5. 事例
特に、これから数値現図を導入する小型造船所の参考に、そのアウトプットに対比して、原寸型・寸法図を説明しておこう。
5.1 皮板:Skin Plate
板継マーキンの有無により異なる。一般に2〜3枚継ぎなら内業仕上げで行ける。板継後に開孔切抜きがあり、その形状が円弧と直線で表現できないときは「切抜型」を一部型として作成する。
5.1.1 平板ブロック:Flat Panel Block
加工および板継の精度を上げれば、全て単板内業仕上げとし、アセンブリ・マーキンを廃止できる。だが一般にはブロック精度を板継後に押さえる「板継仕上げ」が適用されている。
その金取と仕上げの例を[図5.1.1 板継仕上げマーキン]に挙げる。
●内仕板基準
どちらかの側の、より内容の複雑な板を内業仕上げとし、その中に縦横2方向の基線を設定、タスキを振って延長し、それを押さえて板継後アセンブリ仕上げとする。
●内仕シーム基準
プレーナー切断で、精度よく仕上げられた直線シーム、または、その差越をシーム方向の基線とする。図例では、開孔部は板継後にマーキンして切り抜く。
いずれにしても優先度は、ブロック仕上がり精度、組立工程の作業削減の順で、できるだけ前工程に負荷を掛け、それが結果としてトータルコスト減に繋がるようにするのである。
平行シーム板継の皮板金取は、ほとんど兼用にできる。
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図5.1.1 板継仕上げマーキン
骨付き位置マーキンは、組立方式:「バラ」置き・枠組み・単板ラインウエルダー・・・で異なる。
[図5.1.2 DK.の単板仕上げ型]は、バラ置きの例である。
AW(図では反FW)端に2本線があるが、最端の線は 。冗長であるが、板厚分差引を確認するため作画させている。
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図5.1.2 DK.の単板仕上げ型
演習題:−
このDK.板付きで、カーリング部材:F8、F9、:F10の取付度が異なるのはなぜか。
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コルゲート壁板は、加工精度上から、標準金取・(標準曲型で)プレス成型して後に内業仕上げマーキンとする例が多いようである。
平面ブロックで、もっとも重要なことは、切断・板継・マーキン・組立すべての工程での定盤の平面度である。例えばブロック・マーキンにおいて、平面度が悪ければ、タスキが精密に合うはずがない。加工・組立が、いい加減であるのなら、現図で型定規の精度を上げる気にならず、いわんや、前船での収縮変形を計測しておいて、後続船の精度に織り込むような合理化は、思いも及ばないであろう。
ブロックが大きくなればなるほど、この定盤平面度の重要性は増す。定期的に監査(水盛チェック)して、記録に止めておくとよい。
5.1.2 曲りブロック:Curved Shell Block
造船現図のもっとも豊富で特徴ある内容となっており、以下章立てして、組立治具・板継仕上げ・外板加工・フレーム加工の順に解説しよう。
数値現図の優位性は、全般にいわれるが、この曲り外板範囲の現図処理において際立っている。既に安価なパソコン・システムが市販されるようになっており、よしんば手作業ベースの作画現図を維持するにしても、先ずこの範囲だけはコンピュータ処理に切り替えたい。出力は最小限プリンターのみで済むのである。その実際のサンプルとして各種の寸法表を掲げておこう。
5.1.3 曲りブロック組立治具
さきに平面ブロックで、定盤の平面度を強調したが、曲りブロックでも、やはり曲面の支持精度が、もっとも重要になる。
この曲面支持には、[図5.1.3 ピン治具]を利用するような升目方式が、多く使われる。ピン治具は自在に支持高さが上下できる装置であって、この支持点を組立定盤上に格子状に配置して、全点で曲面を支えるようにする。
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図5.1.3 ピン治具
図例は、3段式ソケット方式で、1・2弾は定寸(100ミリ)刻みの伸縮、3段目が捩子回転での微調整伸縮となっていて、上下差1.5mが無段階にセットできる。
升目の格子点は、縦方向(1、2、3、・・・)横方向(A、B、C、・・・)に等分ピッチで配されることが多いが、幅×長さ=500×750のように決めてもよい。
要するに、自造船所としての:−
1)支持強度と荷重
2)ブロック下空間の交通と作業(例:裏波用バッキング取付など)
を勘案すればよいのである。
よく「ピン治具は壊れ易い」として、その都度準備の支持材溶接/切断に止まっている造船所を見掛けるが、その、その都度方式でも、いずこも例外なく、外板加工や支持材準備または相互の配置などに起因する精度が悪く、支持点が当たったり、当たらなかったりしている。おそらく、かつて壊れたのは、板配材時や、骨組み取付時などに、計画を大幅に超えた不均等な荷重が集中したに違いない。
細かく言うと、支持点は[図5.1.4 ピン治具上端]のS:外板の外(曲)面と治具先端の球(面)の接点である。支持荷重は偏心し、治具構造に曲げモーメントが働くことになる。
この詳細図は、治具軸(線)とS(点)を含む切断面を描いたもので:−
T=外板厚(ブロック内で異なる)
R=治具先端球の半径(一定〉
A=外板内(・)面と治具軸(心)の交点
a=先端球がS点で外板外面を支えたときの治具上端
C=セット高さを与える治具の鍔位置:aC=一定
とすれば、
H=治具のセット高さ(最具の畏縮長位置から計る)
となる。ここで注意したいのは、正確にはAとaを混同できないことである。
ただし、一般には外板の傾斜角が大きくないので、その条件内においてのみ近似的に[Aa=T]として大差はない。
図5.1.4 ピン治具上端
曲面全体の支持状態は[図5.1.5 組立曲面線画]のように、曲りブロックの定盤据付形状を曲 面線図で描いたチェック出方で確認し、その状態がOKなら、現場に必要な情報を[ 図5.1.6
定点治具図]の様式に編成して発行する。
「定点」と言うのは、格子点の垂直高さ(この図例での与え方は、A点位置。最低点を0:ゼロとする相対値)で曲面を与える意味で、図例の格子ピッチは縦横共に500(単位は、全てミリ。板厚のような特定寸法を除き、小数点以下四捨五入)。
JIGU SECTION
JIGU SECTION(TRANS)
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図5.1.5 組立曲面線画
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