
第3.15図
 
(ii)水平ガーダを有する隔壁
 立てスチフナが剛性の大きな一本または数本の水平ガーダにより支持されている隔壁においては、立てスチフナおよび有効幅だけの平板からなる多くのはりが、水平ガーダ(有効幅の平板を含む)により支持されている格子構造について強度および剛性を計算すればよい。
 この場合、立てスチフナの心距が密であるから、液圧はすべて立てスチフナにかかり水平ガーダは立てスチフナから伝えられる荷重のみを受けると考え、さらに水平ガーダの受ける荷重を分布荷重とみなせば、比較的簡単に計算できる。
(b)隔壁板
 隔壁板は有効幅としてスチフナ、ガーダとともに働き、はりとしての応力を受けるが、同時に表面に液圧を受ける平板としての応力を受ける。液圧を受ける平板としての強度および剛性が隔壁板の寸法決定の基準となっている。
(2)波形隔壁
 隔壁板を第3.16図のように曲げると、曲げ剛性が増大してスチフナをほとんど省略することができる。これを波形隔壁といい、近年油送船の隔壁によく用いられる。板自身がスチフナの役目をも兼ねていて材料が合理的に配置され、また中立軸が断面の中央にくるので断面係数を比較的大きくできる。
 
第3.16図
 
 第3.16図は波形隔壁断面の一波形(一心距s、波長ともいう)の部分を示すもので、この部分の断面係数は次式により与えられる。
断面係数 Z=I/(d/2)=1/3(3b+c)td (18)
 ここに、b=波項または波底部の幅、c=波の傾斜部の長さ、d=波の高さ、t=板厚、b、c、dなどの寸法は板の中心線について測るものとする。
 この一波長の波板を、普通型隔壁における一心距のスチフナと有効幅の平板から構成されたはりに相当するものとして扱う。この場合、通常船体構造に用いられる構造寸法の波板ではその断面全部がはりとして有効に働くとしてよいので、波形隔壁においても波板一波長を一波長の心距を持つはりとみなせば、普通型隔壁と同様に計算できる。
 波形および普通型隔壁の強度・剛性を比べると、一般に波板構造では波板両端において固着度を大きくすることがむずかしく、またその構造上からもたわみが大きくなりやすい。しかし断面二次モーメントが同じときは、断面係数が大きく応力は小さくなる。







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