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I 初期設計
1. アルミニウム合金船の特徴
1.1 アルミニウム合金材料の特徴
a)大気中で表面に自然に耐食性の良い酸化被膜が形成され、自己防護するため、優れた耐食性を持つ。
b)比重は鋼の1/3、FRPの約1.8倍。比強度は鋼の2倍、FRPの1.2倍で、軽量化に有利。(図1-1船舶材の物性比較参照)。
c)ヤング率は鋼の1/3であるため、鋼材よりは撓みが大きい。然しFRPに対しては7倍となり、FRPよりは撓み難い。
d)展、延性に富み、低温に強く、低温脆性を示さない。
e)溶解温度は鋼の1/2。
f)熱伝導度が大きい(鋼の2倍)。導電度も大きい。
g)線膨張係数は鋼の2倍
h)鋼より硬度が小さいため、表面が傷つき易い。
i)非磁性、無毒性。
j)ガス切断は不可能。
k)耐薬品性はFRPより劣る。
 
1.2 アルミニウム合金船の特徴
a)アルミニウム合金船は高速船
 軽量化が可能な材料特性活用上からも、本質的に高速船である。
b)材料の信頼性
 規格金属材を使用するため、船体強度及び構造は理論計算ベースで決定され、極めて信頼性が高い(FRP船では船体積層板の積層作業が即ち建造作業であるから、その性能は作業管理に左右される)。
c)軽量船体
 材料の単位重量当たりの強度(比強度)が鋼やFRPに較べ大きいため、船体をより軽くすることができ、高速化、又は主機出力低減(=燃費節減、機関部重量減)、積荷増加、漁労設備増強、航続距離増加等が可能となり、省エネ船、高収益船とすることができる。
 更に、軽量化により、乾舷増、復原性改善、喫水減に伴う行動可能水域の拡大等の利得が得られる。
 理論的には、アルミニウム合金船はFRP船に較べ約30%程度軽くなるが、最小板厚等のルール的制約等があるため、実際にはその差は縮まり、船長10m程度の船では両者の差は殆どない。其の差は船長が大きくなるに従って拡大する。
d)船型の自由度
 FRP船の場合の様な型枠が必要なく、自由な船型で建造可能。
e)船体の弾性
 材料が弾性、延性に富み伸びが大きいため、船体衝撃が緩和され、船体損傷を局限し、乗り心地も良い。衝突等の衝撃に対し、変形はするが、破口はFRPに較べ生じ難い。
f)耐食性
 錆びず、耐食性が良く、無塗装で海水中に曝しても殆ど腐食しない(但し、異種金属製の舵、プロペラ、シャフト等と電気的に結合されると異種金属接触腐食を起こす。従って流電陽極防食法が必要)。従ってメンテナンスに容易。構造規則のコロージョンマージンも要求されない。
 耐薬品(酸、アルカリ等)性はFRP船より劣る。
g)修理、改造・改装工事
 金属製船体であるため、修理、或いは経済環境変化に応じた改造・改装(含漁労設備改装)等が容易。
h)経年変化
 金属製であるため、FRP船に見られる蝋化、含水性もなく、経年変化はない。(FRP船はゲルコートの損傷等により含水し、船体重量増となることが多い)。
i)熱伝導性、耐火性、非発火性、非磁性、導電性、非有害性
 熱伝導性が大きいため、防熱性はFRP、鋼船に較べ劣る。鋼船には劣るが耐火性があり、FRPより有利である。衝撃を与えても火花は発生しない。非磁性であるため、磁気コンパス配置上は有利。導電性が良いため、電気機器等の船体へのアース取りが容易。飲料水タンクは無害塗料を使用でき、FRP船に生じ易い悪臭問題等は発生しない。
j)船体塗料
 必ずアルミニウム合金船用塗料を使用する必要がある。亜酸化銅等を含むものは、異種金属接触腐食を起こす可能性があるから、使用できない。
k)船体価格
 船体価格はFRP船に較べ平均して約20%程度高いと云われる。従って船長10m程度の漁船では、重量差が殆どないのでアルミニウム合金船のメリットを出すのは難しいが、船型が大きくなるにつれ重量差が拡大し、従って上述の軽量化メリットが享受でき、初期船価のハンディキャップを取り返し、逆転させることができる。
l)事業採算計画
 船の購入に当たっては、単に初期購入船価の高低にのみ捉われることなく、軽量化や材料特性等によりもたらされる各種メリットを確認し、本船使用全期間を通じての運用採算性を計算した上で、購入選択の総合価値判断を行う必要がある。
m)アルミニウム合金材のリサイクル
 アルミニウム合金材はリサイクル可能であるため、廃船処理の場合有利である。
 
 参考迄に、各船舶材による船殻重量の比較を図1−2に、アルミニウム合金製漁船とFRP製漁船の性能比較を表1−1に、漁船購入に当たり考慮すべき事項を図1−3に示す。
 
図1−1 船舶材の物性比較
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