3.3.3 鋼材の組み方
鋼板は力のかかる方向に垂直におく(たとえば船底外板が水圧を受ける場合、タンクの側板が水圧をう受る場合など)のと、力が面の方向に働く場合(たとえば、船体全体の曲げすなわち、ホギング、サギングによって、甲板、船底外板が船の長さ方向に引張られたり、圧縮されたりする)との両方の場合がある。第3.8図はこれを説明したもので、(a)は面内力、(b)は面外力という。第3.1表に主要な船体構造についてそのかかる力を面内力と面外力とに分類してみた。面内力に対しては挫屈(へたり)を起こさぬように面外力に対しては撓み(ふくれ、凹み)がある限界内に納まるように、鋼板に防撓材を付けるのである。
つぎにこのように鋼板に防撓材を付けるときの注意を述べる。これは剛性の急激な変化を避けるということである。たとえば第3.9図の(a)のように鋼板の途中で急に防撓材を切ってしまうと、左側は剛性が非常に高く、右側で急に剛性が低くなってしまうので、この防撓材の端末には、応力集中が起こり、くり返し荷重がかかると疲れによるクラック(亀裂)が入りやすく、また温度が低く、溶接の欠陥があるときは、脆性(ぜい性)破壊のもとともなる。この場合必ず(b)のようにフランジを切り、ウエブをテーパーさせて、(これをスニップという)、剛性を徐々に落とす必要がある。また(c)のように左右で防撓材の高さの異なるときは、段をつけずに、徐々に高さを合わせるのがよい。
(a)面内力(圧縮)
(b)面外力(水圧)
第3.8図 面内力と面外力
鋼板が直角に交わる第3.10図のような場合はそれぞれの防撓材の位置を一致させ、かつ(a)のように両方にスニップするか、(b)のようにブラケットで結合するか、また(c)のようにつなぎを設けるかの方法がある。(a)はそれぞれの板を防撓するだけでなるべく応力を散らせる方針であるが、直交部分の剛性は低い。(b)は直交部分の剛性を高くする方法で、肋骨と助板との連続、肋骨と梁との連続を保つために用いられる。(c)は特設梁、特設肋骨、実体助板を結ぶ、いわゆるトランスバースリング(横環節、縦式構造のタンカーにみられる)を形成する場合に有用である。最も剛性が認められる方式である。
3.1表 各部材の面内力と面外力
鋼板名称 |
防撓材名称 |
面内力 |
面外力 |
船底外板 |
肋板・中心線内竜骨・側内竜骨(単底構造) |
ホギング、サギングによる圧縮力、引張力 |
船底よりの水圧 二重底タンク内の水、油よる水圧 |
実体肋板・組立肋板の正助材 中心線桁板・側桁板(二重底横式構造) |
実体肋板・外板縦防撓材 中心線桁板・側桁板 (二重底縦式構造) |
船側外板 |
肋骨・隔壁、船側縦通材(船首部のみ)(横式構造) |
ホギング、サギングによる圧縮力、引張力、せん断力 |
側方よりの水圧 貨物油よりの液圧(タンカー) 深水タンクの水圧 他船・曳船岸壁よりの押圧 |
外板縦通材・特設助骨(縦式構造) |
舵板 |
水平舵骨・垂直舵骨・舵心材 |
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静水圧 操舵時の動水圧 |
内底板 |
実体肋板・組立肋板の副肋材 中心線桁板・側桁板(横式構造) |
ホギング、サギングによる圧縮力、引張力 |
二重底タンク内の水、油の動水圧 貨物、深水タンクの水、油による圧力 |
内底板縦防撓材、実体肋板、中心線桁板、側桁板(横式構造) |
実体肋板 |
堅防撓材 |
内底板・外板よりの圧縮力 |
タンク内の水油による圧力 |
甲板 |
梁、甲板下縦桁(横式構造)甲板縦防撓材、特設梁(縦式構造) |
ホギング、サギングによる引張・圧縮力 |
甲板荷重(打込水、貨物) |
水密隔壁板 |
堅防撓材・防撓横桁 |
船体の断面変形による引張・圧縮力 |
浸水時の水圧 深水タンクよりの水圧 バラ撒貨物、貨物油よりの圧力 |
中心線桁板、側桁板、特設肋骨、特設梁の腹板など深さの深い板 |
防撓材 |
圧縮力 |
水圧力 |
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(a)
(b)
(c)
第3.9図 防撓材の端末処理
(a)
(b)
(c)
第3.10図 防撓材の直交部分
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