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III 構造設計
1. 船体に働く外力と部材端部の固着条件
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2. 設計荷重
2.1 適用構造基準
 
 IMOの高速船に関する安全規則(HSC)のH8.1.1付け発効を受けて、我が国でも同日付けで新しい「高速船構造基準」が発効し、従来の構造基準類が統廃合された。その結果、小型高速船に対し適用される構造基準類は現在では次に示すTable3−1のようになっている。排水量型に対しては、NK−CS編及び同鋼船−アルミ船への換算内規による。
 
Table 3−1 適用構造基準(H8.1.1以降)
区分 滑走及び半滑走型 滑走及び半滑走型 滑走及び半滑走型 アルミ漁船
長さ LR<24m LS≦50m
V≧3.7▽0.1667
(m/sec)
(単胴型)
50m<LS
V≧3.7▽0.1667
(m/sec)
(単胴型)
LR<30m LR/Dの従業種
別制限V/LR
3.6〜
(10.8−0.48LR)
速力
航行区域
平水区域 軽構造船暫定基準
(S47.4.13)
又は
高速船構造基準
(H8.1.1)
高速船構造基準(H8.1.1) (特認)
日本海事協会
鋼船規則CS編
でもOK
(H8.1.1)
アルミニウム合金製漁船構造基準
(案)
(注)現時点ではJCI船のみに適用
沿海区域 限定
その他
近海区域 高速船構造基準
(H8.1.1)
遠洋区域
 
備考1. 高速船構造基準の第2章、第3章の規定によりがたい場合は本省伺い出のこと(特認)。
 
2. NK−CS編での鋼船→アルミ船への構造部材寸法修正法(NK内規)(耐力13kgf/mm2=125N/mm2の材料の場合)
 
(1)記号
 
  鋼船 アルミ船
板厚 ts ta
断面係数 Zs Za
 
(2)曲げによる板厚
  ta=1.8(ts−2.5)
(3)せん断又は軸力による板厚
  ta=1.85(ts−2.5)
(4)座屈による板厚
  ta=1.54(ts−2.5)
(5)断面係数
  Za=1.66Zs
(6)最少板厚 4mm
3. LR:登録長さ(m)、Ls:満載喫水線の長さ(m)、▽:満載排水容積(m3)
 
2.2 設計荷重
 高速船に対する荷重としては、波浪中の船体運動と波との相対運動により生じる衝撃荷重が最も重要であるため、高速船の設計荷重は一般に船首上下加速度をパラメータとして設定され、軽構造船暫定基準や高速船構造基準も同様に、船首上下加速度を船底衝撃荷重や船側荷重等のパラメータとして採用している。
 これらの計算の詳細についてはそれぞれの基準を参照のこととし、以下に特記事項について略記する。
1)軽構造船暫定基準
 部材寸法算定のキーファクターとなる船底衝撃水圧の計算式は、防衛庁の魚雷艇その他の高速艇の水圧計測値をベースとして導かれている。
 船底外板の受ける水圧(P1)は
P1=K(V2/1000+C・W/LBc)(kg/cm2
V:船の最強速力(kt)
Bc:最大幅部のチャイン幅(m)
W:満載排水量(t)
C:沿海区域航行船 5
限沿 〃 〃  4
平水 〃 〃  3
K:船底勾配修正係数(最大幅部について)
β≦10° K=1
β>10° K={5/(β−5)}2/3
 
2)高速船構造基準
a)弾性設計ベース。運航可能な限界状態で生じる最大荷重に対し、部材に塑性変形を生じないことが基本要求。
b)沿海区域以下航行の登録長24m未満の船舶については、軽構造船暫定基準の適用をみとめる。
c)設計加速度は設計者の選択による(但し下限規定あり)。
設計荷重は、実験や実績に基づいた従来の方式と異なり、理論に基づいた計算式により算定。
 これには船体運動と波が同調した時の船底衝撃水圧を設計水圧としている。又、船体形状、船体運動、前進速度、波面の上下方向速度の影響を考慮して、船体の任意位置での衝撃水圧を設定することとしている。
d)部材寸法計算は原則としてNKの鋼船規則に従っている。
e)船底荷重PB=P1M・F(KN/m2)の計算は、右辺の計算が芋蔓式となった極めて煩雑な手順を要する。幸いパソコン計算用ソフトが用意されているのでそれを利用すると良い。
f)船底流入角α、船底勾配β、バウラインの傾斜角θが計算に必要であるため、計算前に線図を作る必要がある。
 
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3)アルミニウム合金製漁船構造基準(案)
 本基準(案)では、部材寸法決定は算式には依らず、表から要求値を読み取る方式となっているが根拠となる算式は解説に記載されている。
 此の基準(案)では、船底外板や骨部材の寸法を決める船底水圧は、軽構造船暫定基準や高速船構造基準と異なり、鋼製漁船構造基準及び小型鋼船構造基準から逆算した水圧値や、重大な船底凹損を生じなかった鋼船の実績から逆算したスラミング水圧値、更には同じく重大な船底凹損を生じなかったアルミニウム合金製漁船で逆算した水圧から、いわば経験的に設計水圧を決定している。
 本基準(案)の作成着手当時は、事前調査に基づき基準の適用速度範囲はV/√LRで3.60までとしていたが、その後比較的小型、特に長さ15m未満の漁船の高速化傾向が顕著になったため、船底水圧についても修正が必要となり、結局漁船として普通に使用される場合、スラミングも考慮した設計水圧として
P1=0.04L(kgf/mm2
但しL<15mに対しては、水圧を高圧側に修正
が設定された。
 
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P0:
鋼製漁船構造基準及び小型鋼船構造基準による鋼船の船底外板の厚さから1.5mm差引いた板厚として、船底外板を四辺固定の無限長板として扱い、最大応力が材料の耐力に達する時の水圧=基準水圧
 
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